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動物病院での犬と猫の病気:下痢(2) 動物病院に行く前に知っておいてほしい大事な事

  千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

ご自宅の愛犬愛猫が下痢をしたらまずはどうするか?


動物病院に行く前にご家族にぜひやっていただきたいこと

それは

愛犬愛猫が下痢になった原因や経緯を考えてもらう

ことです。

・いつから下痢が始まったのか?
・便の回数がいつもより多いか変わらないか?
・便の形状は?
・何か変なものを食べた覚えはあるか?
・何か環境の変化はあったか?
・現在元気や食欲はあるか?

などご家族が愛犬愛猫の下痢について分かっている情報をなるべく多く把握してほしいのです。
そしてそれをそのまま動物病院の獣医さんにお伝えください。

繰り返しになってしまいますが、その情報は多ければ多い方が良いです!


それを実行することによって愛犬愛猫の病気が早く治るといっても過言ではありません。

愛犬愛猫のご家族の皆様は、今後動物病院に行く前にぜひ今回私がお伝えしたことを意識してみてください。
よろしくお願いいたします。

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今回お伝えしたことは下痢だけでなく全ての病気の診断に共通して言えることですが、

なぜご家族の情報が重要かといいますと、理由は大きく二つあります。

一つ目の理由は

犬や猫は言葉をしゃべることが出来ません。

そのため人間と異なり、犬や猫は自分で
「どこが痛いか?」
「いつから具合が悪いのか?」
などを直接獣医師に伝えることが出来ないからです。

そのため愛犬愛猫の病気を早く治していくにはご家族の情報がどうしても必要なのです。

二つ目の理由は
獣医さんの診察方法はそのほとんどが除外診断を行っているからです。

診察で目の前にいる犬や猫の症状は、実は原因となる病気以外のいろいろな病気でも同じ症状が出る可能性があります。

そのため獣医さんはたくさんの病気から可能性の低い病気を一つ一つ除外をしていき、実際に目の前の犬や猫を苦しめている病気がなんであるかを診断しています。

そのような診察のすすめ方のことを除外診断といいます。

その除外診断においては、ご家族の情報はとてもとても重要なものになります!


つまりご家族から得られた情報で除外診断はスムーズに進むことも多く、実際に目の前の犬や猫を苦しめている病気の原因に早くたどり着くことが出来ます。


逆にご家族から得られる情報が少ないと、数多い病気からひとつひとつ可能性のある病気を除外しながら診療をすすめていかないといけません。そのためどうしても診断には時間がかかってしまいます。

実際よく動物病院には
「うちの子が何か様子がおかしいので診てください。」

と言って診察に来られるご家族がいます。

私たち獣医師が
「具体的に何がおかしいのですか?」

と聞いても

「分かりません。」

「お腹を崩しているのですか?それとも体のどこかを痛がる素振りなどはありますか?」
などと聞いても

「分かりません。」

と全く自分の愛犬愛猫のことを把握せずに動物病院に来られるご家族もいます。

(別にこのようなご家族を批判しているわけでは決してありません。誤解がないようよろしくお願いいたします。ご家族が留守中に動物たちが具合悪くなったときなどは情報が全くなく診察を進めることも動物病院ではとても多いのです。)

そのような診察の際、私たち獣医師は

まず

お腹が痛いのか?

それとも

腰が痛いのか?

もしくは

発作の前兆なのか?

などまったく異なる病気も想定したうえで、除外診断をはじめていきます。

そのため当然原因の病気にたどり着くまでは時間もかかります。

そしてそのように診断に時間がかかっている間は、動物たちに適切な治療を行うことが出来ません。
すると当然ですが動物たちはどんどん弱っていってしまいます。
場合によってはその時間経過が動物の命にかかわってくることもあります。

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獣医さんは動物のことがすべてわかっていると思われている方がいるかもしれませんが、それは全くの認識違いです。


獣医さんは確かに一般の人よりは動物の知識は豊富かもしれません。

しかし普段の愛犬愛猫の様子を誰よりも知っているのは私たち獣医師ではなくご家族です。

ご家族が愛犬愛猫の代弁者として、獣医師にどのように様子がおかしいかをなるべく詳細に伝えてもらうことが病気を治す一番の近道です。

今後動物病院に診てもらいに行くことがあれば、ぜひ愛犬愛猫の情報をどんな些細なことでもかまいませんので獣医さんにお伝えください。
よろしくお願いいたします。

今回のnoteは以上です。

次回も下痢の話をしていきます。

つづく




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