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学びの種 #013「メモをとる」

メモをとる習慣がついている人はそれほど多くない。
メモは思考を整理するツール。

 「メモをとる」なんていうと、あたりまえのことのように聞こえるかもしれませんが、はたしてそうでしょうか。
 以前、ある会社の就職説明会の様子を聞いたことがあります。説明会の途中で、社長自らが登壇し、会社について熱く語りはじめました。しばらくして、何を思ったのか社長は話を中断し、参加者のほうにあゆみだして、「君たち、相当アタマがいいんだな」とつぶやきました。続けて、「君たち、誰もメモをとっていない。僕が言ったこと、全部おぼえてるんだな」と語気を強めていったあと、近くにいたひとりの学生に話の内容を問いましたが、きちんと答えることができませんでした。
 大学生だけではなく社会人のなかにも、メモをちゃんととらない(とれない)人がいます。これは、習慣の問題です
 「メモ」という言葉は、いうまでもなく「メモランダム」memorandumの略語で、備忘録、覚え書き、手控え、などとも訳されます。このような訳語や英語のスペリングをみればよくわかりますが、メモは記憶memoryと深い関係があります。つまり、人間の記憶量には限界がありますから、記憶内容の一部を文字化しておくことで、記憶量を効率的に使おうというのがメモです。つまり、あとで何かを思い出すための「手がかり」がメモです。そう考えると、「君たち、相当アタマがいいんだな」という社長の言葉も腑に落ちます。
 記憶量を効率的に使うという以外に、メモは考えを整理するのに役立ちます。書き出した事柄があらためてみると、なんとなく考えていることの全体像がみえてきます。
 卒業論文の指導をはじめるにあたって、なかなか自分の考えをまとめることができない学生には、思いつくキーワードを書き出させることからはじめています。これは「#007 ハッシュタグ思考」でお話した「キーワード」の重要性ともつながります。とにかく「書き出す」という習慣は、考えを効率よく整理するのに役立ちます
 メモは一時的な記録ですが、記録として残すことを前提にして書かれたものが「ノート」です。最近、「ノート術」に関する本が多く出版されるようになりました。個人的におすすめしたいのが、ミュージシャン・音楽プロデューサーでノーナ・リーヴスの西寺郷太さんの本です。

 西寺さんの本は、見ていて楽しくなるぐらいに美しいですし、その緻密さには驚かされます。それだけではなく、ノートが創造のためのネタになっていることが重要です。
 最近SNSなどでノート自慢をする人も増えてきていますが、そのなかには、キレイなノートを作ることが自己目的化しているものもあるようです。「魅せるノート」などという言葉も登場するほどですから、そういう新しいジャンルが生まれたと考えたほうがよいでしょう。

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