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9月9日は故郷でお酒を酌み交わす日

9月9日は「重陽の節句」。「菊の節句」とか「大人の女性のひな祭の日」とも言われています。新暦と旧暦では実際の季節感が違うので、新暦ではしっくりいかないこともありますが、最近は茶道のお稽古でも菊の和菓子が多く出されたのではないでしょうか?邪気を払い、長命を願い、菊酒を飲むという習慣もステキですよね。

私が初めて9月9日を意識したのは25年前です。歳がバレそう~!

25年前、私は縁あって中国の大学の外国人向け中国語コースにいました。運よく知合いの中国人の親族がその大学内に住んでいるということで、ホームスティをしながら3か月間の初心者コースを受講していたのです。

ある日、クラスの先生から留学生をタダで「三峡下り」の3泊4日の旅行に連れて行ってくれるという提案がありました。ただし、条件があって途中による重慶で「留学生の歌の祭典」の地方TV番組があるからそれに武漢大学の留学生として出演すること。午後から10日間、その練習に参加できる人、ということでした。当時、中国では自由に海外旅行ができなかった時代ですから、留学生でも十分テレビネタになったんですね、きっと。

現地のTV番組に出演できて、タダで旅行に行けるんだから、それはやるしかないでしょう、と私は即参加に手を上げました。そしてそのときに私たちが練習して歌った曲の一つが「9月9日的酒」という歌です。

  ↑古い映像だし、歌自体も古い歌。今見ると笑っちゃうかもしれませんが、歌のイメージがよくわかるストーリーです。

この歌は、9月9日には故郷に帰って友達や家族と酒を酌み交わそう、かわしたいなぁ、という意味の歌です。中国でも多くの人が田舎から都会に勉強や仕事、結婚などで故郷を離れていきます。そんな人の故郷に寄せる気持ちを代弁した歌でもあるし、故郷に帰って来いよ、と畳みかける歌です。

私たち留学生の中には遠くアフリカやアジアのラオスやネパール、スリランカといった国から長期で来ている学生もいます。そんな私たち留学生がこの歌を歌う時、簡単には帰れないジレンマと自分の母国の友人や家族を思い出す心情がしみじみとよくわかるのです。

母国を一人離れて言葉も生活習慣も慣れない中国で暮らすのは、留学生にとってはやっぱり大変。今でこそ便利で快適になった中国ですが、当時は携帯もネットもありません。私もたった3か月のくせに歌いながら泣けてきたりするのです。

この留学生のタダ旅行は本当にいい思い出になりました。と言っても有名な観光地の三峡の壮大な風景よりも覚えているのは、案外、泊ったホテルの窓のホコリがすごかったなぁとか、中国の地元のTVの会場の雰囲気だったり、ステージの様子だったり、歌の練習風景だったり、そんなささいなことだったりします。そして時間の流れとともにいろいろあった記憶も思い出も不明瞭になっていきます。

でも「9月9日的歌」はしっかり思い出に戻れる足がかりになってくれてます。「9月9日的歌」は、毎年25年前の中国での思い出と私を繋ぎとめてくれる大切な日で歌です。私にとっての9月9日は25年前の中国に思いを寄せる日でもあります。

そしてやはりこの日は私にとって自分の故郷や家族にあらためて思いを寄せる日です。



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