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Web3.0/Web3_#9:Web3にまつわる疑問 - ファットプロトコル編

Web3について学ぶ中で、「これは本当なの?」と疑問に感じる概念や理論もあると思います。今回は「Fat Protocol(ファットプロトコル)」の理論について解説していきます。


Fat Protocolは本当なのか?

Fat Protocolは、スマートコントラクト によってブロックチェーンのアプリケーションのレベルで実現されているトークンの時価総額の合計よりも、Ethereum (イーサリアム) の ETH (イーサ) のように、そのブロックチェーンの維持活動に関わる ネイティブトークン の時価総額の方が大きくなるという「主張」です。

インターネットや書籍等でFat Protocolを調べると、「アプリケーションよりもプロトコルに価値があるという理論」と解説されているものが多いですが、“価値”の解釈には幅があります。そのため、本教材では価値を“時価総額(経済価値)”と定義しました。また、「プロトコル」は通信のやり取りの仕方を表す言葉であり、アプリケーションにもアプリケーションのプロトコルがあります。アプリケーションとプロトコルを比較するのは、少なくとも科学的な言葉の使い方としては奇妙です。そこで、本教材ではプロトコルを「プラットフォーム (アプリケーションを動かすための土台)」という言葉で置き換えています。

ブロックチェーンのアプリケーションのレベルで実現されているトークンの時価総額の合計よりも、そのブロックチェーンの維持活動に関わるネイティブトークンの時価総額の方が大きくなるという主張が、常に正しいことを示す理論的な説明は知られていません。その一方で、この主張が正しくない状況では、システムが破綻する可能性があります。つまり、システム自体の存続に影響を及ぼし得るリスクが存在していることが、この論理から逆説的に浮き彫りになっています。

仮に、Ethereumのスマートコントラクトで作られた、あるトークンで莫大な借金を抱えた人がいるとします。その借金の額が、もしEthereumの プルーフ・オブ・ステーク の仕組みで デポジット されているETHの時価総額に匹敵するレベルだとすると、その人はその1/3を超えるETHを借金して買い占めることでEthereumの正常な動作を妨げ、プラットフォームの信用を毀損し、Ethereumを事実上停止に追い込むことができます。そうなれば、 Ethereumに支えられているトークンも破綻し、そのトークンでの借金は無意味になり、ETHを買い足した際に負った負債のみが残ります。このような攻撃に、攻撃者の負債が軽減される経済合理性が生まれてしまいます。
(関連リンク:ブロックチェーンの課題解決になるか - プルーフ・オブ・ステーク編)

今回の例ではETHを取り上げているため、「実際には買えないだろう」と思われた方もいるでしょう。ですが、新しく作られたネイティブトークンでは発行額も限定的であり、買い占めを監視する人の目も少ないため、このようなシステム破綻による被害もあり得ます。

現状、ETHの時価総額はEthereumのスマートコントラクトで作られているトークンの時価総額のおよそ2倍あり、Fat Protocolは成立しています。ですが、過去にはEthereumのスマートコントラクトで作られているトークンの時価総額がETHの時価総額を上回ったことがあります。

さらに最近では、Ethereumと競合するプラットフォームが多数生まれています。様々なトークンがやり取りされるDEX(分散型取引所)のようなアプリケーションでは、ブロックチェーンの乗り換えは簡単には起きないでしょう。しかし、 NFT のマーケットプレイスのように、トークンが作られるプラットフォームを問わないようなマーケットでは、すでにPolygon(ポリゴン)のように手数料がより安いブロックチェーンの方が選ばれる傾向が生まれています。

そのように、手数料が安いプロックチェーンを使う動きが強まれば、ネイティブトークンの価値を引き下げることにつながるでしょう。そうなると、Fat Protocolが成立するかどうかは怪しくなってくるのではないでしょうか。

単なるポジショントークの可能性もある

暗号資産(仮想通貨)のマーケットは「 ポンジスキーム 」のようだと評されることがあります。

暗号資産の価格が上がることにより利益を得る人がいますが、価格が上がるのは買う人がいるからです。つまり、先に暗号資産を買った先行者は、後から多くの人々がその暗号資産を買うことによって利益を得ています。そうなると有効な戦略は、その暗号資産に価値があり、購入に値することを大勢に向けて広告することでしょう。

Fat Protocolは、すでにネイティブトークンを所持している人が、その価値を高めるためにあえて流布している可能性があることも考慮しておくべきでしょう。

次回の第10回は、「Web3にまつわる疑問」の最後「トラストレス」です。トラストレスはWeb3の中心的概念で、今更疑う余地はないと考えられるかもしれませんが、無条件に信じてしまうのはそれこそ「トラスト」を前提にした姿勢です(笑)「Don't trust.Verify.(信じるな。確かめろ)」ということで、ぜひ第10回もご確認ください。


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