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かたっぽの手袋

. 冷たい風が頬を刺すこの季節、通りを歩いていると片方だけの手袋が落ちているのを目にする事がある。雨に打たれて濡れているものや、毛糸で編まれた子供用の小さなものや、道路の端で埃だらけの片方だけの手袋。

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 彼らは持ち主のポケットから落っこちて、道路に置き去りにされた。哀れな手袋よ。もう主人の手の温もりを感じる事も二度とないだろう。しかしそんな哀れな手袋が心配するのはもう片方の手袋の事。

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「ぼくはいいんだ。これが運命だと思って諦めるから。でもアイツ一人で大丈夫かな?いや、大丈夫だろ。なんてったって今までずっと御主人の手を温めてきたんだから」

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哀れな手袋の願いも虚しく、もう片方の手袋だけではやはり役に立たず、全く光の届かない漆黒の闇の中へ葬られる

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「おい、おれが何をしたっていうんだ。相棒を落としたのはアンタだろ。頼むから箪笥の中だけはやめてくれ。あ、ダニ、ダニがいる。こら、やめろ。やめてくれ」

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.  皆様、もし片方だけの手袋をお持ちでしたら、一度集ってお見合いパーティーでもしませんか?もちろん、手袋のね。


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