写真を撮りたい理由
恋人の写真を撮りたい。
もしくは写っている写真をもらえるだけでもいい。
それくらい本人にいえばいいのにと思われそうだが,写真を撮ってもいいか尋ねるのはとんでもなく勇気がいる。何度か尋ねようとしたものの,喉の奥がきゅっとなって言い出せなかった。
多分,写真が苦手な人とばかり付き合ってきた過去が軽いトラウマになっているんだと思う。
でも欲しいのだ。
なぜなら私は恐ろしいほどに人の顔が覚えられないから。
相貌失認を疑うレベルで覚えられない。
記憶力自体はいいほうなので,人の顔が覚えられないといっても周囲にはあまり信じてもらえない。
でも冗談でもなんでもなく,本当に覚えられない。
声は覚えているから会ったことがあるというのはわかる。でも黙っていたらきっと気づかずに通り過ぎてしまうと思うし,そうなって後から困ったこともある。
何度か会ったことがあっても,ちょっと髪型や雰囲気が変わるとこの人誰だっけ?となることも一度や二度ではなかった。
仕事にも支障がでるレベルなので,詳細なメモをとってなんとか忘れないようにしている。
もちろん恋人の顔も例外ではなく,私が彼の顔を正確に覚えていられるのはせいぜい会った直後から1日後くらいまでだ。あとは朧げな記憶としてぼんやり思い出せるかどうか程度になってしまう。
会う度にもう絶対忘れない,って思うのに。
もやがかかったかのように思い出せなくなっていく。
好きな人の顔なのに思い出せないって,なんと悲しいことか。
パーツひとつひとつの特徴は覚えいているので,それを言語化することはできる。例えば目がぱっちり二重,とかそういうレベルなら覚えている。
でもそれはあくまで言語化できるだけで,頭の中でそれが再現できない。
その度に悲しくなる。
だからいつでも思い出せるように,お守りとして持っておきたい。
こういう理由なら写真嫌いでも撮ってくれるだろうか。
そもそも顔を忘れるなんてひどい,と思われないだろうか。
そんな小難しいことを考えて,今日も言い出せずにいる。
そのお気持ちだけで十分です…と言いたいところですが、ありがたく受け取らせていただいた暁にはnoteの記事に反映させられるような使い方をしたいと思います。