千年の都、やっぱり奥が深いぞ
羊羹といえば〈とらや〉。
すっかり東京の名店と思われるようになってしまった。
けれど本来〈とらや〉は京都の和菓子店。
室町後期に創業し、江戸時代には宮中御用達として内裏の横で営業した。
明治2年、皇室に従って東京へ下るが、〈とらや〉の社史によると「御所御用の菓子司として、京都の店はそのままに、東京へ進出」「明治天皇にお供して東京にも出店いたしましたが、京都一条の地での菓子づくりは、今日に至るまで変わることなく続いています」とある。
あくまで東京へは「進出」であり「出店」なのだ。
東京の方々、ゆめ〈とらや〉の羊羹を京都へ土産に持っていくなかれ。
〈ひよ子〉を東京から九州への土産に持っていって笑われる話をたまに聞くが、同じだ。
今年の盆、その京都一条の地、京都御所すぐ横の本店の、またすぐ横にある〈虎屋菓寮〉へ寄った。
〈とらや〉の極上の菓子と宇治の銘茶が楽しめる。
〈とらや〉の紋章と同じランプシェードがあったかい。
琥珀羹〈西瓜〉を注文。
種に見立てた小豆入の紅煉羊羹を、緑の琥珀羹で縁どった斬新な意匠で、西瓜を表しています。夏の味覚である西瓜の冷たさやみずみずしさが伝わってくるようです。(〈とらや〉公式サイトより)
しっとり羊羹と、つるりん琥珀羹の取り合わせが心地よい。
まさに夏そのものの視覚と味覚、と唸るしかない。
客席から眺める内庭は、緑が目に映える。
以前利用したときは、黄色い帽子をかぶった小学生たちがこの庭をわいわいと下校していったが、それすらも絵になった。
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出町の〈ふたば〉は盆ということもあって大賑わい。
明治32年創業の、豆餅で有名な店だ。
塩気をほのかに感じる豆餅は安定のおいしさ。
それと、母の初盆に供えるため白餅も。
どこか澄ました〈とらや〉と、じゃんじゃん買うてってやの〈ふたば〉。
どちらも京都。
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〈ふたば〉のすぐ近くにある〈満寿形屋〉で昼ごはん。
鯖寿司で有名な人気店だけに、開店前から多くの人が並んで待つ。
京都は鯖寿司が売りという店がとにかく多い。
京の都には海がないが、若狭で獲れた鯖は鯖街道と呼ばれる道を通ってせっせと都に運ばれたといい、いつしか京は鯖の町となった。
保存性を高めるための塩が、運ぶ間にほどよく馴染んで旨みが凝縮され、京に着いたときにもっともおいしくなるという。
昼定食のうどんと鯖寿司のセット。
京都といえばの鯖寿司はやっぱりおいしい。
噛むほどにジュワッとしみ出す鯖の旨み。
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千年の都、やっぱり奥が深いぞ。
(2021/8/28記)
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