楽しい話だけでなく間違いのない施術はさすがだ
先月初め、農作業で身体が動かなくなり、整体に助けを求めた話を書いた。
一時的な筋肉疲労をどうにかしてもらおうと思って行ったのだが、そこで指摘された骨盤や背骨のずれを改善すべく、しばらく通っている。
毎回同じ担当者が施術してくれるのは美容室と同じで、何度か通ううちだんだん打ち解けてくる。
その日も、頸椎、腰椎の調整をしながら話しかけられた。
「(へんいち)さん、明日世界が終わるとしたら何します?」
最近どうもこの「明日世界が終わるとしたら」というフレーズをあちこちで聞く気がするが、なぜ? もしかして本当に終わろうとしている?
「うーん、何しよかな…」
「同僚にも聞いてみたら、ディズニー行って、オムライス食べて、ケーキも食べて過ごすってかわいい答えの人がいて」
「それはかわいいなぁ」
「あたしは温泉入って、カニ食べて、浴びるほど日本酒飲みたいです」
「それはかわいくないなぁ」
最後の日の過ごし方、20代にしてそれは渋い。
「ですよねー! で、(へんいち)さんは?」
「そやなぁ、これまでの人生で関わった人全員に電話しよかなぁ」
「えー! そんなこと考えたこともなかったです」
「そう? 明日終わるんやったら何か新しいこと始めるんも虚しいし、これまで関わった人と、いよいよ終わりますねぇ明日どうやって迎えますかねぇってしみじみ話すくらいしか思いつけへんわ」
「なら、あたしにも電話かかってきます?」
「いや番号知らんし」
「ですよねー! それにあたし、その日は連絡取れないんで」
「なんで?」
「温泉入って、カニ食べて、浴びるほど日本酒飲んでる最中なんで」
「やっぱり全然かわいくないわぁ」
このあと、辛口と甘口のどっちが好きかとか、好みの銘柄は何だとか、冬はやっぱり熱燗に限るとか、日本酒談義に花咲いた。
その整体のスタッフの中で断トツで人見知りだという「あたし」は、とてもそうは見えないほど楽しそうに日本酒を語る。
最近、感染症が落ち着いて職場の飲み会も頻度を増しているが、日本酒好きの人が少なくてちょうど淋しい思いをしていたところだ。
思わぬ場所でこんなに話せるなんて、それだけで楽しい。
1時間ほどの骨格調整が終わり、首も腰も可動域が驚くほどに増している。
楽しい話だけでなく間違いのない施術はさすがだ。
1か月の通院ですっかり整って、次が最終回かな。
自他ともに認める人見知りらしい「あたし」は、義務的な営業トークをこなすため必死に言葉を繋いでいたのだろうか。
そうでないならいいなと思う。
(2021/12/3記)
サポートなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!