ベラトリックスのほほえみ 第4話
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四つ足ドローンは、ドーナツ型の座席から浮き上がって、宇宙船のキャビン内に漂った。
四つ足ドローンは、手足をばたつかせながら、言った。
「無重力状態ですね!」
ベラトリックスBbのAIは、不定形な体を細長く変形させて、座席の穴に戻りながら、言った。
「そうだ。まもなく大気中に出る。」
四つ足ドローンは、手足をぐるぐると回転させたが、努力の甲斐もなく、座席からゆっくりと遠ざかっていった。
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「あと5秒でカタパルトから大気中に出て、マイナス10Gの減速がかかる。座席の穴に戻ったほうが安全だ。」
四つ足ドローンは、このままだとどうなるか考えた。
…宇宙船が大気中に飛び出した瞬間、私は、キャビン前方の窓に衝突し、私と窓が破損する可能性がある…
窓が破壊されたら、宇宙船は、大きな空気抵抗を受けて、破壊される可能性がある…
ベラトリックスBbのAIは、触手を伸ばし始めた。
四つ足ドローンは、何か方法は無いかと考えた。
…私の背中のバッテリーに飛行型ドローンがくっついている。そのファンを回せば、移動できるかもしれない…
四つ足ドローンは、飛行型ドローンにコマンドを送って、ファンを回転させた。
甲高い音を立てて、四枚のファンが空気を送りだした。
飛行型ドローンに推されて、四つ足ドローンは、座席のほうに近づいた。
しかし、右にそれている。
四つ足ドローンは、左側のファンの回転速度を落とした。
四つ足ドローンは、少し左に向きを変えた。そして、四枚のファンをフル回転させた。
四つ足ドローンは、座席の穴に飛び込んだ。
そのせつな、マイクをつんざくような大きな音がした。そして、強烈な衝撃が、宇宙船を襲った。
~つづく~
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