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Web3.0/Web3_#7:Web3に残る問題点 - 技術と構造の両面から考える

ギャビン・ウッド が提案したWeb3に沿って、ブロックチェーン技術を用いた様々なサービスが生まれました。しかし、現状のWeb3には問題点もあります。問題点を解決するためにどのような手段があるのかも含めて解説します。
(関連単元:「ギャビン・ウッドが提唱したWeb 3.0とWeb3の基礎知識


Web3から生まれたもの

新しいサービスとして、主に海外でDAppsが実装されています。DAppsはブロックチェーン上でソフトウェアを動作させる仕組み「スマートコントラクト」を応用した、分散型アプリケーションのことです。

海外では、仲介者なしで暗号資産(仮想通貨)の取引ができる「Uniswap(ユニスワップ)」や、 NFT の購入・出品・二次流通ができるプラットフォーム「OpenSea(オープンシー)」など、様々なサービスが展開されています。

特に金融分野では、ギャビン・ウッドがWeb3の構想を打ち出す前から決済手段としてBitcoin(ビットコイン)が生まれるなど、行政機関や金融機関などによる中央集権的な管理からの脱却を目指す動きが見られていました。

しかし、DAppsには技術的、構造的な問題点があります。

Web3の技術的な問題点

技術的な問題点として代表的なものに次の二つがあります。

■スケーラビリティに欠けている

ブロックチェーンでは、参加するコンピュータが全て同じ処理をするため、コンピュータの数を増やしても処理能力が増えません。

利用者の増加による規模拡大にどれだけ柔軟に対処できるかをスケーラビリティと言い、Web3には簡単に規模を拡大しづらい問題があります。このスケーラビリティの問題は、シャーディングやセカンドレイヤにより解決できるとされています。

シャーディングとは、負荷を分散するために複数のコンピュータがデータを分割して担当分だけを処理する方式です。シャーディングが実現されることにより処理能力が増強できるだけでなく、ブロックのサイズを実質的に拡大できることでブロックの混み具合が軽減され、取引時に必要な ガス代 の削減効果も期待できます。

セカンドレイヤとはレイヤー2とも言われ、従来のブロックチェーン(レイヤー1)の仕組みを利用して処理能力を増強し、多くの処理をブロックチェーンの外側(オフチェーン)で実行する仕組みです。

複数の取引をレイヤー1での処理で検証可能な一つのトランザクションの形で記録できるようになるため、取引時に必要なガス代を大幅に削減できます。レイヤー1のみを利用して取引していた時と比べて単位時間あたりの処理能力が増加し、利用者の利便性も向上することが期待されています。
(関連単元:ブロックチェーンの課題解決になるか - レイヤー2編)

■秘密鍵の管理が難しい

暗号資産の取引に必要な ウォレット の秘密鍵の管理が難しいという問題があります。

この問題については、Bitcoinの39番目の改善提案(BIP39)にてニーモニックフレーズが実装され、12語または24語の単語を順番にメモすることでウォレットを復元できるようになりました。

ただし、ウォレットの中にはニーモニックフレーズが暗号化されずにコンピュータに保存される重大な脆弱性が発見されたものもあります。ニーモニックフレーズよりも安全な復旧方法として、現在注目されているものがソーシャルリカバリウォレットです。

ソーシャルリカバリウォレットは、利用者の秘密鍵-公開鍵の鍵ペアを本物だと認めてくれる「ガーディアン(本人の別アカウントや家族・知人や商用サービス)」を少なくとも三つ選んで、ウォレットを保護できます。万が一、秘密鍵を紛失しても、自分が新しい鍵ペアを作り、過半数のガーディアンから公開鍵を認めてもらえれば、秘密鍵を事実上再発行することが可能です。

Web3の構造的な問題点

Web3は、技術的な問題については解決するための新しいツールや手法が登場していますが、構造的に、解決方法がまだ明確になっていない問題を抱えています。その中から二つを紹介します。

■結局Web 2.0に回帰している面がある

Web 2.0のような少数企業による管理からの脱却を目指して生まれたWeb3ですが、実際は、特定の管理者に対する信頼に依存したサービスやプロダクト運営が続いている例も散見されます。

例えば、OpenSeaやWebブラウザのBrave、アプリと Ethereum (イーサリアム)を連携するインターフェース(API)を提供するInfura(インフラ)などが巨大なプラットフォームになっています。こうした巨大プラットフォームへの依存度が高まった現在のWeb3の状況は、Web 2.0で問題視された「少数企業による管理」と大差ありません。

また、少数企業などの中央による管理からの脱却を提唱しているEthereumも、実質的に支配力を持つコミュニティ(Ethereumに関わる開発者や投資家)により管理されています。

2016年に発生した「The DAO事件」では、 スマートコントラクト のバグを突かれてETH(イーサ)が盗まれた際、当時のEthereumに関わった開発者や投資家の97%が「ETHが盗まれたことを事実上なかったことにする措置」を行う、それまでの履歴との互換性を損なう仕様変更(ハードフォーク)を選択しました。

The DAO事件へのこの対応は、事実上の検閲を行ったのと同義であり、Ethereumの運用が特定の集団や管理者に依存していることを露わにしたと言えます。

■集団の合意形成プロセスの問題

Web3を支えるブロックチェーンは、決して人間同士の合意形成を支援しているわけではなく、人間の意思の表明を検閲されることなく記録できるだけです。この仕組みを用いれば、スマートコントラクトの仕様の決定を含む何らかの意思決定を投票、すなわち意思表明の多数決によって行うことはできます。

しかし、多数決により物事を決めること自体の是非が問われる場合も少なからずあります。また、スマートコントラクトなどのプログラムコードに対する意思決定を行う場合、投票者のほとんどはコードを読めないため、もしコードにバグなどがあったとしても把握できないリスクがあります。

加えて、トークン(暗号資産)の保有量によって投票権が付与される仕組みの場合、株式会社のように実質的な支配者が生まれる事例もよくあります。

このように、Web3にはまだ解決できていない問題があることを理解しておきましょう。

次回の第8回からは3回連続で、「Web3にまつわる疑問」シリーズを解説します。Web3について学習する中で、誤解されやすい、あるいは間違いがあるような概念や理論について解説を行っています。ぜひ、ご確認ください。



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