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顧客満足と顧客価値

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
新型コロナウイルスのワクチン接種を終えて副反応に苦しんでいる「中の人」ですが今週も書いていきますよ〜。
今週は「顧客満足」について触れてみようと思います。顧客満足は「顧客価値」を提供することで生み出すことができるとされていますが、この考え方はLTV(ライフ・タイム・バリュー)が重要視され、サブスクリプション型の商材が増えた現代のマーケティングには欠かせない考え方だと思うので、概略を学び直しました。

顧客満足とは

顧客満足については『ゼミナールマーケティング入門』という書籍が一番簡略的に説明されていたので下記に引用します。

顧客満足とは、製品・サービスの使用・廃棄ににあたって顧客が感じる満足あるいは不満足の水準である。

石井淳蔵他『ゼミナールマーケティング入門』日本経済新聞出版社

要するに「買ってよかったな」と思ってもらえるかどうかという話です。
LTVを度外視して、一回限りの購買とするならば、購入後の感想なわけですから購買意思決定要因になり得ないので重要視する必要もありません。とは言っても、口コミもありますから一回限りの購買しかないような高額商材などでも気にするところですよ。むしろ、これを気にしない商材は詐欺まがいのような気もします。
現実的には、再購入を促す場合やサブスクリプションのような継続購入商材においては、次回購入や契約継続の判断材料になるため顧客満足を得ることは非常に重要になります。もっというと、顧客との長期的な関係構築(CRM)においては一層重要な役割を果たします。コミュニティ・マーケティングやファン・マーケティングを展開する際にも役立ちそうですよね。

顧客満足の決定要因

顧客満足は、リチャード・オリバー氏の期待不確認モデルによると、「購入前に顧客が抱いている期待」と「購入後に顧客が下す評価」の差分で決まるとされています。
【「購入前の期待」>「購入後の評価」】の状態では当然顧客は不満を覚え離反してきます。また、【「購入前の期待」=「購入後の評価」】だと不満を覚えることはなくても、感動もなく記憶に残りません。【「購入前の期待」<「購入後の評価」】となった場合に顧客満足が高まるのだそうです。
つまり、顧客満足を獲得するためには良い意味で期待を裏切るような驚き・感動を与える必要があるということです。
留意すべきは、商品の品質や性能が高いことが顧客満足につながるわけではないということです。顧客満足の決定要因である「購入前の期待」と「購入後の評価」はどちらも主語が”顧客”であるため、どんなに優れた製品だと喧伝したところで直接顧客満足につながるわけではないのです。
そこで、期待値のコントロールが大切になります。期待を上回らなければ顧客満足を得ることができないので、期待を煽るだけではLTVが伸びません。プロモーション領域に携わることが多いウェブ解析士はこの点に留意が必要だと思っています。
かと言って、不当に期待値を下げすぎても、期待できない商品を買おうとする人はいないので売上になりません。こういったジレマンを抱えながらプロモーション方針を勘案することに、難しさと面白さがありますよねぇ。

顧客満足をCRMに生かす

さて、一層ややこしくなるのが、顧客が繰り返し購買した場合です。初回購入時と2回目以降の購入時で提供する製品・サービスの品質や性能に変化がないと、徐々に離反を招いていきます。
なぜかというと、一度目の購入で満足すると、2回目以降の購入前の期待が跳ね上がるからです。「中の人」もよく経験します。たまたまランチに入った食堂が思ったよりも美味しくて、「良い店見つけたな」なんて思いながら再び食べに行くと「あれ、こんなもんだっけ?味落ちた?」なんて思ったりします。
これは、初回購入時の「満足した」という記憶だけが残り、「空腹が満たされれば良い」程度の期待から「ここは美味しいお店」という期待に変化しているからですね。
なので、漫然と同じ製品・サービスを提供し続けるのではなくブラッシュ・アップを続けて顧客満足を得ていくことが、顧客と優良な関係を築く礎になっていくそうです。

顧客満足を生む「顧客価値」

顧客価値とは文字通り、顧客が認めた製品・サービスの価値です。ここでも重要になるのが「顧客が認めた」という点ですね。その実が伴っていようがいまいが関係ないんですよ。
そして、顧客が感じる価値には階層があるらしいのです。それが、アメリカのコンサルタント、カール・アルブレヒト氏が提唱する「顧客価値ヒエラルキー」です。
一つ目の階層は「基本価値」です。その製品・サービスにおいて必要不可欠な要素を指します。例えば、スマホで言うと電源が入るとか問題なく動作するといったところでしょうか。
二つ目の階層は「期待価値」です。これも基本価値同様に当然期待されるものです。スマホでいえば、高解像度カメラとかですかね。
三つ目の階層は「願望価値」です。顧客が”あったら良いなぁと”思っているものですね。期待しているわけではないけれど、実装されていれば高く評価されるものです。スマホでいえば、高機能防水性能とか長時間駆動バッテリーとかですかね。
そして、最後の階層が「未知価値」です。これは、想像もしていなかった驚くべき価値を指します。スマホで言うとなんでしょうねぇ。質量がなくなるとかですかね(笑)
この未知価値は一度顧客が認知すると、願望価値になってしまうので、継続できないのが難点です。

補足になりますが、基本価値と期待価値はPOP(Point of parity)=同質化要素です。これがなければ選んでもらえない要素なので、最低限押さえておくべき価値となります。一方で願望価値と未知価値はPOD(Point of Difference)=差別化要素です。これがあれば選んでもらえる要素になるので磨きをかけていくべき価値になります。

顧客価値の決定要因

顧客価値は、「顧客が得るもの(ベネフィット)」と「顧客が失うもの(コスト)」の相関から生まれるそうなんです。
要するに、支払うコストよりも得られるベネフィットが多ければ価値がると見做されると言うことですね。プレミアム付き券なんかがわかりやすいかもしれないですね。例えばですが、4000円支払って5000円分の商品券があったとして、ベネフィットの方がコストより1000円上回ります。この差分の1000円が価値として認められるわけですね。

顧客価値を上げる方法

顧客価値を上げるには以下の5つの方法が考えられます。

①ベネフィットを引き上げ、コストを下げる
当然、見返りが大きくなるのに商品自体は安くなれば顧客価値は高まりますよね。
②ベネフィットを引き上げ、コストを据え置く
これも、同じ価格で今まで以上の見返りを得られるので顧客価値は高まります。
③コストを引き上げるが、それ以上にベネフィットを引き上げる
多少コストが増えても、それ以上に得られるものがあるのであれば価値を感じる人も多いはずです。
④ベネフィットを据え置くが、コストを下げる
得られるものが変わらなくても、安くなるのであれば十分価値を上げることができます。
⑤ベネフィットを引き下げるが、それ以上にコストを下げる
単価が下がるわけですから、価値は高まりますよね。

参考:平野敦士カール『マーケティング見るだけノート』宝島社

要するに、コストとベネフィットの差を広げましょうと言うことです。
顧客価値を高めることで、「こんな安いのに、こんな上等のものが!」と言う顧客満足を得ることにつながるようです。

まとめ

顧客満足とは顧客の期待を購入後の評価が上回ることで生まれます。特に顧客の期待をコントロールすることは顧客満足を大きく左右します。事前に抱いてもらう期待は大きすぎると不満足を生み出し、小さすぎてはそもそも買ってもらえません。特にプロモーションにおいてはこの点に留意しなければなりません。
また、価格設定ではベネフィットとの差分設計が重要になり、商品開発においてはPOP要素とPOD要素を顧客価値と照らし合わせながら検討することが必要です。
このように、顧客満足とはマーケティング・ミックス全体を噛み合わせることで生まれるものです。そして、継続利用や再購買を促すための大きな強みになり得るものです。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今週はコロナワクチンの副反応に対抗しながら頑張って記事を書きました(笑)
顧客満足をよく目にするのはTVCMとかですよね。「顧客満足度No1!」とか。眉毛に唾をつけそうになる程陳腐化している表現ですが、それが本当だとするとなかなかの企業努力を必要としますよね。
外部支援者として活動しているウェブ解析士も多いと思いますが、外部支援者になると自身の顧客満足とクライアントの顧客満足をコントロールするという至難に立ち向かわなければならないですよね。その辺りの皆さんのノウハウもぜひ聞いてみたいです。

それでは、また来週お会いしましょう。

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