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最近の本の長くて説明的なタイトルに絶望し、試しに自分のnoteにもそんなタイトルをつけてみた話

先日、新聞の書籍広告にこんな本のタイトルを見つけた。

借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれたお金の取扱説明書

ん? これ、本のタイトル?

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昔、出版社に勤め、編集者をやっていた。
作っていたのは上のような実用書ではなく、日本史・民俗の学術書だった。
東京に暮らしていた30年ほど前の話だ。

タイトルは、著者と相談しながら最終的に編集者が決めることが多い。
これはと自分が企画し、著者とのスパークの中で手塩にかけて育ててきた原稿を、本の形に変えようとするまさにその時にタイトルを決めるのだ。
それはひどく苦痛を伴う作業であり、この上なく楽しい作業でもある。

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Webサイトのファーストビューは3秒で判断されるとも言われる。
閲覧者は、わずか3秒でそのサイトが自分にとって有意義か判断するのだ。となると、制作者側はその3秒でページを売り込まなければならない。

最初に目に飛び込むファーストビューに、説明を放り込む。
想像させる言葉を入れてしまっては、理解する前に3秒経ってしまう。
結果、目にしてすぐ分かる文になり、単なる説明になる。

そんな制作態度が書籍編集に影を落としはじめているのか?

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この記事にも試しにそんなタイトルをつけてみた。
今風のタイトルになっただろうか。

一例として冒頭で紹介した本は、売れているところを見ると、内容も充実しているのだろうし、それこそ長いタイトルが効いているのかもしれない。
制作者側の、本を売ろうとする努力はちゃんと実を結んでいる。

でもね。

興味を引くための単なる説明からは、営業的なセンスしか匂ってこない。
そのタイトルに、編集者魂が感じられないのだ。

ただ、淋しい。

(2021/5/16記)

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