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「ロスト・キング」*究極の推し活

そんなわけで、朝つぶやきました通り、2000字以上書いた記事が一瞬で吹っ飛びましたので、再度書き直してみます。
これはね、より自分らしい言葉で自分なりの感想を書きなさいよと言われているようです。

予告を見てから、絶対観に行く!と決めて楽しみにしていた映画を観てきました。
「ロスト・キング 500年越しの運命」
ほんとは公開当日に行きたかった。でも結局、翌日の秋分の日になりました。
すでにこの映画についてnoteでも記事が上がり始めています。
たくさんの方が内容について書くでしょうから、私は私なりに感じたことを。

まずは、観に行ってほんとうに良かったです。
劇場という場所があまり得意ではないのに、これ絶対観る!と思ったときはもう間違いがありません。
観終わって商業ビルの中を歩いていても、ふわふわボーっ。
いわゆるグラウンディングしていない地に足がついていない状態。
なぜそうなるかというと、
もともとヨーロッパ史が好きで、イギリスも好き(イタリアよりも前から)。
それに加えて"時を超える話"が大好きで、無性に何かが気になって調べることに夢中になる気持ちもわかるから。

この映画は、専門家でもなんでもない一人の女性が、プランタジネット朝・ヨーク家の最後の王、リチャード三世(1452~1485)の遺骨を探し当てる実話です。
リチャード三世はシェイクスピアで広く知られているそうですが、
私はシェイクスピアにあまり興味がないので、お恥ずかしながら「リチャード三世」についてもほとんど知りませんでした。
(シェイクスピアが実在の人物ではなかったという話があり、そちらは大いに興味ある)

シェイクスピアの作品のなかで、リチャード三世は残忍なことをする悪人で、背中が曲がり足をひきずる姿で"せむし”(脊柱後弯症)という言葉で表現されているそうです(実際は脊柱側弯症で、そこまで目立つものではなかったよう)。
それが歴史劇として上演されてきたため、4世紀ものあいだ史実として引用され、人々によく知られる人物像になったということ。

映画の主役であり、実際にリチャード三世を追いかけたフィリッパ・ラングレーという女性は、息子の付き添いで「リチャード三世」の舞台を見て、彼は本当に冷酷非情な人間だったのか?と疑問を持ちます。
歴史のなかで不当な評価、極悪なイメージを押し付けられているのではないか・・。
自身が持病の筋痛性脳脊髄炎M E(慢性疲労症候群)に苦しみ、そのせいで上司に正当に評価してもらえず落胆していたフィリッパは、自分と彼を重ねて同情し、彼の汚名を晴らそうと奔走しまくることになります。

以前にも、歴史は誰の視点で書かれているかを見ることが大事、と書いたことがありました。
リチャード三世は、1485年のボズワース・フィールドの戦いで、ランカスター家のヘンリー・テューダー率いる軍に打破され、殺されています。
リチャードの悪評は、勝者であるテューダー家によるプロパガンダだと主張するフィリッパの言葉を歴史家は笑い飛ばしますが、私はその言葉に心の底から頷きます。

映画のなかで、フィリッパはリチャード三世の幻影を見るようになり
そのうち彼と会話をするようになります(妄想?)。
でも私は、彼女はスピリチュアルな感性を強く持った人だと思いました。
遺骨はソア川に投げ込まれたという説が一般的に信じられていたのに、8年もの間、彼の墓の跡と遺骨を求めて奔走するなんて情熱は、なかなか持ち続けられるものではないです。

そんなふうに、なにかに駆られるように追いかけてしまう感覚はとてもよくわかります。
私の場合はそれがイタリア・アッシジの聖フランチェスコでした。
彼にはもちろん立派な(すぎる)墓があるのだけど、
10年近くも追っかけ、いや、今の言葉だと「推し活」していました。
そういうのはもうどうしようもない。
ご縁が強いとそんなふうに導かれてしまうのですね。

結局、大学関係者や専門家のいうことではなくフィリッパの直感により、リチャード三世の遺骨を掘り当てることになるのですが、
彼が埋まっている可能性のある場所(駐車場)に辿り着いたときの彼女の感覚を読むとワクワクします。
やはり、理屈ではない感覚で導かれることが、間違いないのだなと。

「そこで私は直感的な体験をした。何かが足を伝って上がってくるような感じで、だんだんと強烈さを増して、気を失いそうになった。なぜかリチャード三世のお墓の上を歩いているような感覚になり、足元を見ると予約専用駐車スペースの舗装に英語の"R"の文字が目に入ってきたの」

公式サイトより

ちょっとネタバレになりますが・・
このRの近くから遺骨が見つかります。
RはもちろんリチャードのRではなく、予約専用のRだけど
こういうシンクロって本当にある。
だから目に見えないものを信じることができると、物事が俄然面白くなります。

遺骨が見つかったことで、大学など権威のある人たちは手のひらを返したようになり、大発見の手柄を自分たちのものにしようとします。
権威あるものが素人を無視するという、こういったことは普通に起こっていた事なのだそうですが、見ていて腹立たしいものがありました。
でも最終的にはフィリッパの功績が認められ、エリザベス女王から大英帝国勲章第5位が授けられたと知って、ホっとしました。

***
この映画は、個人的な"ご縁を感じる引っ掛かり"がいくつかあります。
ひとつは、当時はイギリスに最初の印刷機が導入された時代、「印刷は悪魔の仕業」だと言われていたにも関わらず、リチャードは印刷を奨励したと映画のなかで知りました。
私は昔から、印刷の歴史や印刷というものが好きなのです(印刷博物館大好き)。

それから、ある本がきっかけでスコットランドのエジンバラになんとなく興味を持っています。行ってみたい~!という憧れではなく、自分がその場にいることがしっくりくるような感覚?
そのエジンバラも映画のロケ地になっていて、町の雰囲気を見ることができました。

そして、リチャード三世が埋葬されていたレスターという町。
パンフレットを読んでいたら「レスターの赤レンガ」という言葉が目に付きます。
スピリチュアルな話になりますが
だいぶ前にウィリアム・レーネンさんというアメリカのスピリチュアル著作家のワークショップに参加したことがあります。
そのなかで、参加者同士でお互いの過去生を視るワークがありました。
その時私が言われたいくつかの過去生の一つが「イギリスの赤っぽいレンガの町に住んでいる、いい感じのお爺さん」。
レンガの町ってどこなんだろうと、それ以来記憶の隅にその言葉が残っています。

映画のあと、コーヒーショップでカプチーノを飲みながら、めったに買わないパンフレットを読んでレンガの町のことを思い出しつつ、さて、帰ろうと立ち上がったとき
自分が座っていた席のすぐ横の壁をみて一瞬固まりました。

私、レンガの横に座ってた・・・

なにか、面白くなってきたな。

おそらく正確な歴史というものはわからない。
でもどんなふうに記録に残っているのか、
イギリスの歴史をもういちど調べてみたら面白いかも、と思いました。

ちなみにリチャード三世は「勇敢で忠誠心にあふれ、敬虔で正義感の強い人だという証拠がある」と、フィリッパは語っています。

*おまけ*
リチャード三世と舞台俳優の二役で出ていたハリー・ロイドという役者さん。存在感があり、鎧が似合って魅力的でした。


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