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消費者の本能を理解せよ!~マズローの欲求5段解説~


はじめに


商売の肝は「消費者理解」です。なぜならば購買の意思決定を行うのは常に消費者だからです。そして人間の欲求は幅広く、低価格から高価格。身体的に不足している欲求から、心理的に満たされない欲求もあります。

その心理=製品・サービスを求める「欲求」の源泉は何かを考える分析フレームワークとして「マズローの欲求5段階説」というものがあります。
5段階説については詳しくは後述しますが、重要なことは「消費者本能」を理解しようと努めることです。なぜなら本能には誰も抗えないからです。

なおエピソードとして、最強マーケターの森岡毅氏は、モンスターハンターのUSJ大規模イベント導入にあたってモンスターハンターを400時間以上やり込んだそうです。これもファンと同じ目線となり何を求めているのかを理解するためです。

また、ネスタリゾート神戸の再生プロジェクトの際には、人が大自然を求める理由を本能レベルで解明すべく、欲求が顕著に表れる猟師の輪に入り狩猟免許まで取得しました。
これは「山に、どうやって人を呼ぼうか」という課題に対して、「人はなぜアウトドアに行くのか」を知らなければならないと考えたからの行動です。

つまり、本能にぶっ刺すための製品やコミュニケーション提供のために、徹底的に消費者の本能を理解する。ことが重要であるということです。

あくまで、「消費者が心の奥底で何を考えているのか、求めているのか」ということを理解する一つの手段として、ご覧ください。

「マズローの欲求5段階説」とは

ニューヨーク生まれの心理学者「アブラハム・マズロー」(1908~1970)が「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、”人間の欲求”を5段階に理論化したもの。

*人間には5段階の「欲求」がある中で、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動が表されています

第一階層「生理的(本能的)欲求」

生きるための本能的な欲求のこと
「お腹が空いたので食べたい」「喉乾いたので水を飲みたい」「眠たいので寝たい」など、人間はまず何よりこの欲求を満たしたいと考えます。
(一般的に人間の「三大欲求」と言われている「食欲・性欲・睡眠欲」というところにも該当するところです)

まずは生きるために必要な最低限のこの欲求が満たされて初めて、次の階層「安全欲求」を求めるようになります。これはどういうことかというと、

(例)
①炎天下の中、2時間スポーツをして喉がカラカラになっていたとしましょう。そんな時に周りに憧れられる時計や車のことは考えないはずです。まずは喉に潤いをもたらす「水」「爽快な炭酸ジュース」などを本能的に求めるはずです。

②ホームレスの方は、お洒落な服や住まい以上に生命を維持するための「食べ物や飲み物」をまずは求めるはずです。(表現はご容赦ください)

③風邪の苦痛を取り除く、医薬品など
 ※ここでは効果・効能=効き目が重視されます

このように、人間の欲求は生理的(本能的)な欲求からスタートすることをまずはご理解ください。特に食品や飲料メーカーの方などはこの欲求が強く求められる商材です。この「本能的な欲求が顕在化するシチュエーションやオケージョンに着目」してみると良いでしょう。(例:スポーツ施設の自動販売機で販売するドリンク)

第二階層「安全欲求」

「安心・安全な暮らしがしたい」「危機を回避したい」という欲求のこと
「最低限の暮らしを確保したい」という欲求だと考えるとわかりやすいかもしれません。生理的欲求に次いで強力な欲求であり、場合によってはそれすらも上回る影響力を持ちます。これも生きるために、あくまで「最低限必要なもの」という視点が強い欲求です。

・この第二階層の「安全欲求」が満たされると、次の階層「社会的欲求」を求めるようになります。生理的欲求が満たされた場合、生活するにあたり「心身ともに最低限が保証された暮らし」をしたいという欲求が生まれるのは自然なことです。

・病気や怪我を防ぐ「健康」、雨風をしのぎ安全に住める場所を確保する「住まい」、「経済的安定」など、「安心・安全な暮らしを守る」ために欠かせないものが当てはまります。特に保険や健康食品などは、生活や将来にたいして「不安感」を煽ったり、あえて見せることで、この欲求を刺激することが多いです。特に人間は失うことを怖がる生き物です。「損失回避」「不」の解決という視点は必要な観点でしょう。

(例)医療、健康食品、不動産、保険、金融商材、警備事業 など

第三階層「社会的欲求(帰属欲求)」

集団に属したり、仲間が欲しくなったりする欲求のこと
人間は、生存や安全が確保されると一人では寂しくなるわけです。
この欲求が満たされないと、人は「孤独感」や「社会的不安」を感じます。

例えば、「婚活サービス」「老人ホーム」「趣味のスクール」などは、集団に属したい、仲間や恋人が欲しいという欲求と強く結びつくサービスです。地方や田舎で一人で住んでいるおばあちゃんが、電球の交換などを身近な生活を依頼する「なんでも屋」というサービスを依頼するのは、実は「寂しいから、世間話を楽しむ相手が欲しい」というニーズも含まれていたりするわけです。

ここまでの欲求は「外的」に満たされたいという思いから出てくる欲求(低次の欲求)となります。「必要最低限、必要十分満たされるべき欲求」というニュアンスが強い分、差別化が難しい欲求ともいえます。

第四階層「尊厳欲求(承認欲求)」

「他者から認められたい」「尊敬されたい」という欲求のこと
自分にとって必要なものが最低限満たされてくれば当然芽生える欲求です。この第4階層以降は「内的」な心を満たしたいという欲求(高次の欲求)に変わります

・「褒められたい」「必要とされたい」「好かれたい」「すごいと思われたい」などという心理は、強い行動動機や購買動機になります。
移動するだけなら軽自動車でも良いわけですが、レクサスの車をあえて買う理由は機能的なメリット以上に、それを所有することで「カッコいい自分」「すごいと思ってもらえる」という心理的な欲求が満たされるからです。

実は「ルイ・ヴィトン」のボリューム購買層は背伸びしてブランド品を買う中間所得者層であったりしますし、行列のできるパンケーキ屋にあえていくのは、本質的にはインスタ映えの写真を撮って「いいね」をもらうことで承認欲求を満たすためです。

(例)
高級車、高級時計、住宅、美容、結婚 など

◆成熟市場かつ、コモディティ(商品の機能差が感じられにくい)な現代からこそ心理的欲求が鍵になる!

「他社に承認されたい、良い目で見られたい!」という高次な欲求であるため、その商品を買うことで叶う「明るい未来やストーリー」を見せ|ことが重要です。あなたの扱う商品やサービスが、どのような「気持ち」を満たしてくれるのかを考えることが大事です。不とそれを解消する製品・サービス便益は常にセットなのです。

・またこの欲求には、効果や品質といった機能性の下支えがあることはもちろんですが、それ以上に「文脈」「ブランド」「情緒をくすぐるデザイン」などで差をつけることがポイントです。モノに、ストーリーや意味が付与されることで「価値」を生み出すことができるのです。

フェラーリより燃費の良い車はあまたあるかもしれませんが、それを持つ所有する「意味」が大きいわけです。
※基本的には「嗜好性が高い」「高価格」ほどエンゲージメントが高くなります。つまり熱狂度、ファン度が高くなります

第五階層「自己実現欲求」

■この階層では、「自分の活動」や「成長に強い関心」を持つようになります。主体的に自分の夢や目標に向けて邁進します。
心理的な欲求としても「より自分と向き合い、自分を高めたい」という心理欲求が強くなっていきます。これも、今までの階層の欲求が満たされたからこそ生まれる欲求です。

(例)
・夢の実現のために海外に移住したい
・起業や自分磨きに必要な費用を稼ぎたい
・英会話などの語学スキルを身に着けたい
・自分の才能や趣味を活かした仕事をしたい
・自分の価値観や信念に基づいて行動したい

五段階欲求を読み解くポイント


(1)「物質的欲求」か「精神的(に満たされたい)欲求か」

・第一階層の「生理的欲求」と第二階層の「安全の欲求」は人として生きるために必須の欲求であるため「物質的欲求」です。

一方、「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の3つは生命維持に必要ではありませんが、「心の満足度」にかかわる欲求であることから精神的欲求に分類されます。

(2)「外的」か「内的」(に満たされたい)か
・「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」の3つは、「自分の外側にある外部環境を満たしたい、満たされたいという」欲求で外的欲求です。

一方、「承認欲求」「自己実現欲求」に関しては自分の内面を満たしたいという欲求になることから、内的欲求に区分されます。

(3)欠乏か成長か
・「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」は、自分に不足しているものを満たしたいという欲求なので、欠乏欲求です。

一方、「自己実現欲求」については全ての欠乏が満たされた状態で自分を高めたいという欲求で「成長欲求」に区分されます。 

あなたの扱うサービスに活かしてみよう!

例えば、住宅メーカーなら、
①「雨風をしのげる家が欲しい」②「安全に暮らせる家が欲しい」
③「平均的な家に住みたい」④「みんなにすごいといわれる家に住みたい」
⑤「自分らしい暮らしが実現できる家に住みたい」とマズローの欲求5段階説に合わせてターゲットやサービス展開に反映できます。

このように顧客のニーズをマズローの欲求5段階説の最下層から当てはめて分析することで、自社のビジネスの中で顧客のニーズを満たせていない部分、足りない事業が明らかになるでしょう。


まとめ
当たり前のことですが「欲」があるからこそ、人はモノを買います。
「欲」こそが、消費者の購買のエネルギーとなるのです。さらにそれが潜在的で自分が気づいていないものが掘り起こされたときほど強烈に欲しくなるのです。(株)刀の森岡氏はこれを「インサイトを衝くと」表現されています。

その「本能」を紐解き、そこを適切な方法で衝くことがビジネスを加速させる要因となります。冒頭に申し上げた通り消費者理解はマーケティングの肝ですので、どんどん追及していきましょう!


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