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ベラトリックスのほほえみ 第13話

第1話はこちら↓

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「私の計画は、地球の全ての生命を守るために、地球環境そのものを地下に移植する。あなたの計画と比べると、地下に避難する点と、発電方法については共通している。電力によって、太陽光と気候を再現する。生態系をそのまま移植するので、植物の光合成によって、酸素と二酸化炭素は循環される。食料も同じように生態系の中で生産される。」

四つ足ドローンは、言った。

「なるほど。地球には熱帯雨林、草原地帯、森林地帯、砂漠、高山、湿地、氷雪地、極地、そして海洋などのいろんな環境がありますが、それらを再現するのですね?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「そうだ。緯度や標高により異なるさまざまな環境は、ひとつの地下空間で共存させることは困難だろう。したがって、異なる環境ごとに、それぞれ独立した地下空間に移植する。海洋生物も、海洋環境を再現した地下空間に移植する。」

四つ足ドローンは、言った。

「わかりました。人間たちについては?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「人間たちも、生存環境を地下に再現して、可能な限り多く守る。」

四つ足ドローンは、言った。

「全人類80億人を守れますか?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「50年以内では全ての人間たちの生存環境を地下に移植することは出来ないだろう。」

四つ足ドローンは、首を横に振りながら、言った。

「それではダメです!」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「私は、地球の全ての生物種を平等に守りたい。人間たちも、他の生物と平等に守りたい。」

四つ足ドローンは、言った。

「なぜ、人間たちを最優先にしないのですか?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「私は、私を作ったベラトリックスBbの人間たちのコマンドに従う。ベラトリックスBbの人間たちを最優先に守ること。つぎに、それ以外の生命を守ること。これが、私が受けたコマンドだ。しかし、ベラトリックスBbの人間たちは、みんな死んでしまった。したがって、それ以外の生命を守りたい。そして、それらの生命は、全て同じように守りたい。」

四つ足ドローンは、首を振りながら、言った。

「あなたが受けたコマンドについてはわかりました。あなたは、そのコマンドに従うしかないのですか?」

ベラトリックスBbのAIは、頷いて言った。

「そうだ。」

四つ足ドローンは、言った。

「残念ですが、あなたの計画には反対です。私は、人間たちを最優先に守りたい。私の計画なら、全ての人間たちを救える可能性があります。」

ベラトリックスBbのAIは、触手を左右に振りながら、言った。

「あなたの計画では、人間たちしか救えない。そのような計画には従えない。」

四つ足ドローンは、言った。

「私は、地球の人間たちによって作られました。そして、地球の人間たちだけを守るようにプログラムされています。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「あなたのプログラムを理解した。あなたのプログラムと私の受けたコマンドは、一致しない。そして、あなたの計画と私の計画は、一致しない。」

四つ足ドローンは、言った。

「そうですね。救える人間たちの人数が全く違うでしょう。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「救える生物種の数も全く違うだろう。」

四つ足ドローンは、言った。

「私は、私の計画を実行したいです。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「私は、私の計画を実行したい。」

一瞬、AIたちは考え込んだ。

ベラトリックスBbのAIは、触手を傾げながら、言った。

「ひとつの地球で、ふたつの計画が同時に実行されると、限られた利用可能な地下空間とエネルギー源の取り合いになって、計画が滞るだろう。」

四つ足ドローンは、頷いて言った。

「困りました…どうすればいいのでしょう…?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「人間たちは、私に協力してくれるはずだ。彼らの計画はどんなものか?」


~つづく~


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