見出し画像

アクセンチュアが月140時間以上の時間外労働で書類送検された件を受けて、元コンサルが思うこと

アクセンチュアが月140時間以上の時間外労働で書類送検されたというニュースが
Yahooトップに出てました。転職活動時にはアクセンチュアの内定もいただいていた元コンサルとして、コンサルと長時間労働について書きたいと思います。

アクセンチュアを書類送検 月140時間超残業疑い 東京労働局

ニュースに載っていた内容を要約すると「2021年1月において、同社の社員1人に対し、法定の除外理由がないにもかかわらず各週40時間を超えて時間外労働をさせた疑いでアクセンチュアと管理職の男性を書類送検。昨年1月の時間外労働は約143時間に上った」そうです。
少し分かりにくい表現ですが、法定労働時間である1週あたり40時間を超えて、月の時間外労働時間の上限である月45時間を超えて、36協定で締結した特別な時間外労働時間の上限である月100時間ないしは80時間を超えた(※)ことによる労働基準法違反行為、という扱いかと思います。
※アクセンチュアの36協定の締結内容は分からないので一般的な事例を記載。

長時間労働が当たり前だったコンサル業界

今回の対象となった従業員はソフトウェアエンジニアという記載がありましたので、厳密にはコンサルタントというよりはSierの部門の方だったのかと思いますが、アクセンチュアをはじめ、コンサルティングファームは長時間労働が当たり前という文化がありました。しかし昨今では、ワークライフバランス、働き方改革、一人一人の生き方を尊重する考え方などが広まり、昔ほどの長時間労働は少なくなっている、と思います。私はアクセンチュアで働いてはいないですが、内定をいただいた時や中で働いている友人の話を聞く限り、アクセンチュアも昔ほどの長時間労働は減っていて、だいぶホワイトな企業という感覚がありました(正直に言ってアクセンチュアより・・・な企業はあるよな・・・って思ってます)。しかし「長時間労働は減っているが、プロジェクトの繁忙期や状況によってはハードワークになる」というのはコンサル業界の定番文句だと思います。

なぜコンサル業界はハードワークになりがちなのか

なぜコンサル業界はハードワークになりがちなのか「文化」というマジックワードで片付けることもできますが、ちょっと解説してみます。
コンサルの仕事の特徴は「①クライアントと協議して決めたスコープで、②クライアントだけでは対応できない答えのない困難な課題を、③期限までに高品質で対応する」と言えると思います。
決められた商品やソフトを決められた方法で機械的に導入するようなプロジェクトは少なく、事前にクライアントにプロジェクトで対応する内容を提案して決めることが多いです。それもその時点では仮説はあれど答えは見えていないものが多く、探り探りにはなる部分はあります。そのため、想定していたよりも良いアウトプットが出来ないことや、クライアントとの期待値の調整が上手くいかないと、もっと良いアウトプットが出てくると思ったといった期待値とアウトプットのズレが発生することがあります。その期待値を埋める、ないしは、より価値のあるアウトプットを出すために時間をかけてしまうことがしばしばあります。
また、働いている人のメンタリティも影響していると思います。コンサル業界がハードワークであることを知った上で入社し、成長意欲が高く、どんどん仕事がしたい、という人が多いです。上司が手取り足取り面倒を見る必要があったり指示待ちな人よりも、早くに自立して自律的に行動できる人が求められます。週末も業務に役立つことや幅を広げるために勉強するのが当たり前なので、自分なりに仕事モードと休息モードを切り替えて、ハードワークしながらも体調管理をきちんとして、プロフェッショナルであることが求められます。俺はもっともっと働きたいんだ!残業規制とかうるせぇ!働きたいんや!っみたいな働きマンがいるので、自然とハードワークに拍車がかかります。

自分に合った働き方と健康第一だということ

今回のアクセンチュアの記事を見ても、どんなに働きたいマンばかりの会社でも、会社は社員の労働時間を一定時間以内にコントロールできるように、人員の配置やプロジェクトのマネジメントをする必要があることが明らかになりました。
長時間労働を前提としたプロジェクトの組み方や体制の構築をせずに一定のリスクを加味してプロジェクトを遂行できる余力が必要になってくる、と言うことだと思います。
また、会社が残業時間という決まりきった尺度でコントロールする以前に、働きすぎて心身に影響が出てしまいそうな人は、自らアラートをあげるべきでしょう。周りはもっと働いているのに自分はダメな人間なのか、と悩む暇なんてないのです。ダメになる前に勇気を出して、もうキツいっす!って声をあげることが大事です。上司にアラート上げてみたら意外と大丈夫になるパターンもあるかもしれませんが、上司からすると、潰れる前に自分でアラートをあげることが出来る人、と評価することができます。何も言わずに潰れてしまう、というのは自分も会社も不幸になります。自分の人生を第一に、自分の働き方で会社生活を切り開いていきましょう。

働きマンたちのこれからは・・・

俺はもっと働きたいんだぁ!って話と、会社として社員の健康に配慮して労働時間を調整することは別の話です。いくら社員が働きたいマンだったとしても、会社は社員の健康を守る義務があります。それはすなわち、会社に雇用されている状態だと、労働時間(労働量)には限度が設けられるものであり、会社と社員はそれを共通の認識として、労働する必要があるのです。もっと働きたいマンは会社の外で価値を生み出す活動をする必要があり、会社での労働は自分の価値創出活動の一部、と考えて設計する方が良さそうです。

最後にボソッと・・・

今回の書類送検となった方の月の残業時間は143時間でした。コンサル業界で「2021年に月143時間以上残業したことあるひと手挙げてー!」っていうと、ボロボロ出てくると思います(私も150時間ぐらいの月がありました)。前述のように「プロジェクトの繁忙期や状況によってはハードワークになる」ため、そのくらい行くことはあります。もちろん昔に比べると長時間労働が減ったため、少数派ではあると思います。しかし36協定以上の時間外労働をしていたとしても、本人と上司が共謀して、勤怠管理の上では誤魔化している場合があります。本人としては、めっちゃ働いてやったぜ(達成感)働いたからには残業代はきちんと欲しい(報酬)、が実現できれば会社の管理方法なんてどうでもいいので、あの手この手で勤怠管理を誤魔化してしまうのです。摘発されないように上手いことやっているという実態があると、アクセンチュアの事例は上手いことできなかったんだろうなぁと思いました。しかし、共謀や誤魔化しは間違いなく悪なので、これからはルールに則った上で業務を回す方法を考えてリソース配分やマネジメントをしないといけないですね(少なくとも私の前職は労働時間の管理がどんどん厳しくなって長時間労働をあの手この手で防ごうとしていました)。

スキやフォローしていただけるだけで嬉しいです!