読書感想『俺たちの箱根駅伝』池井戸 潤

古豪・明誠学院大学陸上競技部。
箱根駅伝の本選を2年連続で逃し、4年生の主将・青葉隼斗はラストチャンスを掴むため予選会へ挑んだ。
今年こそはいける、それだけの実力で挑んだ予選会だったが、まさかの隼人の失速で結果は振るわなかった。
大学としての箱根駅伝は逃した隼人に、学連選抜としての出場のチャンスが巡ってくるが…
一方、箱根駅伝の中継を担う大日テレビ、プロデューサーの徳重は頭を抱えていた。
例年通りの硬派な中継をしている徳重に対し、新しい上司である黒石は変革を指示してきたからだ。
起こったことをそのまま伝えるべきだと考える徳重たちに対し、もっと面白おかしい放送にして新規視聴者の獲得を目指せという黒石。
不可能といわれていた箱根駅伝の中継を実現させた伝説のテレビマンの矜持を守るため、受け継いできたテレビマンたちは必死に黒石に抵抗する。


池井戸潤先生の新刊は、箱根駅伝である。
もう、もう、もううううううう、連載してる時からずーっと単行本化が楽しみで楽しみで!やっと出た!!読んだよ!!!
池井戸潤×箱根駅伝…面白くないわけがない…その期待以上に胸アツで激熱な本作品…いやぁ、もう大満足。
数多い箱根駅伝小説、学連選抜に目を向けた作品は堂場瞬一氏の「チーム」でも読んだことありますが、テレビマン視点は初めてで大興奮…同じテーマでもよくもここまでいろんな切り口あるよね!!??ってそこにも興奮…。
自分の大学のチームでの出場をついに果たせなかった隼人は、記録は参考として正式には残らないオープン参加の学連選抜の資格を得る。
学連選抜は予選会で個人としてはいい成績を残しながらも、チームとしては敗退をし、そして今まで箱根駅伝を走ったことがない選手だけが対象になる寄せ集めチームである。
たとえいい成績を残しても記録されない、そしてここ何年も大した結果は残らず何のために存在しているのかを陸上関係者でも疑問視している人がいるような存在だ。
ただそれは、現在4年生の隼人に残された、箱根本選を走る最後のチャンスなのだ…。
たとえ結果が公式には残らなくとも箱根駅伝を走りたい、その思いを抱え隼人は学連選抜チームへの参加を決めるのだ。
そして一方の徳重は、箱根駅伝というコンテンツを守るために手を尽くす。
新しい視聴者を獲得するべきだという黒石に対して、箱根駅伝に視聴者が求めているのは過度なおちゃらけた演出ではなく真っ向から挑む硬派なスポーツ中継なのだと必死に社内調整を図る。
この物語を構成するほとんどの人物が『箱根駅伝』を愛し、愛するがゆえに苦悩する上巻と、箱根駅伝当日を描く下巻というなかなかな長編なのだが、もう、面白くて!!
ちょうど上巻5時間下巻5時間くらいで二日かけて読んでたので、まさに箱根駅伝をしてる気分でした(笑)
箱根駅伝のランナーは全員ただの大学生なのだ。
箱根駅伝に憧れ、仲間たちと切磋琢磨し、本当ならばそのチームメイトたちとその場に立ちたいと望んで日々を費やしてきた。
ところがそのチームでは予選を勝ち上がれなかった、それなのに、個人では走るチャンスが巡ってきたとき、それに挑むことの意味を考えさせられる。
どうせ走るのなら真剣に挑みたいと対峙する姿にもう興奮止まらないし、バラバラだった学連チームがまとまっていくのも、そんな彼らに向けられた周りからの視線の数々ももう~いろんな思いが入り混じっててめちゃくちゃ面白かった…。
体感的には、今年の箱根駅伝は二度あった、くらいの満足度である…。
箱根駅伝が好きな人はもちろんだが、いや毎年何をそんなにみんな箱根駅伝に夢中になってるんだ?って疑問に思ってる方にも読んでいただきたい。
期待通り胸アツで、期待以上に最高な本作でした。
あぁ、面白かった…。

・額賀澪『タスキ彼方』

・額賀澪『タスキメシ 箱根』

・三浦 しをん『風が強く吹いている』

箱根駅伝を描くにしても本といろんな切り口あるよね…。どれも面白くて最高です。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?