只野 漠

伊豆の標高380mの山の中。靴作りと格安で購入したボロボロ一軒家を工房にDIYしながら…

只野 漠

伊豆の標高380mの山の中。靴作りと格安で購入したボロボロ一軒家を工房にDIYしながら日々、妻と老犬と共に忙しく暮らしています。 得意分野は ◯日常のクスッと笑えるコラム 【2023年ジャパンレザーアワード】 『フューチャーデザイン賞受賞』 原稿依頼お待ちしております。

最近の記事

人生初めてのアルバイト

. 高校生になると、アルバイトが出来る年齢になる。校則では禁止だったが、知ったこっちゃーない。 . . 人生初めてのバイトは、ガソリンスタンドだった。 . . アルバイト初日、緊張しながら休憩室の扉を開けてみると、、、 . . 「コヤケさん、可哀想だよ。もう、辞めちゃうんだってよ」 . . 「コヤケさんには、コヤケさんなりの考えがあるんだから。上の考えとは合わないんだろ」 . . はて、なんでしょう、この会話とこの空気。泣く女子高生スタッフと、それをなだめるリーゼント風の男。

    • 踊るエミネム人形(後)

      . . (続き). . それから10分後、美容院に入って手帳をヒラヒラさせているおれがいた。 . . 後からわかった事だが、これは一時期流行した一種のネズミ講のようなもので、商品が売れた場合、1500円の内訳は(500円→おれ、500円→ボス、500円→上納)というシステムになっている。ランクを上げていくと最終的には支店長(ボス)になり、事務所で、ぼーっとしていてもネズ、いやエンジェル達が必死に売り歩いてくれるシステムのようだ。しかも訪問販売の規制逃れの為か店舗

      • 踊るエミネム人形(前)

        . . 「古着の仕事、イチから全部教えます!!」 . . 当時、22歳の僕はコンビニに置いてある求人広告のその一文に飛びついた。ブームは去ったとはいえ、まだ古着市場は繁盛していたし、何より薄暗い工場でバイトするよりよっぽど楽しそうだ。 . . さっそく面接の電話をして日時を決めた。古着屋の店長かぁー。格好いいなぁ。(海外出張が多くて忙しいぜ)とか言っちゃったりして、アハハ夢が広がるぜー。 . . 後日、指定された面接場所は我孫子駅前のマクドナルド。マック

        • マイムレッセッセ♫

          . . フォークダンスとは、世界各地で踊られる土着の踊りの総称である。広義には盆踊りや神楽のような日本の踊りも含まれるが、一般的に日本では外国から紹介された踊りを指すことが多い。by wiki . . . 林間学校でキャンプファイヤーを囲みながらフォークダンス。マイムマイム、マイムマイム、マイムベッサンソン。 . . あの当時は . . 「女子と手をつないで踊れってナンダよそれー!!」←嬉しさを必死に隠す男子ども。 . . という衝撃の方が強くて

        人生初めてのアルバイト

          悪そな奴はだいたい友達?

          . . 横浜でhiphopをやっている友達のLiveを観に行った時の事。まだ他の出演者がLiveしている最中に友達が近づいてきてこう言った。 . . 「ケンジー!!ここで酒買うと高いから外のコンビニに買いに行こうぜー!!」 . . 「え、でも入り口にでっかく【再入場禁止】って書いてたよ」 . . 「だーいじょうぶだって!!おれら演者なんだから」 . . おれら、、、?おれは演者ではないし、この中で一人だけ細身のパンツに小さめのTシャツだよ。みんなオ

          悪そな奴はだいたい友達?

          裸族!?

          . . 4年前、神奈川県、多摩川 . . 河原でBBQをしようと企画した友達とマンションの下で落ち合って、BBQできる場所を下見しようという事になった。 . . 朝方の多摩川沿いはランニングをするスパッツ族や犬の散歩をする人達が休日の始まりをさわやかに迎えていた。 . . 「そうそう、この前犬の散歩中に良さそうな場所みつけたんだよ。人もあんまり来なさそうだし」 . . 「じゃあ、そこに行ってみよう」 . . そんな訳で竹藪の小道を掻き分けて進

          上機嫌な男

          Labyrinth-苗場-新潟 . . 新潟は雨が多い。新潟では曇りでも雨が降ってさえいなければ . . 「晴れた」 . . と言うらしい。もう雨降ってないんだから、どんよりと雲がかかっていようが、それは「晴れ」だと。 . . そんなだからラビリンスも4回か5回くらい行ったけど基本全て雨。3日間で一日でも晴れたらツイてるな、くらい雨。 . . 「雨を感じられる人間もいるし、雨にただ濡れるだけの奴もいる」 . . とボブ・マーリーが言っているけど、さすがに三日三晩雨を感じていら

          上機嫌な男

          このチューブ、、、

          . . . 少し怖めの知り合いの家に遊びに行った時 . . (部屋の中、漫画だらけ。見た目怖くても心は少年なんだね) . . と幾分心も和み、小さな犬と戯れていると、その人がシャワーを浴びて部屋に戻ってきた。 . . (身体中の刺青もさることながら、この筋肉質な身体は何をどうやればこんな身体になるのだろう、、、) . . と不思議に思った。 . . さっき二人で居酒屋で飲んだ際に肉野菜炒めが運ばれてきたが、その人が箸でひとすくいしただけで、

          このチューブ、、、

          映画「グリズリーマン」

          . . 『グリズリーマン』2005年。アメリカの熊愛好家ティモシー・トレッドウィルがアラスカにおいて13年に渡り野生の熊と友情を築き上げていく姿を捉えた感動のドキュメンタリー。 . . と、思いきやこの作品は非常に奥が深い。まずこの熊愛好家のティモシー・トレッドウィルという人物がとても子供っぽく、ある意味において、精神的に未熟な部分が映像によって少しづつ浮き彫りにされていく。熊に対する愛情が溢れているのは伝わるのだが、熊を擬人化して、彼らに名前をつけ、時には体を触れ

          映画「グリズリーマン」

          今じゃない!!

          . . 喉が渇いたので自動販売機でジュースを買ったら、当たり付きの機械だった。 . . (まぁ、当たらないだろうな。そもそもジュース一本ごときにおれの貴重な運を使いたくないし、、、) . . と思ってぼーっとみていたら。 . . ピピ、ピピ、ピ、 5555!!! . . 当たってしまった。Noooo!!!こんなモノに当たるなんて。宝くじでも買っておけばよかった。150円の為におれの運がー!!!!。じゃあ、もういらないけど、お茶にするか。 . .

          今じゃない!!

          にゃんだこいつは/野良猫狂想曲③

          . . . 「猫の爪研ぎ事件」以降は何事もなく平穏で、バイク通勤や平屋暮らしの日常を存分に楽しむ日々が続いた。 . . 国道1号線は毎朝当然のように渋滞しているが、バイクはすり抜けが出来るのでそこは便利。あの手この手ですり抜けてはトップを狙う。なんのトップだ?横浜〜川崎間の信号では車の停車ラインの先にバイクだけの停車スペースが用意されているので、青信号になると多いときには10台以上のバイクが一斉にスタートするものだから、まるでレースだ、抜いたり抜かれたりの競い合い

          にゃんだこいつは/野良猫狂想曲③

          かたっぽの手袋

          . 冷たい風が頬を刺すこの季節、通りを歩いていると片方だけの手袋が落ちているのを目にする事がある。雨に打たれて濡れているものや、毛糸で編まれた子供用の小さなものや、道路の端で埃だらけの片方だけの手袋。 . .  彼らは持ち主のポケットから落っこちて、道路に置き去りにされた。哀れな手袋よ。もう主人の手の温もりを感じる事も二度とないだろう。しかしそんな哀れな手袋が心配するのはもう片方の手袋の事。 . . 「ぼくはいいんだ。これが運命だと思って諦めるから。でもアイツ一人

          かたっぽの手袋

          ニャんだこいつは/野良猫狂想曲②

          . . 次の日の朝、出勤しようとバイクを停めてある駐車場に向かうと、そこいらに黄色いスポンジがふわり、ふわり と風に吹かれて漂っている . . (一体なんなんでしょ、コレ?) . . と不思議に思いながらも歩いていき自分の通勤用のビックスクーターを見て嗚呼、なるほど、と納得。 . . 元々破れたシートをテープで補修していたのだけれど、それがテープごとビリビリに破かれていて、シートの中身のスポンジが引っ掻きだされている。 . . まるで内蔵を引き裂かれたみたいだ。可愛そうなおれ

          ニャんだこいつは/野良猫狂想曲②

          ニャんだこいつは/野良猫狂想曲①

          . . これはある男が横浜の一軒屋に引っ越して起こった悲劇のストーリーである。確か2010年頃、、、 . . . 新しい住居を探すとき、あなたは何を最優先しますか?賃料?駅までの距離?追い焚き機能?はたまた二階以上か否か? . . . ぼくの場合は最優先事項はなんといっても広さだ。広いのはいい。なにがいいってのびのびできる。部屋から部屋に移動ができて気分を変えられる。ゴロゴロ転がることだってできる。 . . そんな訳で友人との2年間の同居生活も終わりが

          ニャんだこいつは/野良猫狂想曲①

          西湘バイパスで未知との遭遇

          . . 休日の昼過ぎ、湘南から箱根に向かう途中の西湘バイパスで、一度だけUFOを見た事がある。 . . 海沿いをひたすら走るその有料道路からは海と空しか見えない。二つの青が視界いっぱいに広がる。 . . バイクは心地よく、風は少し冷たかった。 . . 後ろには妻が乗っている。 . . ゆるやかな右カーブに差しかかったあたりで、視線の先、海と空の景色の中、それはあった。 . . 円盤型だったかどうかは定かではないが、周りの景色と明らかに馴染んで

          西湘バイパスで未知との遭遇

          いばら道、舗装路

          川崎、夏の終わり、暗い時間帯に妻と犬の散歩をしていた時、まだ新しいコーポの前を通りがかると、パジャマ姿の若い女の子とスーツケースを持った若い男が立ち話をしていた。二人とも20代中頃だろうか。 . . 女の子の方はシクシクと静かに泣いている。若い男の方はなぐさめるでもなく、立ち去るでもなく、スーツケースの横で力なくそこに立ち尽くしていた。 . . (これは、同棲していたけど結局駄目になって、男がでていくシーンだね) . . 耳がダンボになるぼくと妻、ボン!

          いばら道、舗装路