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春の味覚はやはり春のうちに

退院後まもなく、父の顔を見に行くつもりがしんどすぎて断念した記事を以前書いた。
あれから2週間、なんとか体力も回復し、昨日ようやく父のいるホームへ足を運ぶことができた。

来週88歳の米寿を迎える父に、お祝いのカード。

父は喜んでくれたが、自分の誕生日や年齢のことはもう霧の中のようだ。
次第に薄れる父の記憶に、息子としてやはり悲しみを禁じえない。
また来るね。

帰り道、なぜかもう一駅先まで歩いてみようといつもと反対側に歩き出すと、すぐ近くに2年前に母の葬式を挙げたホールが。
なんと! 亡き母が父のそばで見守っているようで嬉しかった。

その辺りは1960年代まで神戸の中心だった新開地(しんかいち)。
活気を失った今では想像もつかないが、往時は芝居小屋や活動写真小屋が立ち並んで「東の浅草、西の新開地」と謳われ、年間400万人もの観劇客が訪れたというエリア。

最盛期の新開地(昭和初期)

その新開地のど真ん中あたりにある純喫茶〈エデン〉に立ち寄った。
昭和23年創業当時のままのこの店は、「現存する神戸最古の喫茶店」だ。
震災にも耐え、その趣を今に伝えている。

店を豪華客船のイメージにしたかったという先代の依頼を受け、船舶の室内装備の業者が内装を手がけたそうだ。

飴色に輝く店内は、歴史と風格を感じさせる。

正午まではモーニングサービスがある。
コーヒーと軽食のセットだ。
店には11時前に入ったが、先月受けた手術で口が不自由になり、セットは諦めるしかないかと思ったら、なんと「ゆで卵セット」がある。
ゆで卵ならきっと食べられる!

純喫茶のコーヒーが今どき1杯350円というのに驚いたが、ゆで卵セット350円にもぶったまげた。
このほか、トーストセットも350円、ミニサンドセットも350円…

コクのある複雑な味わいのコーヒー。
塩を振ったゆで卵をかじりながら飲むコーヒーのうまさよ。
わざわざ遠回りして足を運んだ新開地から歓迎されている気がした。

夜はどうしてもタケノコが食べたくなり、帰りのスーパーで買う。
春の味覚はやはり春のうちに。
圧力鍋で茹でればすぐだから面倒もない。

ついでに鶏の唐揚げも食べたくなった。
今の僕の口でも、プリプリの鶏モモならきっといけるはず。

タケノコは炊き込みごはん、若竹煮にし、鶏モモを揚げた。

でも僕のはこっち。

炊き込みごはんは具だけ選り分けて刻み、雑炊にしたごはんに戻す。
若竹煮はタケノコ、ワカメともに刻む。
鶏唐揚げもレタスもトマトも刻む、刻む、刻む…

うまい! 春だ!

(2023/4/23記)

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