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天才の条件とは何か?(前編)

天才とは何だろうか?

人類の歴史上、”天才”と呼ばれて名高い人物が数多く存在してきた。近年の人物でその一例を挙げるとするなら、スティーブ・ジョブズ、イチロー、アインシュタイン、羽生善治といった名前がすぐに思いつく。彼らは、私がどんなに努力しても到底不可能であろう業績を残し、世界中から畏敬の対象とされているが、凡人である私は、そんな彼らの足元に及ぶ人間では決してないとわかりつつも、心のどこかでその境地に至る夢を見る。
しかし、冷静になって考えると、彼らもまた私と同じ人間であり、生まれたときは誰しもが右も左もわからない嬰児であったはずである。では、天才を天才と特徴づける決定的な要素は何なのか、私は彼らの何を”天才”と呼ぶのだろうか。今回、私はふと心の内から芽生えた疑問の赴くままに、天才の本質を思索していきたいと思う。

まず始めに、天才を辞書で調べると「生まれつき備わっている、きわめてすぐれた才能。また、その持ち主」と書かれている(大辞林)。この定義に異論のある者はいないだろうが、時として天才には、英才教育や自身が身を置く環境といった外的要因に大きく影響を受けた結果、天才と呼ばれるようになった者もいる。仮にこの事実を踏まえるなら、天才とは先天的才能に恵まれたものではなく、他の者と比べ極めて突出した才を持つ者を指す言葉であるようにも思える。しかしそうすると、辞書に書かれた「生まれつき備わった才能」を指し示すワードが抜け落ちてしまう。
よってここでは、両者を満たす条件として「当人の置かれた環境下にもかかわらず、周り全体が全く予測できないほど驚くべき能力を発揮する者」を天才の第一条件とする。

天才の第一条件:英才教育や身を置く環境など、外的な要因のみでは予想しえない顕著な能力を有する者

次は、辞書の定義と少し離れ、努力と天才の相関性について考えてみたい。
努力を辞書で調べると、心をこめてことにあたること、と書かれている(大辞林)。これをもっと分かりやすい表現に言い換えるなら、目標達成における過程で生じる困難を乗り越える為に努め励むこと、ということになるだろう。そして、この努力するという「行為」自体は、凡人も天才も等しく行えるプロセスであり、そこに才能による乖離は発生しない。その為、努力は才能と別物として考えた方が良さそうに思えるが、そうすると、1つだけ要を得ることができない疑問が生じることになる。

それは、ある努力家が天才と呼ばれる者の才能を超えるほどの努力をした場合、必然的にその努力家の能力値が天才を上回ることになり、“努力”が生まれつきの”能力”を超える要素にすらなり得てしまう、という点である。そのように考えると、努力できる力もやはり才能の一部として認めなければならなくなるが、そうすると、前者で述べた論法(「“努力する”という”行為”は天才と凡人で共通である為、努力は才能と別物として考えなければならない」)が通用しなくなる。

そこで私は、今回この矛盾を解消する為、努力という行為に「狂気」という要素を付け加え再考してみることを提案してみたい。

狂気とは、文字通り「気が狂った精神状態」を意味する言葉であり、そのイメージはあまりに努力とかけ離れ、一見何の脈絡がないように見えよう。しかし、この言葉を逆の意味で捉えるなら、狂気は常人からみて到底理解不能な特殊性を身につけているからこそ、狂人としてみられるわけである。これを努力に付随する原動力として考えれば、狂気を心の内に宿すことが出来る者は、目標に向かって常人離れした努力ができるという解釈が可能となる。
よってここでは、努力の中に狂気を宿した者を天才の第二条件に該当させる事にする。

天才の第二条件:努力の中に狂気を宿した者

そして最後は、“才能ある者”が世間一般に“天才”として認知される過程に焦点を当てた視点、すなわちどれだけ社会に大きなインパクトを与えたか、という業績を天才の第三条件にしたいと思う。しかし、偏に業績といっても、例えばスポーツ界であれば肉体の限界突破を意味する新記録の樹立、科学界であれば本質への扉を開いた証明としてのノーベル賞の受賞、そして産業界であれば生活スタイルを根本から変える発明など、各分野での素晴らしさは千差万別である。しかし、これらに共通するのは、これまでの常識、限界の概念を打ち破り、人々に新しいパラダイムを提示している点である。これが、世界中の人々の思想、活力の新たな基盤となる。
そこで今回、ここでは世界の常識・概念を覆すような発見、もしくは後世に長く語り継がれるような金字塔を打ち立てた者を天才の第三条件に付け加える事にする。

天才の第三条件:世界の常識・概念を覆すような発見、もしくは後世に長く語り継がれるような金字塔を打ち立てた者

以上、三つの天才の条件を提示したが、次回、この条件に当てはまりそうな天才を挙げながら、真の天才を探っていきたいと思う。


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