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リアルタイム会議 メタバースの勃興 (その3) ~新しいエンターテイメントとしてのスポーツ観戦~

4月末に全世界をズームで結んで行われた「リアルタイム会議 2021年春」。今年はメタバースに使われる技術を広く紹介することが主な目的でした。前回のnoteでは、ファッションをどのようにヴァーチャル・スペースで展開するかに注目。今後益々広がりを見せるサブジェクトであり、ご好評をいただいております。

リアルタイム会議のダイジェスト3回目はこれも近年注目されてきた新しいスポーツ観戦の方法として、ヴァーチャル・リアリティ(VR)やアーギュメンティッド・リアリティ技術(AR)を中心にした発表を取り上げます。

VR技術の応用事例

まずUKの会社Rewind WEAVR(ウィー・アー・ヴイ・アール)のCEOであるJames Dean氏による「ライブ・エンターテイメントでファンの体験に革命を起こして新しい方法でマネタイズを行う」と題された講演から。

「パンデミックにより技術を機能させる必要性が高まったが、我々の住んでいる世界はすでに変化し始めている」という発言から始まりました。「観客は現実世界を超えるような経験を望み、新しい方法でインスパイアされ、繋がりを感じ、より没頭できるような新しいプラットフォームに向かっている。記憶に残り共有出来るような経験が欲しいのだ。」

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ここで具体的な数字として「eスポーツはスポーツ業界の中でも急速に観客を増やしているにもかかわらず、従来スポーツ産業では一人あたり$50をメネタイズできているのに比べて、eスポーツは現在7ドルにとどまっている」ことを挙げています。

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WEAVR社によると、eスポーツには5つの大きな国際トーナメントを観戦するファンが180万人いると発表しています。

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WEAVR社の独自のアプローチとして、ファンに対して以下のような循環作用が起こることを期待しています。すなわち:
・ゲームのようなインタラクティブな経験
・革新的なマネタイズ手法
・リアルタイム観客が試合への深い理解を得られる
・観客の個別の要望に応えるためのハイパー・パーソナライゼーション

AR技術の応用事例

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ノルウェーのソフトウェア開発会社 The Future Group ASの提供するソリューションである Pixotope を使って「スポーツ放送をAR技術を用いて拡張する」をテーマにした発表が、同社CCOのØystein Larsen氏によって行われました。

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日本でもおなじみのストリート・ファイターや、DCコミックスのキャラクターを使ったゲームの対戦中に、実際のゲームのキャラクターがスタジオに現れる演出がおこなわれています。

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同様に、既に3Dグラフィックスの技術を用いて作成されたゲームのキャラクター達は、デジタルで当然のごとくシームレスに現実の世界に統合されています。スコア表示にも工夫を凝らし、ゲーム観戦がよりエキサイティングになりますね。

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スポーツ界の天王山とも言えそうなスーパーボウルも近年ではAR技術による演出が用いられるようになりました。

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スポーツ中継における活用事例は今後も益々増加すると予想します。現在行われているNBAのプレイオフでも、子供向けの実況チャンネルでAR技術が利用されていました。

より高速で複雑な画像処理を目指して

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もちろん、実際の映像の上にコンピュータによってつくられた映像を重ねるだけが、新しい観戦方法ではありません。インテル社のTRUE VIEWソリューションの詳細な発表が、同社のShaun Carriga氏によって行われました。

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まずこのソリューションによって「スポーツのある瞬間(単一フレーム)を様々な角度から見られるようにするのは過去の技術。一人の選手の動き(複数フレーム)を複数のカメラ視点から再現出来るのが新しい技術である」というお話から。

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TRUE VIEWでは、アリーナに多数のカメラを配置。各カメラの録画から複数フレームを高速に作成するために、選手を立体的なボリュームとして抽出します。
・一つのカメラから85ギガバイトのデータを作成。
・15-30秒の動画ごとに1テラバイトのデータを使用。
・ボリュームを一つをつくるのに、200テラバイトの画像データを使用。

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抽出されたボリュームにより複数のフレームに渡って選手の動きを追跡するような映像を作り出すこと出来ます。またあたかも選手の視点から見たカメラ映像も作成出来るそうです。

TRUE VIEWの発表で特に印象的だったのが、このように作られた映像は「観客が自分でカメラを動かして好きな角度から選手の動きを追跡することが可能になった」という点です。「観客は単なるメディアの消費者では、コンテンツの作成者にもなっている」という氏の言葉は、単なる「新しい映像」ではなく「新しいサービス」が生まれていることを示すものでした。
なおこの技術は東京オリンピックのバスケットボールの試合観戦にも応用される予定とのことです。楽しみですね。(リアルタイム会議の話題はつづく、かもしれません。)

※ (修正 6月19日) スーパーボウル関連の文章を修正し、NBA中継の写真と文章を追加しました。’

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