ふりかえりのゲームをつくったことをふりかえる(ふりかえり Advent Calendar 2023|4日目)
RayArc(レイアーク)、ならびにRayArc Astrolabe(アストロラーベ)の皆さま、そしてすべての皆さま。おつかれさまです。新規事業ユニットです!
たんなる「反省会」は、もうイヤだ!!!
苦い思い出があります。そのお話をします。
0.すべては過去
それはもはや、歴史と言ってもよいほどの過去のことです。HogeFuga村には、ふりかえりを知らない、見たことも聞いたこともない人々がおりました。
生きているとなんだか、うまくいかないことがある。
けど、人生なんてそういうものだし。
「まじめ」に「反省」もしているけれど、どうにも前に進んでいる気がしないなぁ…。
モヤモヤしながら、どうしてよいかわからずに暮らしていました。
1.HogeFuga村とpiyoとKPT
さて、ここにふりかえり修行中の旅人piyoがおりました。
ご縁があってHogeFuga村に一宿一飯の御恩ができまして、なにかできることがあれば…と素直に考えたpiyoですが、なにせふりかえりは修行中の身です。知見も、なにより経験がまったく足りておりません。
それでも。なにか、できることをやってみて、前に進むきっかけをつくらなければ何も始まらないじゃないか!
そうだ、ありきたりだけど、KPTしてみよう!
たとえ多少の失敗をしても、不完全でもいい。まず体験してもらうことが大切だとpiyoは考えたのです。それは、必ずしも間違っていなかったのかもしれません。しかし…。結果としてpiyoは、起こりがちな一つの過ちにHogeFuga村を導いてしまいました。
2.ふりかえりの産声
最初は、それなりによかったのです。piyoはファシリテーターとして関わりました。KPTにはどのように取り組むとよいか、適宜声かけをしながら、未熟なりに必死に、そして丁寧にKPTを取り入れました。
HogeFuga村の人々も、
なんとなく、これまでの「カイギ」とは違うムードになっている…?
と、手ごたえを感じたのでしょう。
これはよい。「KPT」か、名前は聞いたことあったけど。
なるほど、こんな風に活発に声が上がるものなのか。
もうちょっと、やってみようじゃないか。
それからHogeFuga村では、それなりに活発に「KPT」というコトバが飛び交うようになったのでした。けれど…。
3.それから数年後
piyoは再び訪れたHogeFuga村で、すっかり形骸化し、あるいは間違って使われ始めたKPTの姿を目の当たりにしました。
まるでたんなる「反省会」です。
フラットとは真逆の、非対称なチカラの流れ
「善かれと思って」の「誘導」
「カイゼンしたい」思いからの「詰め」
冷たいKPTもどきがそこにはありました。
わかっていた…この可能性があることは…。
型から入る体験で、まず価値を知る、動機づける必要はあったかもしれない。しかし、当然独り歩きのリスクもあったんだ…。
piyoは己を責め、そしていくらかは、やるせなさにも打ちのめされました。
しかし、それにしたって。
どこかで村の中から「気づき」が生まれて、よりほんとうのKPTになる道だって、あったのかもしれないのに…。
忸怩たる思いの中で、一筋の光明のような「気づき」も得ます。
こんな形になるなら、KPTというフレームを伝えない方がまだ健全だったのかもしれない…?
いや違う、むしろKPTが課題の本質をある意味で浮き彫りにしたのかも…。
piyoは、かつてこの村を訪れたときよりは知見も経験も得ていました。なにが起きてしまったかは、それなりに言語化できました。しかし、わかるようになったからこそ、今すぐ自分のチカラではどうすることもできないことも瞬時に悟ったのでした。
4.piyoのケツイ
このままでは、ダメだ。せめて次にHogeFuga村のような人たちに出会ったとき、どうすればよいのか…?
まずそれを自分自身がふりかえり続けなければ。
そして行動変容しなくては…。
piyoは、夜明け前にHogeFuga村を静かに立ち去り、更なる修行に旅立ったのでした。少しでもほんとうのふりかえり力を身に着けるために…。
5.呪いへの咆哮
しかし。どれほど旅を続けても。
やはりHogeFuga村はどこにでもあるし、HogeFuga村の村人のような人々に、形を変えて出会うのです。
ああ、ふりかえりの現場には、そもそもなにかの呪いがかかっている(ことがある)のかもしれない。
昔よりは多少はましになったかもしれないが、それでもどこまでも未熟なpiyoは、ふとその途方もなさに悲鳴を上げたくなるのでした。
…そう…。
「真面目」の副作用
ふりかえりを、とくにKPTを「善かれと思って」「反省会」にしてしまう傾向のある、(その場の役割としては)「ファシリテーター」さんには、観察していると一定の傾向があります。
もちろん、断言するには母数が圧倒的に足りませんので、有意差が…エビデンスが…みたいな次元の確実さでお伝えするものではありません。しかし、観察法というものもございますからね。
極力手法的に、主観・バイアスを載せないよう、あえて機械的に、かつ、ていねいに観察すれば、そこから見えてくるものに真理の片鱗が覗いたとしても、なにもおかしなことはありません。
「真面目」と言っても、コトバは複合的なものですから、もう少しここでのニュアンスを整理しましょう。
ある一つの事象はわけようと思えば「よい」「わるい」にわけることができると考えている
ただひとつの(あるいはほぼただひとつの)「よい」「正しい」こと選んで行わなければならないと考えている
理想をその内心に描き、より善い(=ヒトとしてましな、真っ当な)生き方をしたい、と願うのは、ヒトのごく自然なココロのありようです。それこそギリシア哲学の時代、むしろもっと前から変わらないでしょう。
一定の「真面目」自体は、そもそも必要なものです。もしかしたら「真摯さ」「生きることへの礼儀正しさ」と言い換えたほうがよいかもしれません。ですけれども、その理想があまりに暴走するとき、持つべき自然のやわらかさが損なわれてしまうことあがります。
結果、Pがトンデモ・詰め詰めタイムになったり。
と、(無意識に)検閲、編集されたナニカがアウトプットとしてできあがり、はた目には『やったテイ』になるようなことが繰り返されます。
そもそも、習熟した人々ですら、KPT一辺倒では限界があるというのに…。
「真面目」の副作用があまりに強いとき、そもそも、はなっから本来のKPTにすらならないのです。これは…コマッタ。
なにより、当事者ご本人が「真面目」なだけに、とても真正面からは壊しづらい…というか、うかつに壊したら別の(生々しい)意味で壊れてしまう…。創造のための破壊ではなくて、ただのジェノサイドになってしまう…。
そうだ、ボドゲにしよう
私たち株式会社RayArc・新規事業ユニットでは、新規事業…のタネを模索する活動の一環で、2022年秋からボードゲーム開発に挑戦しています。
自由な切り口で、システム開発の現場をよりよいものにするボードゲームを模索しております。第一弾としてアイスブレイクのカードゲームを開発、販売しました。
フカボリ「ふりかえり」ゲーム「問い・解い・トイ」
こうして、第二弾ボドゲは、
となりました!
詳しいあそびかたは、こちらのマガジンをどうぞ。
ソロとチームのふりかえりに向き合う
「問い・解い・トイ」には、
3~6人用の「チームふりかえりルール」
1~2人用の「ソロ・1on1ルール」
があります。
静のソロプレイ、健全な対峙の1on1、そして動と熱量のチームふりかえり、活用場面によってガラッと違う体験になります。
なぜ(とくに)ソロプレイも(基本ルールで明示的に)可としたか? それは、ふりかえりのファシリテーションに苦手意識を持ち、まさに「反省会」に変えてしまう方を観察すると、
のかも…と気づいたからです。
チームにふりかえりを取り入れるむずかしさは、そもそも複合的です。
チームであることのむずかしさ
ふりかえりそのものの(「反省会」とは異なる)マインドを体得するむずかしさ
が、混然となって襲い掛かってきます。
というとき、どちらで躓いているのかを、よく見極める必要があります。
たいていは両方にそれなりに課題があるものですが(それほどチームふりかえりは永遠にむずかしい)、そうだとしてもいちどに両方取り組むのはさらなる混乱や自信喪失の元です。むずかしいことはわけて取り組みたいですね。
このうちチームであることのむずかしさは、より一筋縄では行きません。相手のあることですから、どこでも通用する必勝パターンもありません。ただただ、その場限りの出来事を観察して、取り組むしかない。
しかし、ふりかえりそのものの(「反省会」とは異なる)マインドの体得は、ソロでのふりかえり(リフレクション)を通じても、ある程度は可能です。
ですから。「問い・解い・トイ」にはソロプレイ用のルールがあります。純粋に自身の内省ツールとして活用してもよいですが、それだけではありません。チームファシリテーションの前段として、まず自身にふりかえりマインドをインストールするために利用できます。
つくってみてのふりかえり
内省ツールとしてのスルメ感
内省ツールとしては、完全にある意味(販売するというメイン)目的を見失ってヘビロテしている。
自分たちでつくったからハマりやすいといえば、そうかもしれないがちょっと予想外というか予想以上に活用している。
あ、これジワジワ系としても、よいゲームだな、と。
コミュニケーションツールとしての笑顔攻撃力
社内外の試遊会で、色々な遊び方を目の当たりにしました。かしこまったふりかえりだけでなく、たとえば、
久しぶりに会う仲間との近況アイスブレイクツール
としても、よりカジュアルにも活用できるとわかったり。人の数だけ可能性が広がります。
共通してみられるのは、
普通だったらちょっとききにくい質問
を「カードを開いたり、投げつける所作のどさくさ」で笑顔でぶつける瞬間が、お互いに一番楽しそうになる様子です。
という感想もいただけて、それは素直にうれしいなと感じました。
助けてはくれるが、ファシリテーターの度量には結構依存する
これは一部のフィードバックでも実際に挙がってきましたし、私自身が活用している場をいくつか観察していて感じたことです。
というコトバから、
たとえば、右も左もわからないのにいきなり上司から、先輩から、ある日「ふりかえり」をやれって言われた。
あるいは「ふりかえり」というコトバこそ使わないがそれに類することを言われた、そしてボクは、ワタシは途方に暮れた。
そんな「迷い後のようなボクを、ワタシを助けてくれるゲーム」?
など、期待していた人の場合、多少受け止め方にはギャップが出やすく…。
たしかに無手(装備:なし)よりは、ある程度の手ごたえは感じる。
が、意外とむずしかった、結局悩んでしまった。
悪くないんだけど、もっと、やさしく、ゲームが全自動でファシリしてくれるとか…とかさぁ…。
という反応が返ってきたケースも…ありました。
しかし。これについては。例えば今後、別の作品として、もう少し違うもの、色々なグラデーションの別のゲームを開発するなどは考えるとしても。
今回、まずつくりたかったものは、それでよい。それでよいのです。
最後に…
2024年4月最新情報を追記!
つくってよかったな、と率直に思っています。でも、あくまでもゲームは脇役であり、道具であり、活用される場の人々がそれぞれの主人公です。
できるだけ、色々な場所で支えられるようにと、やっとBOOTHでの取り扱いを始めました!
ゲームマーケット2024春にも持っていく予定です!
開催日時:2024年4月27日(土) 、28日(日)
開催場所:東京ビッグサイト 東展示棟1,2,3ホール
ブースは【A08】です、参加される方はぜひチェックを!
記事公開時の記載はここから
こちらの「ふりかえり」ゲームを色々な現場であそんでいただくために! ゲームマーケット2023秋【両-コ06】で出展します。
開催日時:12月9日(土)、10日(日)
開催場所:東京ビッグサイト 西展示棟1,2ホール
当日の取り置き予約も、あとおよそ2日ちょっと、受け付けております!(12月6日(水)23:59までの予定です、予約状況により早まることもあります)
ゲムマに先立ち、大規模ゲムマ前試遊オンリーボードゲーム会「フォアシュピール2023秋」でも体験いただきました!
多くの方に遊んでいただくことで、たくさんの可能性に出会うのが今からとても楽しみです。
(新規事業ユニット・ワクワク魔人S)
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