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着物の着方いろいろ

2006年3月23日 (木)/2006年3月25日 (土)

最初の頃の日記にもちょっと書きましたが、私は「着付け」をちゃんと習ったことがありません。

まあ、和裁師の娘であり、比較的着物に縁のある家で育ちましたので、普段着くらいは着られたのが良かったのか、好きだからあまり苦でなかったのか、自分で着物を着て仕事をするということに抵抗が無かったということは、ありがたいと思っています。

幸いにもウチで働く人たちは、やはりみんな着物が好きです。

毎日着ているうちに互いに直しあったり、キレイに着られるコツを伝授しあったりで、新人さんも中途さんも、だんだん上手にきちんと着られるようになってくるのは、見ていても嬉しく、気持ちの良いものですね♪

面白いもので、着付けにもその店の性格が出ます。

ウチの先代女将は銀座の料亭出身ですから、襟元をきちっと締め、帯も胸高に、一巻き目と二巻き目をあまりずらさずに締める、どちらかというと素人さんに近い着付けを教えていました。

これが赤坂、神楽坂あたりの料亭さんになると、ちょっとタテ長に襟元をあわせ、帯はぐっと下げて、一巻き目と二巻き目を斜めにずらして締める、ちょっと粋な感じの着方になるんですね~。

在所はもちろん東京ではありませんが、配膳さんが赤坂で働いていた方だったり、ということがあります。

またこの着方は、在所の温泉ホテル系の仲居さんたちもなさるようで、そこで働いた経験のある方もいらっしゃいます。

そうするとそこで覚えた着付けで着ますから、ウチの常在スタッフとはカラーが違ってしまうのですね。

そんな時は、少しずつみんなで教えあいながら、同じように着付けられるようにしていくわけです。

「でも着方って個人の自由だから、粋だろうと素人ふうだろうとかまわないんじゃない?」

こう言うかたも中にはいらっしゃいますが、でもやっぱりお店のカラーって大切だと思います。

個人らしさは、その統一されたカラーの中でも充分発揮できるのですから、ある程度の絞り込みは必要なのです。

なんだか、学校の制服談義のようですね。
あ、でもウチも「制服」ですから、あってるか。

余談ですが、在京時代の私の職場は、銀座の数寄屋橋交差点近辺にありました。

夕方から夜にかけて、銀座のお姉さま方が出勤されていく、その姿の美しかったこと―。

当時は今ほど着物の良し悪しもわかりませんでしたが、それでも着物と帯の組み合わせや色の選び方の凄さ、立ち姿、歩む姿のあでやかさは忘れることが出来ません。

銀座で見かけるホステスさんたち、芸妓さんたちはまた、着物の着方がちょっと違っていました。

詳しいことはわからないのですが、とにかく帯のお太鼓を大きく、角をピンと張って結ぶのです。

当時のお客様が、「あれは素人さんがまねをしちゃ絶対にダメだよ」と教えてくれたのを覚えています。

それでも、派手な着物はまず見たことがありませんでしたねぇ…。

落ち着いた地色と少ない色で、しかし「えっ?」と必ず振り返ってしまうような着物が多かった記憶があります。

そして、どんな若いホステスさんも、着物に着られている人は見かけませんでした。

みなさんごく自然に、しっかり身についた感じでしたね…。
懐かしい話です。

そして世間様では、ちょっと前から着物ブームだそうで…。

ゆかたやリサイクル着物、レトロ柄などで人気が出たようですね。

本屋さんに行くと、着物関係のムックやハウツー本がたくさん並んでいて、びっくりするやら楽しいやら♪

こうなってくると、「自宅でも着たいんですけど」とか、
「ちょっと飲みにいくのに、気軽な着物で行きたい☆」など
ウチのスタッフや、若いお客様から声をかけられることがあります。

スタッフはね、もう着ることは自分で着られますから、あとは普段着の着物を買うのに、こんなんあんなんと野次馬根性で口出しすればOK、ってなもんです。

着物のリサイクル屋さんで、黄八丈に黒しゅす衿をかけたものを購入し、ものすごく可愛い町娘になってデートに出かけた娘もいましたし、洗える着物の大島紬風に半幅帯を締めて、ちょっとこじゃれたビストロで、良い気分で飲んできた娘もいました。

しかし問題は、日ごろ着物になじみがない若い方の場合ですね。

まずは「着物」に対して構えちゃいますし、「着物を着る」って、ものすごく大ごと!っていうイメージがあるみたいです。

着物って、ハレの日に着る正装のイメージ(またはケの喪服)がありますでしょう?

着付けを頼むと、タオルを何枚も巻かれ、綿をたくさん胸元に入れられ、人形のようにあっちこっち向かされて、ぎゅうぎゅう締められて、そりゃあもう大変―。

しかも出来上がったら苦しくて、座っても立ってもどうにも辛い…。

特に若い女性は、成人式の振袖くらいしか経験が無い人も多いですから、なおさら大ごとの印象があるのでしょうね―。

まあ、こうなると「ほんと着物って大変!」になるんでしょうが、これ実は着付け師さんによっていくらでも解決できる問題なんですね。

ウチの会社にはプロの着付け師さんが何人も入ってますが、皆さん一様におっしゃるのは
「楽に着付けても絶対着崩れはしない!」
ってことです。

これには、毎日着物を着ている私達もまったく同感なんですが、よく不思議がられます。

衿元も帯もきちっと着ているのに、全然苦しくない、着崩れもしない、それは「有り!」なんですよ。
ですから、恐れずにぜひチャレンジしてもらいたいですね♪


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