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9月の読了

1ヶ月が。早すぎる。

小説の世界にどっぷり浸かりたいときもあれば、現実生活に落とし込める学びを得ないと落ち着かなくてフィクションが読めず、実用書ばかりの時期もあったりします。
今月は前者でした。仕事のデータの提出期限が迫りながらプライベートでダメージが大きい出来事が続いて、別世界に逃げたかったんだろうなあ。
かといって、明るくて爽やかな小説よりもずどんと重いものが好み。今月は3冊ご紹介します。(長くなってしまったので気になるものからどうぞ)

けむたい後輩(柚木麻子)

個人的大ヒットだった作品。女子の人間関係で誰もが感じたことのあるだろう感情が繊細に詰め込まれていた。

10代で詩集を出版し、煙草を吸い、好むカルチャーも醸し出す雰囲気も交際関係も「その辺の量産女とは違う」ことにアイデンティティを持つ栞子。
その栞子に憧れて、信者のようになっていく病弱な良家の娘真実子。
真実子の幼馴染で、栞子に染まっていく彼女にやきもきする美里。
この3人が織りなす、お嬢様系女子大でのお話。

途中で栞子の容姿についてふわっと触れられるのだけど、彼女が絶世の美女ではないという情報が入ることで物語は一気に面白くなるなと思った。
栞子のあらゆる振る舞いは、完璧な美人だったらそらこうなるなと頷けるけどそうではないならやはりどこか少し痛い。
自分を好いているからとどんなに身勝手に振る舞おうと、真実子は栞子を羨望の眼差しで見つめ続けて褒めちぎる。それがだんだんと栞子の自己肯定感の柱になっていくのがわかる。

栞子は3人の中で一番ぶっ飛んでいるようで実は一番人間らしいし、美里はそこも冷静に分析する。不本意な形で親友を奪われたことで最初は全力の感情で栞子を嫌いながらも、じわじわと同情の感情がちらついてくるのも頷ける。真実子が良くも悪くも、無垢すぎて。

自分でもびっくりしているのだが、美里は今初めて栞子が気の毒になったのだ。やり方や方向性が美里と違うだけで、彼女もまた自分だけの居場所を見つけようと必死なのだろう。それなのに、いつも真実子が出てきて台無しにする。自分を慕ってくれているだけに、そうそう邪険にも出来ない。悪気がないのが一番タチが悪い。

終始「真実子…目を覚ましなよ…」と美里の目線になっていたたまれない本編だけど、最後のエピローグで全て持っていかれる。
エピローグの栞子には一生なりたくないので、真実子の言葉を心に刻んで生きよう・・・

お前なんかに会いたくない(乾ルカ)


高校のクラスカーストとその中で起こったいじめ、そして10年後の復讐に続く話。装丁のイラストがとても良いのでこれは書籍で買いました。

カーストのトップに君臨する女王、井ノ川。行動を共にすることを許される子。その輪に入りたいけど入れずに一つ下位のポジションであることに不満を抱く子。顔良し性格良しの人気者で、これまたカーストトップの陽キャ男子グループ。絶望的に空気を読めずにクラスからはみ出した女子、岸本。

いじめはいじめた方が100%悪い。それは勿論そう。
だけどそれぞれの立場での感情がわかるし、岸本の振る舞いでは私でも正直距離を置きたい。
岸本を例えた、「ひじきみたいな目」という言葉が嫌に印象に残ったな。

タイトルの「おまえなんかに会いたくない」は、岸本のクラス全員への言葉だと思っていたけど、登場人物たちからの岸本への気持ちでもあるなと思った。
劇的な展開を予想していただけにラストは意外だったけど、何をもって岸本の復讐が成功となるのかを考えると別の意味で恐ろしい・・・。

クラスカーストは私の学生時代にもわかりやすく存在して、でもそれは今振り返ってそういえばそうだな、と思うのであり当時は当たり前の構図で、適応すべき生活だった。
10代ながら私達は頑張ることが多すぎた。権力者にはなれなくとも、「権力者の友達」のポジションを確立されることが出来ればそれは大きな大きなステータスで、それがあれば自分も上に行けるような気持ちになっていたよね。

井ノ川がいた。
彼女を探していた。少しでいい、話がしたいと思ったからだ。特に話すことなどないのだけれど。でも、そんなものではないか。私たちのどれほどが、話さなければならない用件を抱えて相手と話している?学校生活での会話は、内容よりも誰と話すかに意味がある。
私達は会話が成立する相手だという確認。マーキング。マウンティング。


護られなかった者たちへ(中山七里)

映画が公開されましたね。それゆえなのか、当時kindle unlimitedで読めました。(大感謝)
「生活保護」が大きなテーマ。
生活がどうにもならずに受けたい人、受け付ける役所の高すぎる壁、不正受給をしようとする人、必要なのに受けられない人、逆に受けないと後がもうないのに、意地でも頼ろうとしない人。様々な境遇や葛藤があって、フィクションであるとはいえ知らない世界を教えてくれる小説でした。

犯人はよく考えれば中盤で察しがつく、というレビューも目にしたけど、私は最後まで確信が持てなかった。
というか、犯人は誰だという目線で読むよりも人物の言葉や世界観とかにのめり込めたのかなと思う。けいさんの「人から受けた恩は別の人に返す」のくだりはとても良かったな。

映画は主人公が佐藤健さんで、正直かっこよすぎやしないか・・・?と思いますが(笑)、映画の相関図を見ると小説と少し変わるところがあるみたいなので観に行ってみようかなと思います。


実は今月読めたのはこの3冊だけ。10月はもっと読めるといいなあ。
今からはやっと手にした「3月のライオン」16巻読みます、これもどこまでも語れてしまいそうな大好きな大好きな作品。


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