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動物病院での犬と猫の病気:下痢(6) 小腸性下痢と大腸性下痢

千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

前回のnoteでは

下痢とはどのような状態なのか?

について解説をしました。

今回は下痢の治療をしていく上でとても大事なポイントである

小腸性下痢 と 大腸性下痢

の違いについてお話ししようと思っています。

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そもそもですが、動物は口から食べ物を食べて胃や腸を通り、お尻から便を排泄します。

主に小腸では食べ物に含まれる栄養素(三大栄養素といわれるタンパク質、糖質、脂質)の消化と吸収を、大腸では主に水分の吸収と便の排泄を中心に行っています。

下痢は問題になっている部位が

小腸なのか大腸なのか

により出てくる症状が異なります。

小腸性下痢では一般的に便の量がとても多く、排便回数も多くなります。
そして未消化物が多くなりますが、粘膜便(ドロッとしたゼリー状の粘膜を含んだ便)は少量です。そして嘔吐や体重減少、脱水も認められます。

大腸性下痢では便の量は正常かやや増加する程度で、排便回数はとても増え、粘膜便も多く出るようになります。そしてしぶり(便をする際に出にくかったり、痛みを伴うためにりきむこと。便がほとんど出ないのに違和感が強いため排便姿勢を繰り返すこと。)の症状が出てきます。嘔吐や体重減少は比較的少なめです。

以下に大まかな違いを表にまとめてみました。
参考にしてください。↓

小腸性下痢と大腸性下痢の症状の

大まかですが、小腸性下痢と大腸性下痢にはこのような違いがあります。
そしてこの二つの下痢を見極めるためには、動物病院での実際の診察で得られる情報よりは、以前お話しした「ご自宅での愛犬愛猫の下痢に関する情報」の方がとても大切になります。

今回お伝えした小腸性下痢と大腸性下痢の鑑別が、下痢の原因の特定や治療に直結します。
つまりこの二つの下痢を見極めることにより、愛犬愛猫の下痢が早く治ることにつながります。

ご自宅の愛犬、愛猫が下痢をしてしまった!

そのようなときはぜひとも
今回のnoteを参考にして下痢に関する情報を集めていただければ幸いです。

本日のnoteは以上になります。

次回は

小腸性下痢と大腸性下痢から考えられるそれぞれの下痢の原因についてもう少しお話ししたいと思っています。

つづく


参考文献:
徴候からみる鑑別診断 犬と猫の臨床

SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE

動物の基礎生理学セミナー


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