聞いてよ。
会話劇 ふたりのはなし
「聞いてよ」
「なに?」
「このあいだ俺のアパートで彼女とケンカしちゃってさあ、些細なことなんだけど結構な言い争いになっちゃって、そしたら彼女がヒートアップしちゃってさ、俺のおでこ目掛けてダーツの矢をドーン!だよ」
「え、大丈夫?」
「まあ大丈夫なんだけどさ、流石に疲れたわ」
「ってゆーか待ってお前、彼女いたっけ?」
「あー、それはいないんだけど。でもケンカがすごくて、見る?傷口」
「まって、いないんだけどってなに?
さらっと嘘ついてんじゃん」
「まあ嘘はついてるんだけど、でも大人になってこんなケンカするもんかなーって」
「いや、彼女いないじゃん。嘘ついてるじゃん」
「嘘くらいどーでもいいだろー」
「よくないよ、じゃあ一体誰とケンカしたんだよ」
「まあ彼女もいないし、嘘もついてるし、ケンカもしてないんだけど」
「ケンカもしてないじゃん!また嘘じゃん」
「そこじゃないじゃん!ダーツの傷口の方が大事じゃん」
「いや、そこじゃん!話が入ってこないのよ。
彼女いないし。ケンカもしてないじゃん!なにこの話」
「でも、傷口ほら?」
「わ!本当だ。痛そー。」
「でしょ。最悪だよ」
「でもこの話、嘘でしょ」
「嘘。でもダーツで傷を負ったのは本当」
「え?どういうこと?」
「いや、だから!彼女いないしケンカもしてない
けど、傷は本当。見たじゃん!」
「見たよ。そーいうことじゃないのよ。
なんで変な嘘つくのって?」
「そこはどうでもいいじゃん」
「気になってお前の傷口のことまで頭がまわらないよ」
「面倒臭いやつだなー。いちいち話しの腰折るなよ」
「面倒臭いのはお前だよ」
「病院行ったほうがいいかな?」
「それは行ったほうがいいよ。
でもさ、俺、お前ん家よく行くけどダーツなんてあったっけ?」
「ダーツはないよ」
「ダーツないじゃん、また嘘じゃん。こわ」
「ダーツはないよ。だからそこじゃないじゃん。
傷口からバイ菌とか入っちゃうのかなって?病院行ったほうがいいかなって?」
「それは絶対行ったほうがいいけど」
「やっぱ行ったほうがいいよなー。
病院は何科に行けばいいかな?」
「皮膚科とかじゃない」
「月初めだから社会保険証は持っていったほうがいいのかな?」
「そりゃ持ってかなきゃ駄目だよ」
「そっか」
「ってか、お前が持ってるの、国民健康保険証じゃなかったけ?」
「それは国民健康保険証じゃん!そこじゃないじゃん!持っていかなかったら場合どうなるのかなってことじゃん!」
「また変な嘘ついてんじゃん。きしょいの連鎖がすごいよ」
「そんなのどーでもいいじゃん!
それより持ってかなかったら、料金全額負担になっちゃうのかなって!」
「知らないよ、次回持参すればなんとかなるんじゃないの?」
「無責任だなー、なんとかならないで、高額の医療費請求されたら俺はどーすればいいんだよ!お前のせいだぞ!」
「なんでだよ!もう知らないよ」
「でもこの間の競馬で万馬券当たったから、それでなんとかなるか」
「お前、競馬当たったの?」
「いや、当たってはないけど」
「当たってないじゃん!虚言がすごいよ。
なにお前、今日変だぞ」
「俺は変じゃん」
「自覚あんじゃん」
「自覚の元にじゃん!でも今は論点そこじゃないじゃん!」
「自覚あってのこの流れは結構やばいよ」
「そーじゃん!俺やばいじゃん!でもそこは流していかないと。話しが進まないじゃん!」
「いや、お前のせいだけどな」
「俺のせいじゃん。当たり前じゃん。どっからどう見てもじゃん!」
「開き直ったよ。ピノキオ野郎が」
「俺はピノキオじゃん!」
「ピノキオなわけないじゃん!」
「ピノキオなわけないじゃん、当たり前じゃーん」
「なんなのお前、今日やばいぞ。おでこの傷のとこから脳内コントロールチップでも埋め込まれたんじゃない?」
「それはそーじゃん!」
「それはそーなの!?」
「そーじゃん!この間UFO乗ったじゃん!」
「どーせ乗って無いじゃん!」
「乗ってないじゃん!!」
「なんなん!?」
「なんなん!?」
「じゃあお前、その傷どーしたん?」
「あ、これタトゥー」
「タトゥーーーーーーーーーーーーーーー!?」
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