オレンジの朝焼けと赤瓦の街フィレンツェ
ドイツのミュンヘン駅の構内で友人とふたり、
このあとイタリアに行くか、スペインに行くかと迷っていた。
大まかな旅程しか決めていない旅で
気ままだけど不安も多い、そんな道程。
結局ヴェネツィアに向かおうということになり、
まだ明るいうちから簡易寝台に乗った。
明け方、目が覚めて
コンパートメントのベッドからカーテンをちらっと開けて外を見たら
イタリアの草原が朝焼けでオレンジ色に染まっていて、
あわててカメラを出してシャッターを切った。
それが、初めて見たイタリアの風景だった。
トイレに行こうと通路に出て車両の奥までいったら
あったはずの後ろの車両が切り離されて、無い。
何かおかしいと思って確認すると、
乗っている列車はヴェネツィアには向かっておらず、
ミラノを通り過ぎて別方面に南下していた。
急遽、予定を変更してボローニャで降り、フィレンツェに向かうことに。
ボローニャのホームで「ああ、ここがミートソースの町か、、、」と思っていた(ような気がする)。
フィレンツェは古い町だった。
道は狭いし、ごちゃごちゃしている。
車付きのリュックを引きずりながら歩くも、
ごつごつの石畳に車を取られてうまく進めない。
駅で予約した安宿を探すが、なかなか見つからなくて
歩いているおばちゃんに聞いても英語は通じない。
ただ、言いたいことは伝わっているようで
建物の壁の番号を指して、しきりに「ネロ!ネロ!」という。
そのうち、何人も集まってきて
「ネロ!ネロ!」の合唱になってしまった。
外壁についているタイル製の番地の数字が黒い(=ネロ)ほうだ、
と説明してくれていたらしい。
汚くてごちゃごちゃしているという印象は、
革細工の屋台が並ぶあたりだったせいと、
とにかく町が古いからなのだった。
初めて見た大聖堂 "花の聖母寺(サンタ・マリア・デル・フィオーレ)"は大きくて
ピンクと緑の石で造られた外壁は花のように美しかった。
「高い所があれば必ず上る」というのが、私と友人の旅の鉄則だったので、500段近い階段をひたすら上る。
途中、ドームの内側を間近に見られる場所でその壮大さにびっくりしながら上りきって外に出たら、一面の赤瓦だった。
それまで旅してきたロンドン、パリ、スイス、ドイツとはまったく違っていて、このとき初めて「ヨーロッパに来た!」と実感した。
当時は「行ってみたらイタリアが好きだった」
という程度にしか考えていなかったけれど、
今思い返すと、本当に縁が深い場所には意識するしないに関わらず出会ってしまうものなのだ、と思える。
そのくらい、イタリアは縁の深い土地だった。
photo: KAORI K.(photofran)
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