2021.6.16土地利用規制法~山添拓議員・基本的人権を脅かす憲法違反の法律は許されない(書き起こし)
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山添議員:日本共産党を代表し土地利用規制法案に反対の討論を行います。
本法案は、憲法が保証するプライバシー権や財産権など基本的人権を脅かし、罪刑法定主義にも反するなど、重大な懸念をいくつも抱えています。
審議すればするほど問題点が浮き彫りになるなか、与党は昨日夕刻以降、突如、採決ありきで議事をおし進めるに至りました。これ以上審議すれば、政府が説明不能に陥るのを怖れるかのように強制終了しようとする姿勢は断じて許されません。
説明できない法案は、国会の責任で廃案にするべきです。
本法案は土地や建物の利用状況調査を名目に、幅広い市民監視を可能とするものであり、その歯止めがありません。調査や情報収集の対象は誰なのかは条文上の制限がないことを政府も認めました。あらゆる人が対象となり得ます。
職業や収入、交友関係やSNSでの発信など個人に関わる情報について土地利用と関係なければ調査対象とならないと言います。しかし、関係があるかどうか判断するのは調査する側であり、条文上も限定はありません。
総理が必要と認める場合には公安調査庁や自衛隊情報保全隊、内閣情報調査室から情報提供を受けることも条文上、排除されていません。
小此木内閣府特命担当大臣や内閣府が「想定していない」といくら繰り返しても、条文に歯止めがない以上、なんの担保もないのです。
2003年、自衛隊のイラク派兵に反対する市民の活動が情報保全隊により監視され、公にしていない個人情報まで収集されていました。日本共産党が2007年に公表した文書には市民や市民団体の集会、署名活動、デモなどの情報がこと細かに記録され、イラク派兵と関係しない労働組合や市民団体の活動も広く監視対象とされていました。こうしたプライバシー情報の収集や保有は仙台高裁で違法と断罪されたものまであります。
ところが中山防衛副大臣は「個別具体的な内容は答えられない」というだけで、同様の情報収集活動を続けている可能性も否定しませんでした。いかなる理由で監視対象と定めるのか、防衛省は「手の内を明かすことになる」として答弁を拒みました。まるで市民を敵視するかのようです。
岐阜県大垣市では巨大な風力発電計画への住民運動を怖れ、警察が脱原発運動や平和運動をしていた市民の個人情報を収集し、電力会社と共有し、運動を潰す話し合いまで行っていました。警察庁はこれを通常行っている警察業務だと開き直っています。
権力による市民監視と情報収集は、プライバシー権にあまりに無頓着なまま行われ、デジタル化で一層の深刻化が懸念されます。
このもとで本法案は、総理の一存によりさらなる情報収集と一元的な管理を可能とするものであり、第三者によるチェックや歯止めの仕組みもありません。
与党推薦の吉原参考人(東京財団政策研究所研究員・吉原祥子)が「この法案ができることで、新たな不安が国民の間に呼び起されては決していけない。どういう歯止めができるのか、考えなければいけない。」と述べました。なぜこの指摘を一顧だにしないのですか。
政府は、役所や事業者、地域住民から、情報提供を受ける窓口を作ると言い、密告まで推奨するつもりです。あらゆる手段が総動員されようとしています。利用規制の対象となる「注視区域」、売買等の届出義務が罰則付きで科される「特別注視区域」、いずれも無限に広がり得ます。
自衛隊や米軍の基地のほか、生活関連施設として原発や軍民共用空港を政令で指定すると言います。しかし、条文上の限定は無く、大臣はその理由を「内外情勢の変化に応じて重要性が変化しうるから」と説明します。
では、現在の安全保障情勢をどうとらえ、何故、原発を対象とするのか。世界一安全と謳う新規制基準で対処できない「機能阻害」とは何なのか、説明もありません。生活関連施設は、国民保護法施行令に定めるように発電所や水道施設、1日10万人以上が利用する駅、放送局や港湾、空港、河川管理施設など幅広く指定され得ます。
政令でいくらでも拡大できるとしていることは、国会の関与を敢えて排除しようとするものと言わざるを得ません。
沖縄では戦後、米軍が「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強制的な土地収用を繰り返し、住民が追い出され、基地あるが故の被害が今日でも続いています。本法案はその被害者である沖縄県民を監視の対象にしようとするものです。外交防衛委員会連合審査会で、沖縄の伊波洋一議員が指摘したように、普天間基地を擁する宜野湾市は市民の9割、9万人が1キロ圏内に居住しています。加えて沖縄は、国境離島としてその全島が「注視区域」とされかねません。
安全保障の名のもとに、どこまで権利侵害を重ねるつもりなのですか!
勧告、命令、罰則の対象となる「機能阻害」とは何なのか、法律に定めはありません。予見可能性を確保するために閣議決定で具体的に例示すると言いますが、では例示した以外は対象とならないのかと言えば、必ずしも断言できないとの答弁です。
罪となるべき行為は、法律に明示されなければならない、罪刑法定主義の原則に反しています。
本院で法案審議が始まった今月4日、沖縄県の北部訓練場で抗議活動を行うチョウ類研究者の宮城秋乃さんが家宅捜索を受け、パソコンやビデオカメラなどを押収されました。米軍から返還された訓練場跡地には薬きょうや空き缶など、廃棄物が散乱し、県警に通報しても、回収されない一帯が世界自然遺産に登録されようとするなか、これで良いのかと抗議するために廃棄物の一部をメインゲート前に置いたことが、威力業務妨害にあたるとされたものです。米軍が現状回復を怠ったことは、不問に付し、跨いで通れる程度の空き缶などを並べた宮城さんは、強制捜査と連日の取り調べ、あまりにも恣意的です。
半田参考人(ジャーナリスト 半田滋)はこの事例を本法案の先取りだと指摘し、何が「機能阻害行為」に当たるのかは認定する側のさじ加減一つだと批判しました。その通りではありませんか!
馬奈木参考人(弁護士 馬奈木厳太郎)が、戦前の要塞地帯法の条文を紹介しました。「何人といえども、要塞司令官の許可を得るに非ざれば、要塞地帯内、水陸の形状を測量、撮影、模写、録取することを得ず」戦前の法律でさえ、規制対象は明確でした。しかし、濫用され、国民の自由は奪われ、破局に至るまで戦争に駆り立てられたのです。
いま、日本国憲法のもとで国民の権利を制限するのに、なぜ政府にフリーハンドを与えるのかと問われ、大臣が答弁に立とうともしなかったのは、本法案がいかに危ういものであるかを示しています。
歴史の教訓を想起するべきであります!
大臣は5年後の見直しで「機能阻害行為」を理由にした強制接収、収用手続きを含めた検討も否定しませんでした。
戦後制定された土地収用法は軍事や国防のための収用を認めていません。戦争の反省にたつものです。軍事的な安全保障のために再び国民の私権を制限しようとすることは、憲法の平和主義に反すると言うべきです。
大臣は本法案の立法事実を「外国資本による不動産購入を契機とする不安、リスク、懸念」と表現しました。しかし、これまで安全保障上の懸念が生じたケースは確認されていません。漠然とした不安を根拠もなく重視すれば疑心暗鬼が広がります。馬奈木参考人が述べたように「特定の国を潜在的な脅威であるかのように扱うとすれば、ヘイトにも近い」と言うべきです。
安全保障上の懸念を持ち出せば何でも通ると言わんばわりに、基本的人権を脅かし、市民監視を強める法案を時間が無いなか提出しておきながら、誤魔化しの答弁を意図的に繰り返し、参考人質疑や、野党の指摘も無視して採決を強行するなど、断じて許されません!
#土地規制法案を廃案に というツイートがいまこの時間も、13万7000を超えて増え続け、この審議もインターネットで注視されています。
本法案は廃案しかない!!ことを指摘し、討論と致します。
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