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ベラトリックスのほほえみ 第6話
第1話はこちら↓
白、青、赤、黄色…さまざまな色に包まれた世界が、音も無く流れて行く。
まわりには、真っ暗な宇宙と、瞬かない星々が広がっている。
宇宙船は、ゆっくりと自転している。
窓の外に、赤く燃える恒星が現れた。赤色矮星ベラトリックスBだ。
太陽よりも小さくて赤いその星が、ベラトリックスBbの生命を育んだのだ。
はるか遠くに、目を射抜くようにまぶしく輝く青白い星が見える。
ベラトリックスBの伴星ベラトリックスAだ。赤色矮星よりも若いこの恒星は、オリオン座の左肩を成している。
そして、ベラトリックスとともにオリオンの双肩を成していた赤色超巨星ベテルギウスは、鮮やかな虹色に輝く巨大なガス星雲に変わっていた。
見慣れない星座の中に、四つ足ドローンは、さそり座を見つけた。その星々の中に、恒星がひとつ加わっている。
太陽だ。
約250年前の太陽の姿が見えているのだ。
四つ足ドローンは、レンズを最大望遠にして、ふたつのカメラをこらしたが、地球は見えなかった。
四つ足ドローンは、考えた。
ベラトリックスAのまわりを、赤色矮星ベラトリックスBが回っている…
ベラトリックスBのまわりを、惑星ベラトリックスBbが回っている…
ベラトリックスBbのまわりを、この宇宙船と近道が回っている…
そして、私も…
…宇宙に存在するものは、全て回っているのだろうか?
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「近道だ。」
宇宙船の姿勢制御用ジェットが、シュッ、シュッと小刻みに噴射した。
宇宙船の自転が止まった。
前方に、黒い穴が見えてきた。
~つづく~
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