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「スナックキズツキ」を読んで

大好きな益田ミリさんの7年ぶりの描き下ろし漫画「スナックキズツキ」を読みました。益田ミリさんの著作のなかでも、名作中の名作といえるのではないでしょうか?とにかくジーンと心があたたかくなる作品です。

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都会の路地裏にある「スナックキズツキ」にはアルコールが置いていません。そして、傷ついた人しかたどり着けないスナックです。

この漫画には老若男女、様々な人々が登場します。みんなどこにでもいるフツーの人たちです。真っ当に生きているけれど、「自分の人生、こんなんでいいのかな」と不安になるときもあります。それでも、今やらねばならないことをやっています。そんな時、ふとした瞬間に誰かの言葉でザックリ傷ついてしまいます。

そして、登場人物たちはその傷を、また何にも知らない別の人に受け渡してしまうのです。だから、今度は別の人が傷つく。次はまた、別の人、別の人……。傷は天下のまわりものです。

漫画のなかでは見ず知らずの人でも確実にすれ違っていきます。そして、ひとり、またひとりと「スナックキズツキ」に入っていくのです。

「スナックキズツキ」には程よく力の抜けた元漫画家のママがいて(多分著者)、ココアやら北欧のコーヒーやらりんごジュースやら、読んでいるこちらも読みたくなる飲み物を出してくれます。

傷ついた人はそこで愚痴をこぼします。

ママはその愚痴を受け止めた上で、ストレス発散とばかりに楽器を奏でたり、踊ったりするのです。そして傷ついた登場人物たちは、少し元気になって元の世界に戻ってゆきます。

それは、紛れもない優しさ。

「スナックキズツキ」は傷を癒し、優しさに変えてくれる不思議な場所です。わたしも行きたいし、これを読んだら、みんなスナックキズツキに行きたくなるとおもいます。この世の中でキズついてない人なんていないから。

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