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Web3.0/Web3_#6:ギャビン・ウッドが提唱したWeb 3.0とWeb3の基礎知識

ギャビン・ウッドは2014年4月、自身のブログに改めてWeb 3.0と名づけた新しいウェブの構想を投稿しました。現在、注目を浴びているWeb3のベースとなったウッドの考えには何が影響を与えたのでしょうか。また、ウッドの構想するWeb 3.0/Web3はどのようなものでしょうか。今回はそれらをキーワードとともに解説します。


Ethereumの共同創業者ギャビン・ウッド

ギャビン・ウッドは Ethereum (イーサリアム)創始メンバーの一人であり、「Solidity(ソリディティ)」と呼ばれるスマートコントラクトプログラミング言語を含む、Ethereumに関わる多くの技術の初期開発者でもあります。また、2015年にEthereum財団を辞めた後、Polkadot(ポルカドット)およびそれをプロジェクトとして含むWeb3 Foundation(Web3財団)を共同創設しています。ここでのWeb3はWeb 3.0の略称でしょう。

Polkadotは、異なるブロックチェーンが相互運用できる分散型Webの実現を目指したブロックチェーンのプロジェクトです。これにより、Ethereumにあった スケーラビリティ 問題を払拭でき、また、より簡単に新たなブロックチェーンやその応用を開発できるようになったとされています。

スノーデン事件が影響を与える

そんなギャビン・ウッドが彼のWeb 3.0を構想するきっかけの一つとなったのは、2013年の「スノーデン事件」です。

スノーデン事件とは、国家安全保障局(NSA)や中央情報局(CIA)の仕事の経験があったエドワード・スノーデンによる内部告発事件です。この告発の内容は、アメリカ政府による大規模な市民監視の実態を暴露したものでした。

その事件の後の2014年4月17日に、ウッドは自身のブログに彼が改めてWeb 3.0と呼ぶ構想についての記事を投稿しました。

投稿の中でウッドは、政府だけでなく、あらゆる組織や企業も信頼できないため、誰かに自分の情報やデータを委ねるというモデルは破綻していると主張します。その上で、現在のウェブを再設計する必要があると説き、Web 3.0を「ポスト・スノーデン・ウェブ」として位置付けました。

ポスト・スノーデン・ウェブ、Web 3.0はどのように設計されるべきか

ウッドが構想するWeb 3.0は、既存の技術を再設計することで、ウェブ上におけるコミュニケーションモデルを変革しようとしています。

まず、情報の扱い方については、公開されたとする情報は書き換えられない形で公開し、秘匿する情報は公開せず、合意したとされる情報は合意台帳に記録するとします。次に、コミュニケーションは暗号化されたチャンネル上で、仮名(かめい)にて行われることが前提だとしています。

政府や企業などいかなる組織も信頼できないからこそ、「事前にユーザーが合意したと見なせること」を自動的に処理するシステムを開発する必要があるとしています。

このようにウッドのWeb 3.0が目指すのは、ユーザーのやり取りが仮名で安全に、そしてどこにも「信頼を置かず(トラストレス)」に行われることです。

ウッドのWeb 3.0で必要な四つの要素

さらにウッドは、Web 3.0を構成するには次の四つ要素が必要だと説きます。

1)static content publication(改ざんできない情報公開システム)
改ざんが容易ではなく、公開された情報が「改ざんされていない」と見なせるシステムのことです。

2)dynamic message(仮名を用いたメッセージングシステム)
個人が安全かつ非公開にメッセージを送ることができ、なおかつ決められた受信者しかそのメッセージを開けないようなシステムを指します。

3)consensus engine(コンセンサス・エンジン)
決定したルールが確実に実行される前提のもとで、そのルールに合意する手段のことです。情報の公開や変更に使用されます。

4)integrated user-interface(これら三つの要素を統合するブラウザとユーザーインターフェイス)
上記三つのシステムをウェブブラウザでからでも利用を可能にすることを意味します。

これら四つがWeb 3.0を構成する要素であるとウッドは語っています。もっともこれらの構成について、実際に満足できる水準で実現する技術が開発できているかどうかには議論があります。

おそらくウッドは、当時関わっていたEthereumを周辺システムで補強していくことを念頭に、これらの要素を抽出しています。また、4)を実現するために、Ethereumをウェブアプリケーションから使えるようにするためのパーツが後に開発されています。そうしたパーツには「web3.js(Javascript(ジャバスクリプト)言語用)」や「web3.py(Python(パイソン)言語用)」といった名前が付けられています。

次回第7回は、Web3に残る問題点について解説させていただきます。


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