春になったら
少しばかり寒さが和らいで、
日の沈むスピードがゆっくりになって、
ピンクやラベンダー、ミントグリーンなんていわゆるパステルカラーが街に並ぶ。
そんな冬の終わり、春の始まりを予感させるものが目にはいる。
それをわくわくしながら、嬉しいと思えるのなら。
春になるのが待ち遠しくもあり、怖かった。
出会いと別れの季節というだけあって、
入学入社卒業退社、クラス替え、配置転換。
いつもと同じが、変わってしまう。
それは幸せであり、恐怖だった。
変わることを目指して、今の環境が変わることに期待して、春を目指すけれど。
春がやってくると変わってしまうことが怖くなる。
今よりも悪くなったらどうしよう。
そんな気持ちが自分の中で大きくなってしまう。
結局は悪いようにならないのだから、取り越し苦労。わかっているんだけどね。
だから。花柄のワンピースを揺らして、トレンチコートのリボンを結んで。
新しいスニーカーの紐を結び、帽子を被りなおし。
新しい出会いに、少しの別れに、不用意に振り回されないように。
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