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vol.538「もし繁忙期に部下が有休を申請してきたら」


管理職の悩み

最近、離職防止をテーマにした管理職研修の依頼が増えています。最近私は「Z世代はなぜやめる?Z世代の生かし方、育て方」というタイトル講演をさせていただく機会が多いのですが各社共通の悩みのようです。

そこで管理職の皆さんに、「どんな時に若手社員どの間でコミュニケーション・ギャップを感じますか?」と尋ねます。すると最もよく出る意見の一つに「有休を取るときに周囲に配慮しない」があります。

特に繁忙期で、みんなが忙しくしている時に「休みたい」と平気で休みたいと言ってくるのが考えられない…といいます。確かに管理職としては「おいおい、その日いないのは困るよ。少しは他のメンバーことも考えろよ」と、言いたくなります。が、そんな本音を表に出して、「だったら会社を辞めます」と言われても困ります。渋々ハンコを押すわけですが、「なんとかならないか…」と思うわけです。

上手な対応策

ではどうしたらいいのでしょう。そこで以下のような質問をします。「ではその日、あなたがいなくても周囲の人が困らないようにするにはどうしたらいいと思う?」そうすれば「○○の業務だけはその日までにやっておきます」「○○の業務は、△△さんでもわかるようにしておきます」などの回答が得られるでしょう。休んでも大丈夫な方法を、本人に考えてもらうのです。

申請して休むことは、社員としての権利です。が、権利だからといって闇雲に行使して良いわけではありません。権利を行使してもよい環境をつくるのは休む者の務めであると気づいてもらうのです。一度気づくと、次からはごく自然とそういう配慮をするようになるでしょう。

モチベーション向上と良い職場風土形成のきっかけ

さて、問題はその後です。休んだ人が、休んだ翌日、周囲の人にしっかり感謝を伝えているかどうか。そして、休んだことでリフレッシュして一層モチベーション高く仕事に取り組んでいるかどうか。注目してみてみましょう。

「日本で一番大切にしたい会社大賞」の受賞企業である大阪の天彦産業という鉄鋼商社では、入学式、卒業式、参観日など子供の行事の日は全て休むように義務付けています。同社の樋口会長曰く「そのような日に無理に会社で働いてもらっても家族のことが気になって生産性が落ちるだけです。逆に休むと、次の日に非常にモチベーション高く出社し、普段の150%の仕事をしてくれます。休暇は自分にも会社にも良い結果をもたらすのです」

休みを取ってリフレッシュし、生き生きとしている人を見ると周囲の人も「休んでもらって良かった」と感じます。さらに休んだ人は周囲の人に「今度、あなたが休むときは私が協力するから遠慮なく言ってね」と約束します。「お互い様」の精神の発揮です。すると、職場の雰囲気が良くなります。

お互い様の精神が多能工化と技能伝承を促進

休みたいときに休めるだけでなく、ごく自然に多能工化が進みます。多能工化は、お互い様の精神の産物なのです。逆にこの仕事は自分の仕事、この仕事はあの人の仕事、というように縦割り的に発想したら、多能工化は進みません。こうした職場では何時まで経っても休みが取り辛く、技能伝承もなかなか進展しません。どこまで「お互い様」を考える風土になっているかが多能工化や技能伝承の実現に大きく影響するのです。

優れた企業の事例

また、学生が就職時にする質問に、「貴社は休みたいときに休めますか?」があります。これに対し、同じく「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞した宮田運輸の宮田社長は、次のように応えています。

「それはあなた次第です。あなたが周囲の人と良い人間関係を築いておけば周囲の人が気持ちよく『その日の分はやっておくからいいよ』というでしょう。でもその逆だと、周囲の人から『それは困ります』と言われるでしょう。ですから、わが社には、休みが取りやすいとか、そういうルールはありません」。

宮田運輸はトラックに子供たちが描いた絵をプリントすることで、運転手も、そのトラックを見かけたドライバーも優しい気持ちになり、スピードの出し過ぎなど事故の発生予防に務めている会社です。そうした人を思いやる風土が休みの取り方にも現れていますね。天彦産業も宮田運輸も中小企業でありながら入社希望者が殺到する人気企業ですが、人は、制度ではなく風土に惹かれるのです。

また、私のクライアントの社長は、先日、Z世代の若手社員とこんな雑談をしていました。その若手社員は鉄道マニア(乗り鉄)で、有休を利用して遠方のローカル線に乗りに行ってきました。「ローカル線に乗って写真を撮ってくる」は私にはなんとも理解しがたい趣味なのですが、社長は彼に次のように声をかけました。「おい、君の撮った写真を俺に見せてくれよ」
社員の趣味に興味を持ち、それを共有しようとする素晴らしい姿勢だと思いました。

まとめ

有給休暇の取得をきっかけに、部下はより一層元気に働いてくれる、お互い様の精神が職場に根付く。上司と部下はさらに親しくなれる。こんないいことはないですね。有休を申請された上司は、イラっとする気持ちを横に置きましょう。そして、休みを取ることはお互い様の風土を社内に根付かせていく最初の一歩だと考えて行動しましょう。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

  • 繁忙期に休暇が重なれば、業務に支障が出るリスクはありませんか?

  • 部署間によって有給取得のしやすさに温度差がでると、トラブルにならないでしょうか?

  • 職場の雰囲気が緩んで生産性が落ちるリスクはないでしょうか?

  • 管理職への教育や意識改革はどのように行えば良いでしょうか?


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