読書感想『ペンギン・ハイウェイ』森見 登美彦

明日のぼくは、今日のぼくを上回っているはずだ―――


小学四年生であらゆることに研究熱心なぼく(アオヤマ君)。
毎日熱心にノートを取り、たくさんの本を読み、身の回りの疑問点を解き明かそうとしている。
ある日、彼の住む郊外の町にペンギンたちが現れた。
このおかしな現象に、どうやら歯科医院のお姉さんが関わっているらしい…
早速ぼくは謎の研究を始める。


日本SF大賞を受賞し、アニメ映画化もされた森見登美彦氏の代表作の一つである(登美彦氏の場合、なんだかんだで大半が代表作な気もするが…)
登美彦氏といえば京都を舞台にしたものが多く、その土地の持つ魅力を使った作品が多いがこちらの作品では地名は明記されず、海から遠い郊外の町、とされている。
そんな町で突然ペンギンたちが現れ、ぼくは調査に乗り出すのだ。
小学4年生のアオヤマ君の目線で展開する世界は、新鮮で不思議。
なによりもう、真面目で落ち着いて大人ぶったアオヤマ君がとても可愛らしくて読んでいて非常に楽しい気分になるのである。
町で見かけるペンギン、それと関係のあるらしい歯科医院のお姉さん…アオヤマ君はお姉さんがとても好きなのが終始伝わってくるのも微笑ましい!!
不思議なお姉さんはアオヤマ君を子ども扱いしながらも一個人として扱い、二人はチェスを指したり、一緒にジュースを飲んだりしながら研究を進めていく。 
不思議な現象は次第に不穏になっていき、アオヤマ君は仮説を立て実証するのだが、そこにはアオヤマ君にはあまり受け入れたくない現実が待っているのである。
本当に、ずっと瑞々しくて可愛らしい…
川の水の源流を探したり、近所を探検して地図を作製したり、いじわるの同級生がいたり、そのこの好きな女の子がチェスの名手だったり…
小学四年生の冒険が繰り広げられ、同時にずっとこれはアオヤマ君の初恋の物語でもあるのだ。
ずっと不思議で謎の積み重なっていく、でもどこかのほほんとした小学生な日々は大人にはとてもまぶしくて羨ましい。
いつかアオヤマ君の実験が実を結ぶことを願わずにはいられない一冊です。

こんな本もオススメ


・天沢 退二郎『光車よ、まわれ!』

・辻村 深月『凍りのくじら』

・夏川草介 『本を守ろうとする猫の話』

人生でついぞすることのなかった冒険にいつまでもあこがれてる…。

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