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【書評】生きづらさと日本文化の関係。ベネディクト著『菊と刀』を読んで考えたこと。

我が家の中1の娘が
不登校を始めてしばらく経った頃、
娘が、人とコミュニケーションをとることに対して
かなり強く不安を感じていることが分かりました。

そこで
「対人不安」について
調べたところ、

対人不安症が
「恥の文化」を土台とする
日本特有の病気であると考えられていた
時期があったことを知りました。

 

  

そこで、日本の文化基盤が
「恥」にあると提唱した
ベネディクト著『菊と刀』(1946)より、

生きづらさと日本文化の関係について
紐解いてみます。

『菊と刀』が記された背景

この本は、太平洋戦争時にアメリカが

日本人ってよく分からない!

命がけで特攻とかしてくるのに
捕虜になった途端に米軍に対して
めっちゃ協力的になったりする!

日本人の考え方が分からないと
この戦争に勝てない!

だから日本の文化基盤や
日本人の考え方を調べてきて!

と、文化人類学者である
ベネディクトに依頼した
”研究課題”をまとめた本です。

 

この課題に対し、
戦時中で日本でのフィールドワークが
不可能な中、ベネディクトは

文献を調べたり
日本で生まれ、アメリカで育った
日系人へのインタビューなどを通して

江戸時代〜明治〜戦時中にわたり
日本人の考え方の中心にあるものを
アメリカの考え方との比較を使って
まとめています。

日本文化の特徴:要点まとめ

長いのでざっくりと要点を
まとめます。

①「応分の場」

上下関係が絶対である。

家族の中でも職場でも
地域社会でもヒエラルキーが
固定されている。

個人ではなく、その人の「役柄」が
その場での人の対応を決める。

 

つまり、
友人として集まっているときには
AさんとBさんは友人としての
態度で接するけれど

Aさんが軍服
Bさんが平服のような場面では
Aさんの立場が上であり、
対等な態度で接することは許されない。

個よりも関係性が重要
誰もがどこかの組織に属して
何らかの役割を持つということ。

②恩

例えば、アメリカでは
親が子供を育てるのは当たり前で
そこに感謝はあってもそれだけのこと。

一方日本では、子供は
親に育てられた「恩」を
感じて育つし

いつかはその恩を
返さなければならないと
感じている。

恩はいろんなところで発生するので
大きくなる一方である。

③義理

義理とは
上下関係の中での役割に対する
期待や保身である。

その役割としての務めを果たせない
=義理を果たせないこと
=自分の価値がないも同然。

  

だから例えば
夫(父親)が家長としての務め
(つまり収入を得て家族を養うこと)
を全うできないのであれば
夫は家での存在意義を失ってしまう。

家に、個人を守るシェルターとしての
機能が設定されていない。

④恥

人から悪く言われたり
拒絶することに傷付きやすい。

傷つくのを避けるために
他人を責めるよりも
自分自身を責める方向に走りがち。

⑤自重

そのため、戦いを避けるようになる。
また、競争をさせると
パフォーマンスが下がる。

この、恥と自重を中心として
日本人は世界を
「ルール通りに事を運ぶ場所」
と捉えている。

そのために、人の動向を非常に
細かい点まで観察して、
自分の動きを決めるし、

反対に、人から見られている
ということも強く意識している。

 

しかし、
「世間にバレない」のであれば
何をやっても良いと思っていたり

表の世界と
裏の世界を
うまく使い分けてもいる。

⑥幼児と老人はヒエラルキーの外

組織の一員として
完全な上下関係の中にいるのは
主に仕事をする年齢の人。

乳幼児は西洋よりも自由に
育てられるし
老人(祖父母)はヒエラルキーの
上の方に脱出する。

しかし、乳幼児のしつけには
「恥ずかしいわよ」といった表現が
多用され、その後の備えとなっている。

 

今でも日本の常識の土台のよう

この本が出版されたのは1946年で
調査対象となっているのも
江戸時代から戦時中なのに

今の日本の常識も
この「役割」「恥」「他人目線」を
前提に作られているなぁと
強く感じました。

 

例えば「お母さん」への期待が
非常に強くて
それに応えられないことが
自分へのプレッシャーになることだったり

会社員としての自分への期待に
応えることが一番になってしまい
過労死を招いたり

その役割を全うできないことは
恥であり、だから
外に助けを求められない・・・

ということは
今でもありますもんね。

 

ワガママになれば全部解決

『菊と刀』の中でも言及されているのですが、

組織の中での役割を全うすべく、
他人の動向を観察し、
自分も見られていると考える
恥の行動原理は

アメリカでは全く通用しません。

そして
アメリカのような個人と自由を
重んじる文化に慣れてしまったら

日本の行動原理には
「戻れない」
のです。

 

それってつまり
私たちは、非常に強い制約の中で
生きているということ。

だから
「生きづらい」
のは当然なんです。

 

このような組織・和を中心として
戦後、日本が豊かになってきたのは
間違いありません。

けれども今、日本は
豊かさを失っています。

 

今後、日本がどうなっていくのか
私には分かりませんが、
今、私たちはみんな変化すべき時を
迎えているのではないでしょうか?

 

私たちは、家庭や学校の教育のおかげで
組織でうまく立ち回る方法を
しっかり学んでいます。

これからはもう一つ、
個人で、自由と責任を持って生きる
やり方も身につけておく必要が
あるのではないでしょうか?

 

そのベースになるのが
自分の本質がどこにあって
どう生きていきたいのかを
決めておくことです。

本日もお読みいただき
ありがとうございました💕

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