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迷いも心配もあったから、従業員に頼っていいと気付くことができた|寺本紙器株式会社 寺本忠司さん

今回は、昨年11月の和歌山ものづくり文化祭2022に参加された寺本紙器株式会社 代表取締役 寺本忠司さんのインタビューです。

(聞き手:和歌山ものづくり文化祭 事務局 太田佳宏)

―私が会社に伺うのは、確か私が担当した現場改善の事業を利用いただいていた時以来ですから、4年ほど前ですかね?そのころと変化とかありますか?

いろいろと変わりましたね。ちょうど先日HPも刷新して、従来の段ボール屋さんのイメージも変えるようにしていこうとしています。印刷機も新しい機械を入れました。

寺本紙器株式会社ホームページより

ー「いざ、デジタル印刷の可能性へ」ということで、ずいぶんハイテクというか先進的な感じがするのですが、どういったイメージなのでしょうか? 

当社は、一般的な段ボールの製造と、大型の印刷機による装飾を施した什器や化粧箱などを製造しています。
この2つの事業において、これまでは仕事に対する考え方が少し違ったんですよね。それを同じ考え方・統一のイメージを持てるようにしていきたいと思っています。
どういうことかと言うと、従来の段ボール商品は「いかに効率よく生産するか」が大事で、数銭円単位のコスト減が要求されます。一方で、印刷機を活用した什器などは品質を重視されますので、お客さんが求める色や形状に応えていく必要があります。ですので、それぞれの事業の担当によって時間やコストに関する考え方にずれがあったように感じていました。
しかし、コストと品質のバランスはどちらも大事ですので、「お客様に良いものを届けれるように」という想いで、従来の段ボール製品には品質の意識を、印刷什器などにはコストや時間の意識を高めていけるようにしています。

ー2つの事業で「良いものをお客さんに届ける」というところでは同じですもんね!
そんな寺本紙器さんですが、昨年(2022)の和歌山ものづくり文化祭では会場の什器を段ボールで制作し、イベントの成功になくてはならない存在でした。そもそも、なぜもの文に関わることになったのでしょうか?

「和歌山ものづくり文化祭」のキービジュアルパネルも寺本紙器さん製作!

最初このイベントを県の方から紹介いただき、そのあと実行委員長・菊井さんに改めて声をかけていただきました。ほんと、自分たちで1からイベントを立ち上げるのは凄いなと感動してしまいました。
これまで私も商工会や橋本市でイベントをできたらなと思うことはあっても、企画して実施していくのはなかなか大変でした。その大変さを知っているだけに、こんなにエネルギーをもって行動されている菊井さんとぜひ一緒にやりたいと思いました。
ましてや、従来のように見せるだけの展示会ではなく、ワークショップも交えた体験型イベントだったので、それがまたこれまでと違って本当に良いなと思いました。

ー寺本さんは地域の活動も積極的に関わっておられるからこそ、大変だということも分かってらっしゃる。
結果的に、主催者のエネルギーに背中を押されて参加されたと思うのですが、聞くところによると参加を決めるまでは少し躊躇することもあったとか・・・?

自分としては参加したかったのですが、従業員がどのような反応を示すのか心配なところがあったんです。開催が土日だから、休日で嫌がらないかなとか、仕事の負担が増えることに拒否しないか、など。
それと一番心配だったのは、他の頑張っている会社を見ることで、「隣の芝は青く見える」のではないかいうことでした。

―なるほど。外から刺激を受けるのは良いのだけど、それを自社に生かそうとするのではなく、他社のほうに目移りしてしまうかもと。

そうなんです。だから、従業員にどのように伝えていけばよいかという迷いがありました。声をかけてくださった皆様にはなかなか決断できずご心配をおかけしまいた。
でも結局は「絶対良いものだから」ということで、「えいやっ」で参加を決めました。笑

―思い切って決断されて良かったです。笑
懸念されていた、従業員さんはもの文に対してどのような反応をされていましたか?

会場の設営に関わってくれた従業員は、設営準備で時間が押しているにも関わらず、嫌な顔をせずに最後まで準備をしてくれました。「いろいろ任せても大丈夫なんだ」「思った以上に、みんなやってくれるんだ」と。外に出ることで従業員の職場とは違った一面を見ることができて、それが私の中ですごく感動させられました。
また、当日会場に足を運んでくれた従業員も、思った以上の賑わいにすごく喜んでくれていました。「すごい!」って。で、楽しそうにワークショップをしていましたね。

イベントの前々日から設営にご協力いただきました。

―会社の中では知りえない従業員の顔を知れたのは凄く良い機会でしたね。

そうですね。これからは従業員をもっと頼っても良いのではと考えるようになりました。
太田さんから以前言われた、「段ボール屋で、ぜひとも働きたい人ってどれくらいいるのでしょうか?」って言葉が、すごく頭に残っていて。確かに、段ボール屋で働きたいと初めから思っている人はほとんどいない。どうやったら働き甲斐を提供できるのかなと考えていました。
でも、今回の参加も踏まえて気にしすぎなのかなと。仕事も、もっと従業員のスキルを活かせるように柔軟に変化していければよいのかなと思うようになりました。

―大変失礼なことを言って申し訳なかったです・・・笑  
でも、御社は女性のスタッフもいて、デザインも自分たちでするし、什器などの製作物も自分たちで表現できる。決められたものだけを作る会社ではないので、すごく可能性はあるなと思っていました。

ありがとうございます。人を活かしていきたいですよね。

―さて、すでに何度か話に出ていますが、会場の什器は本当にすごかったです。私も会場で見て、「段ボールの什器ええやん」と思いました。このような展示会什器はこれまでにやられていましたか?

ここまでの規模での什器はなかったのですが、もともと展示会用の什器は作っていきたいという想いはありました。和歌山ものづくり文化祭の什器を引き受けることで、今までやりたかったことに挑戦する良いチャンスだと思いました。

―一般の方々にしてみたら、段ボールで什器や装飾ってあまりイメージがわかなさそうですよね。今回の出展は段ボールでいろいろ作れると知ってもらえる良いきっかけだったのではないでしょうか。

有難いことに、もの文の後に什器や化粧箱の製作ができるかなどの問い合わせが数件ありました。
今後こういったことも仕事につなげていきたいですね。

―準備も大変だったと思いますが、もの文当日はうまく回すことができましたか?

それが、もうバタバタで!
当社は段ボールでランプシェードを制作してもらうワークショップだったのですが、想定の人数以上に参加していただいたので、初日で資材不足になってしまいました。
初日の後に誘っていただいた懇親会には参加したかったので、顔を出させてもらって、そのあと橋本の工場まで戻って、夜中の2時まで従業員も一緒に頑張ってくれて、資材を作っていました!
そして、また朝から和歌山市内のお店を回ってランプを買いあさって、さらに開場までに買ってきた材料を改造して、という・・笑

―それは大変でしたね!

大変でしたけど、楽しかったし、このイベントは凄いな!と思いました。
まずはイベントに活気があって、菊井さんをはじめ運営の方も熱量があって、パワーをもらえる。
それと、振り返ってみると、このイベントを通して製造から集客までの一連の流れを経験できたというところも魅力的でした。ワークショップの体験を企画して、人の段取りを考え、集客して接客するというところまでを体験できるというところでも、他の方にも一番オススメできるイベントだと思っています。 

―参加するまでは心配も感じられていた寺本さんに、そう言っていただけると嬉しいですね。このイベントに参加して一番良かったことをあげるとすればなんでしょうか?

先ほどのことと被りますが、従業員が頑張ってくれたということが一番です。ワークショップ企画・資材準備やレイアウト検討などの事前準備から中心になって進めてくれて、ブース設営も黙々と準備してくれたり、当日も接客を頑張ってくれたり、思った以上のことをしてくれました。最初は、従業員が関わってもらうことに対してすごく心配していたのですが、いろいろと任せていこうと思えるようになりました。
今年も従業員とワークショップの商品や販売できる商品を考えていこうと思います。

―従業員との新たなかかわり方が見えてきたようで良かったです。本日はありがとうございました。

寺本紙器(株)
所在地 和歌山県橋本市高野口町名古曽1078
会社HP https://teramotoshiki.com/

聞き手
太田佳宏|和歌山ものづくり文化祭 事務局
(公財)わかやま産業振興財団 職員。主な業務は起業支援と新商品開発補助金の事務局。2年前までは、工業系ものづくり企業の販路開拓支援を中心に担当。ちなみに6年前までは中学校の数学教員。

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