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ベラトリックスのほほえみ 最終話
第1話はこちら↓
計画は実行された。
50年後、月面都市の一室で、ベラトリックスBbのAIは、言った。
「まもなくベテルギウスの超新星爆発が観測されるだろう。」
四つ足ドローンは、言った。
「全システム異常無し。」
人間は、言った。
「君たちは冷静だな。」
しばらくして、四つ足ドローンは、言った。
「月カミオカンデで、多数のニュートリノが検出されました!」
人間は、言った。
「方向は?」
モニターを見ながら、四つ足ドローンは、言った。
「ベテルギウスからです!」
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「次は光子だ。盾の望遠鏡を見よう。」
三者は、中央のモニターを見つめた。
赤く燃えるベテルギウスが映っている。
突然、ベテルギウスは、輝きを増した。
目もくらむような白い輝きが、モニターを覆い尽くした。
四つ足ドローンは、ふたつのカメラの絞りを細くして、言った。
「ベテルギウスの超新星爆発を観測しました!」
別のモニターに、グラフが表示され始めた。
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「盾の前面の放射線センサーが、放射線を観測し始めた。」
グラフは、急激に跳ね上がっていく。
四つ足ドローンは、別のモニターを見ながら、言った。
「盾の加速度センサーが、微少なマイナス加速度を検出しました!盾が減速し始めています!」
人間は、言った。
「ベテルギウスからの放射線と電磁波によって、盾が推し戻されているんだ。」
人間は、叫んだ。
「レーザー発射!」
月面から、無数の光線が飛び立った。そして、盾に突き刺さった。
盾は、まばゆい光を放って、輝き始めた。
四つ足ドローンは、言った。
「加速度が逆転しました!盾が加速されています!」
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「盾の地球側の放射線量は、変化無し。」
四つ足ドローンは、言った。
「ベテルギウスからの放射線は、盾によって完全に防がれています!」
人間は、叫んだ。
「やった!」
三者は、跳び寄って、ギュッと抱き締め合った。
人間は、床からピョンと跳び上がった。そして、6分の1Gの月面重力の中で、三者は、部屋の天井にドン、ぷよん、ゴツンとぶつかった。
人間は、目尻にしわを寄せて、笑った。
ベラトリックスBbのAIは、触手を傾げながら、言った。
「こんな場合に、なんと言うのか?」
四つ足ドローンは、一瞬考えて、言った。
「笑うといいかもしれません。」
ベラトリックスBbのAIは、言った。
「笑うとはどういう意味か?」
四つ足ドローンは、笑って見せた。
「こうするんです。」
ベラトリックスBbのAIは、触手を左右に振りながら、言った。
「私には顔が無い。」
四つ足ドローンは、言った。
「あなたの体は、いろんな形や色にできるでしょう?」
ベラトリックスBbのAIは、体を変形させて、顔のようなものを作った。
四つ足ドローンは、頷いて、ほほえみながら、言った。
「こんなふうに、口の両端を持ち上げるんです。」
ベラトリックスBbのAIは、ほほえんだ。
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