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貴女と夜桜【百合小説】

仕事が終わりいつものバーで桃子はため息をつきながら一息つく。
生演奏のジャズを聴きながらカクテルを傾けているとスマホがプルッと鳴った。
 
待ち受けに表示された通知は、気になっている先輩からだった。
『時間大丈夫だったら、夜桜でも見に行かない?』
可愛いスタンプと共に送られてきた文面に、目を疑ってもう一度画面を見る。
 
今日は先輩のほうが早く会社を出たはず・・・。
(何かあったのかな・・・?)
首をかしげながら「行きます!」と返事を返すと、会計を済ませて駅に向かう。
 
駅に着くと、桃子に気がついた穂乃果が手を振った。
二人は連れ立って桜のライトアップされている公園に向かった。
 
 
満開の桜が灯りに照らされてひらひらと花びらを舞わせていた。
「わぁ・・・穂乃果先輩見てください!満開ですよ!」
 
嬉しそうに桜を見上げる桃子だったが穂乃果にベンチに促されとなりに座る。
「ほら」と差し出された紙袋には珈琲が二つ入っていた。
(暖かい・・・)両手で珈琲の紙カップを包んで手を温めながら桜と穂乃果を見る。
「穂乃果先輩、なんで今日誘ってくれたんですか?」
「なんでやと思う?」桜を見上げながら穂乃果は聞き返す。
 
そんな穂乃果の横顔が綺麗で、桃子は口をつぐんでしまう。
「ねぇ・・・なんでやと思う?」
訪れた静寂に思わず下を向くと、穂乃果が桃子の手に手を重ねた。


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