岩井 洋 (Hiroshi IWAI)

帝塚山大学教授。専門は宗教社会学、経営人類学、大学教育論。文科省と産業界に物申す、辛口の大学論『大学論の誤解と幻想』(弘文堂)発売中。近著『テキスト 経営人類学』(共編著、東方出版)、『キャリアデザイン』〔第5版〕(共著、弘文堂)。

岩井 洋 (Hiroshi IWAI)

帝塚山大学教授。専門は宗教社会学、経営人類学、大学教育論。文科省と産業界に物申す、辛口の大学論『大学論の誤解と幻想』(弘文堂)発売中。近著『テキスト 経営人類学』(共編著、東方出版)、『キャリアデザイン』〔第5版〕(共著、弘文堂)。

最近の記事

アクティブ・ラーニング、ポートフォリオ、英語四技能、民間テスト、データサイエンスなど、文科省が「プチ特需」のようなものをつくりだして、その分野の関連企業をもうけさせる仕組みをつくりだしてきた。しかし、児童・生徒・学生をいかに育てるのかについて、どれだけ真剣に考えられてきたのか?

    • #05 国会中継で学ぶ

      国会中継は「Q&A」について考えるいい教材である。 表舞台(国会中継)だけではなく裏舞台にも注目せよ。 国会中継から学ぶべきこと かつてはテレビの中継でしか見られなかった国会中継ですが、いまはYouTubeでみることができます。衆参両院のさまざまな委員会は、基本的に質問と答弁、つまり「Q&A」で成り立っています。  ところが、皆さんご存じのように、国会中継ではQ&Aが成り立たない場面が多くみられます。「記憶にございません」や「お答えを差し控えさせていただきます」という答弁な

      • #04 自分のなかにウェブをつくる

        学びはYouTube先生のなかで完結しない。 デジタルとアナログの往復が学びを深くする。 学びをYouTubeのなかで完結させない 「#01 YouTube先生で学ぶ極意」で、次のように書きました。 YouTube先生で学ぶ極意は、 逆説的だが、YouTube先生の外に出ることである。  今回は、「YouTube先生の外に出ること」についてお話します。  この言葉の意味は、簡単にいえば、YouTubeのなかで完結させないということです。YouTube動画を観ている人のな

        • #03 学びには変化球が必要

          ド直球に英会話教室的なコンテンツを使うな。 ひとひねりしたコンテンツの使い方を考えよう。  前回、英語学習についてふれましたので、今回はYouTube先生で外国語を学ぶヒントについてお話します。 ヴァーチャル留学のすすめ コロナ禍で実際に海外の大学に行くことは難しいですが、ヴァーチャル留学なら可能です。英語圏に留学しようとする人の多くは、英会話学校に通ったり英会話教室的なコンテンツを利用したりするでしょう。しかし、現地で授業についていくことを考えれば、公開されている授業コ

          #02 みんなが独学できるわけではない

          みんなが独学できると考えるのは幻想である。 しかし、YouTube先生で独学できるようになるヒントはある。  前回、「YouTubeで学べ!」という雑誌の特集や本があっても、YouTube先生を使って、何をどう学べばよいのかについては誰も教えてくれない、と書きました。これが、この連載をはじめようと思った直接的なきっかけですが、今回は、さらに根本的な動機、いわば「0ページ」にあたる部分についてお話します。 独学幻想 世の中には、「知識は本やインターネットで十分に学べるから、

          #02 みんなが独学できるわけではない

          #01 YouTube先生で学ぶ極意

          YouTube先生で学ぶ極意は、 逆説的だが、YouTube先生の外に出ることである。 誰も教えてくれないこと  今日、雑誌『DIME』最新号を入手しました。  特集は「人生に必要なスキルはYouTubeで学べ!」です。英語、投資、資格、ビジネス教養、美容、料理など、役に立つYouTubeチャンネルが紹介されています。おすすめです。  さて、「YouTubeで学べ!」という雑誌の特集や本をみていて、いつも不思議に思うことがあります。それは、役に立つチャンネルの紹介はあって

          #01 YouTube先生で学ぶ極意

          学びの種 #015「映画で学ぶ」

          映画ができるにはワケがある。 映画の背景には大きな世界が広がっている。  映画を単なる娯楽として観る人が多いと思いますが、作品の背景にある社会的状況や作品が生まれた事情について、深く考える人はそれほど多くないでしょう。一本の映画が生まれた背景には、監督、脚本家や俳優をはじめ、映画を方向づけた人々の生い立ちや生き様、映画が製作された当時の社会の雰囲気、さらには社会を取り巻く世界情勢など、様々な要素があります。  しかし、多くの映画評論家は、俳優の演技、撮影技法や演出などについ

          学びの種 #015「映画で学ぶ」

          オンライン授業の誤解と幻想(7)

          前回、「対面授業原理主義」や「オンライン授業=対面授業の代用品」という考え方を見直し、「対面授業+オンライン授業」を初期値として考える発想の転換が必要である、と述べました。  今回は、最終回として、オンライン授業に対する世間の批判をどうとらえたらよいのかについて考えます。ポイントは以下の通りです。 ・コロナ禍によるオンライン授業とキャンパス閉鎖を理由に、大学を退学していはいけない。 ・「大学に行く価値がなくなった」という意見があるが、大学の機能の一部が一時的に停止しているだ

          オンライン授業の誤解と幻想(7)

          オンライン授業の誤解と幻想(6)

          前回から、かなり時間があいてしまいました。各大学では、前期のオンラインによる授業がほぼ終わった時期で、教員にとっては、さまざまな課題と可能性がみえてきたと思います。  現在のコロナ感染状況をみると、後期もオンライン授業を実施せざるをえない現実があります。そうなると、「オンライン授業の誤解と幻想(2)」でもふれた「対面授業原理主義」や「オンライン授業=対面授業の代用品」という考え方を見直す必要があります。ポイントは以下の通りです。 ・オンライン授業は対面授業の「代用品」ではな

          オンライン授業の誤解と幻想(6)

          学びの種 #014「誕生日をてがかりにする」

          誕生日は歴史の宝庫。 誕生日から世界がひろがる。  書店で、偶然にこんな本を見つけました。「歴史を動かした事件や世界的な偉人・著名人の生誕など、過去100年以上にわたる365日分の出来事を1日1冊にまとめたフォトブック」とのこと。誕生日や記念日用のギフトとして作られたようです。  自分の誕生日に、歴史上どんな出来事があったのかは、さまざまなサイトで調べることができますが、きれいな写真とともに一冊にまとめてくれているのは助かります。  さて、自分の誕生日をてがかりに、歴史に

          学びの種 #014「誕生日をてがかりにする」

          学びの種 #013「メモをとる」

          メモをとる習慣がついている人はそれほど多くない。 メモは思考を整理するツール。  「メモをとる」なんていうと、あたりまえのことのように聞こえるかもしれませんが、はたしてそうでしょうか。  以前、ある会社の就職説明会の様子を聞いたことがあります。説明会の途中で、社長自らが登壇し、会社について熱く語りはじめました。しばらくして、何を思ったのか社長は話を中断し、参加者のほうにあゆみだして、「君たち、相当アタマがいいんだな」とつぶやきました。続けて、「君たち、誰もメモをとっていない

          学びの種 #013「メモをとる」

          オンライン授業の誤解と幻想(5)

          前回、オンライン授業の普及を考えたとき、従来の「時間で学修量をはかるシステム」の再考と、学生の「多様性」への対応について考える必要があると述べました。   今回は、オンライン授業による「多様性」への対応について考えます。ここでいう「多様性」とは、ひとまず学生の学力・学習意欲の多様性をさします。ポイントは、下記の通りです。 ・オンライン授業では、学生の学修状況を「見える化」することができる。 ・学生の学修状況にあわせて課題の量や出し方を調節することができる。 ・教員はオンライ

          オンライン授業の誤解と幻想(5)

          学びの種 #012「おすすめにしたがう」

          ショッピングサイトの「おすすめ」には仕掛けがある。 しかし、「おすすめ」にしたがってみると意外な出会いがある。  インターネットのショッピングサイトをみると、「あなたにおすすめの商品をチェック」などというのがでてきます。自分の趣味を誰に教えたわけでもないのに、気になる商品がずらりと「おすすめ」にならび、ときどき気味が悪くなることがあります。  といっても、これにはちゃんと仕掛けがあります。「行動ターゲティング」と呼ばれる手法や「レコメンデーション・エンジン」というアルゴリズ

          学びの種 #012「おすすめにしたがう」

          学びの種 #011「企業博物館で学ぶ」

           企業博物館は産業史・技術史の缶詰。  人を引きつける仕掛けを企業博物館で学べ。  この記事のカバー写真は、カバンの製造販売で有名なエース株式会社の創業者である、新川柳作(しんかわりゅうさく)氏の生涯と事業を紹介した「新川柳作記念館」で撮ったものです。東京の浅草を歩いていて偶然に発見したので、立ち寄ってみました。この記念館は、「世界のカバン博物館」に併設されていて、私のようなカバン・マニアにとってはたまらない記念館・博物館です。なお、いずれもGoogleストリートビューで内

          学びの種 #011「企業博物館で学ぶ」

          オンライン授業の誤解と幻想(4)

          前回は、オンライン授業と対面授業をいかに組み合わせるかについて考えました。今後、オンライン授業の重要性が増すとすれば、これと連動して、学修時間のとらえかたについても考える必要があります。  そこで今回は、あらためて学修時間について、オンライン授業との関連で考えます。ポイントは、下記の通りです。 ・オンライン授業の普及を考える場合、従来の「時間で学修量をはかるシステム」を再考する必要がある。 ・個人の能力の多様性と社会経済的地位を背景とした教育格差を表裏一体の問題としてとらえ

          オンライン授業の誤解と幻想(4)

          学びの種 #010「マンガで学ぶ」

          マンガから広がる世界はバカにできない。 マンガを通して多くのことが学べる。  一般に、いい大人がマンガを読んでいるとバカにされる傾向があります。しかし、マンガから広がる世界はバカにできません。私のゼミに、野田サトルさん原作のマンガ『ゴールデンカムイ』を取り上げ、アイヌ文化についての民俗学的考察をした学生がいます。その学生は、最初はマンガから入り、マンガの世界観にあるアイヌ文化に興味をもつようになったといいます。  さて日本には、学校で学ぶような内容をマンガにした「学習マン

          学びの種 #010「マンガで学ぶ」