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詩集 幻人録

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2023年6月の記事一覧

娯楽蝶

娯楽蝶

崩壊は花弁の様に
再生は根の様に
輪廻のある世界に住んでいるのは
私達の特権

霧雨はリボン刺繍の様に
嵐はダメージジーンズの様に
雨音さえも着こなしてしまうのは
あなただけの特権

鳴り止まない世界の雑音は
孤独にしておくには勿体ない
ほらよと其れに飛び込んで
私と一緒に騒ぎましょう

余白のない毎日なんて
一日もないこの空間で
好奇心を食べ尽くすまで
私は歩みを止められない

物憂げに囁く吟遊

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眠れない夜からの手紙

眠れない夜からの手紙

雨の降る夜のくだらない愛の歌
素朴な花の涙をなぞる様に愛でる
それは記憶の中の日
切なく酔い焦がした優しさの
滴る愛情を溢さぬ様に掬えるか

なんでもない日々の
狂おしい程に眩しい部屋
蹴飛ばして向かいましょう
私が濡れない強い心
眠れない夜の待ち合わせ

雨の降る夜の失った愛の歌
裸になった情熱をひとしきり鎮火させる
それは記憶の中の火
歯痒く戻らない青い模様
飲み込んで喰らい付いた
私が私に変

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風の国

風の国

ここは風の国
君は夜の街
こっちにおいでよ
風に乗ったら

青い目をした
異国の人が
天を仰いだら
そこは風の国

花嵐吹く場所
馬も子供も
みんな風に跨り
時を越えて行く

命吹く山を抜け
古鳥の番人
この国に入るのは
生命ある者だけ

若木が耐えず
背伸びをする時間は
私も一緒に伸び
心からの深呼吸

飛べよ
飛べよ

空を泳ぐはつむじ風

浮けよ
廻れよ

空で寝るのは霞み風

空の色は異国

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am3

am3

真っ暗な洗面台の下にしゃがみ込む
時刻はam3
眠れない夜の終われない夢

希望の灯火はついたままだが
この空間は暗いまま

スマホの灯りだけがただ
太陽に照らされた馬の目の様に光ってる

この時間に洗面台の下にしゃがみ込んだ私は
もう希望から離れられない

うつらうつらとしなくとも
夢は見れるとたくらんだ

このまま朝までここに居ようと企てた
何故ならここは天国で
もの静かであり
心情の額縁がは

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月は心に、愛は己に

月は心に、愛は己に

月が甘美な程に美しいのは
私の心が美しいからである

私の心情が麗しいのは
あなたがどこかで健やかに生きているからではなく

私の心身の均衡が綺麗に保たれているからである

月の誕生日さえ知らない性分で
私は図々しくも月に祈りをかける

黄色い月がいつまでも
ここで華麗に咲いています様にと

深海の手前の様に暗い夜空に
心の灯台である月は

私の心をはっきりと浮き彫りにさせる

必要なものさえ手放

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蛇は朝日に

蛇は朝日に

戸惑う朝に
絡みつく蛇の頭
外に出れない私にとって
朝は苦行の圧縮か

時折り見せる
蛇の笑みは
私をどれだけ馬鹿にしたことか

動き出す朝
留まる私

歯車の一部分になれないもんで
ごめんなさいと布団で隠す

これほどまでに絡まった蛇は
私の心臓にも這ってくる

動けない様に虐めてくる

ならばいっそ

ここで詩を書き
蛇に朝日の眩しさを教えよう

朝日は眩しい
さんさんと
蛇さんご覧
さんさん

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あなたはあなたのままでいて

あなたはあなたのままでいて

あなたはあなたのままでいい
受話器の向こうの聲は
確かにあなたで偽りも媚びもなく
自分の意思で言葉を紡いでいた

無理に自分を探そうと
やっけになってりゃちょっと待て
自分なんてものは好奇心の先にあるもの
裁かれるものでもなんでもない

これはとても楽しみなことで
少しでも優しさや愛を持てたなら
その時点で後ろめたく生きる必要なんてないのだ

淋しさの奥にある繊細な毛のない心臓は
あなたのいちばん

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海の国

海の国

海の中に沈む国では
漂う風を感じたく祈る

星の流れを見落としては
肩を落として泣いている

新しい仲間が増えたなら
言葉の意味から教え込む

言葉に宿る感情を水流に
押し戻されない様に抑えこんで

暗い深海の奥の方
明るい詩を歌う民

海の中に沈む国では
泳げないなら踊ればいい

感じた程に踊ればきっと
気がつけば人魚の老婆の様に
話し疲れて泳ぎ疲れて
そのままここに住み着き暮らす

嘆く言葉を

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詩/凪の街

詩/凪の街

あなたが住むのは凪の街
とても静かな朝凪の街
打ち寄せる小波の息切れも
泣いた子供の小さな思いも
静かにあふれるゆっくりと

ゆらり ゆらりと漂う部屋から
覗いた雲の暖かさ

ひらり ひらりと浮かんだ雲から
滴った雨の美しさ

あなたが住むのは凪の街
とても静かな夕凪の街
吹きつける風の踊りも
笑った子供の小さな愛も
静かに包むふんわりと

あれよ あれよと走った日から
どれほど景色が変わっただろ

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臆病に

臆病に

皆が寝静まった刻
私は物語を書くのです
悲哀の話
これが私の全てだとしたならば
私は怖くて
世に出せない

否定的構文に刺されては
命を削られ剥がされます

淀んだ川の隅っこで
光を焚いて書くのです

水面の音が生きていて
私を包み込んだなら
私はひとりじゃないと知るのです

あゝ心の浄化場よ
魂の洗い場よ
私に心地よい布団を用意しておくれ

灰

空飛ぶ愛が燃えました
燃えたら灰になりました
そのまま散っておやすみなさい

私の心はいつぞやの
二人で濡れた帰り道
びしゃびしゃになり笑ったことがらを
絶え間なく繰り返しております

膝を擦りむく様に
血が出ては化膿し跡に残る
私は身体を揺すっては
大きくなるための準備をします

神経痛だと騙しては
涙を膝の傷に塗ります

これが生きると言うことなのでしょうか

現代エジソン

現代エジソン

心臓に穴が空いて
そこにおもりを詰め込まれた

だから今日も動けないです
ごめんね 母さん

黒い人間が突然
僕の目の前に現れた

そいつがどんどん増殖しては
邪魔なんだよ 降参

でもさ
前向きに生きるなんてこと
とても難しいってことだってわかってよ

つまらない街の喧騒が爆音でうるさいなぁ
って怒ってるんだ

どんなニュースも暗く受け止めるメンタルが
あやかしの様にうなっていく

友達は言う頑

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