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もう時代は前に進んでいる

「ファスト映画」が問題になっている。
朝のNHKがそう言った。

「ファスト映画」とは、誰かが映画1本を数分間の動画に編集し、解説付きでYouTubeなどに上げたもののことをいう。
もちろん映画配給会社や著作権者に無断で編集し、アップされているから、またとない違法行為である。
いわばダイジェスト版ということになるが、その編集は制作者の意図を汲んでいるわけではないから、オリジナルの質が保たれているとは言いがたい。

ではなぜこのようなものが横行するのか。
それはもちろん、需要があるからだ。
最近その需要はますます旺盛だという。

Netflixでも倍速再生で映画を見る人が増えているという。
作品をじっくり鑑賞するというより、ストーリーをただ追えればいいと。
そういえば娘も、長い会話の部分は容赦なく飛ばしてみていたな。
あれ、そこ大事ちゃう? と思うが、時間がもったいないらしい。

同じように「ネタバレサイト」も問題になっている。
漫画のセリフなどを要約して載せ、一瞥で作品の内容が分かるサイト。
これも著作権者に無断で行っているから、完璧な違法行為。
しかし、ファスト映画同様、旺盛な需要があるから提供される。

朝のNHKの論調は一様にけしからんというものだった。
漫画の編集長も出てきて、コンテンツビジネスの産みの苦しみを知ってほしい、そこに対価を払う人がいるから成り立つのだと力説していた。

もちろん言っていることは正しい。
でも世間の需要、時代の要請というものを甘く見るべきではない。
作品はじっくり味わってこそと僕も思うが、そうでない人が著作権者の想像をはるかに超えて増えているという事実。

であれば映画も漫画も、配給会社や出版社が公式に要約すればいいのに。
予告編ではなく、公式スタッフが結末まですべてしっかり作り込んだ要約。
そこに対価を求め、サブスクで提供するのだ。
要約で十分と思っていた人に、作品を味わいたくなって映画館に行く、漫画本を買うというアクションを起こさせるのは公式の腕の見せどころ。
というか公式がやらないと、違法行為は絶対なくならない。
ストーリーを追えればいいという人がこれだけ増えているのだから。

フライヤー」という、ビジネス書の要約サブスクがある。
サービスの謳い文句は「1冊10分で読める要約」だ。
これは著作権をクリアした合法サービスで、要約を読むと本を買いたくなるように作られているから著作権者もOKを出す。

もう時代は前に進んでいるのだ。

(2022/7/25記)

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