2023年に注目されたヨーロッパの技術関係者たち - 技術業界で活躍した最も影響力のある21人のリスト
2023年はスタートアップ、ベンチャーキャピタル業界にとっては散々な年でした。その中でも息を吐いた分野ではAIがあります。一方で、欧州はAI規制の法案を通しています。このような環境下で影響力を持った方々のリストです。今時点では使いにくいかもしれませんが、追って振り返るとこの方々が後に更に有力者に育っていることもあると思います。また、人物を中心に見ていただきつつ、欧州の今年、何が起こったのかを理解いただくこともできるかと思います。
ヨーロッパのテック業界は、大きな個性を持った人々が集まる世界だ。エコシステムが成長するにつれ、頭角を現す人々の数も増えている。
Siftedは、最も影響力のある21人の破壊者、金の亡者、支配者、囁く者、そして反逆者を調査した。（良くも悪くも）今年ヘッドラインを飾った人物もいれば、影で活動することを好んだ人物もいる。
マネーの王たち
アンナ・ランビアス
資本市場の専門家は10月、フランチェスカ・ブリアの後任としてイタリア国家革新基金の理事長に任命された。英国政府から「2019年グリーンファイナンス賞」を受賞した彼女は現在、イタリア全土に広がるアクセラレーターのネットワークと、運輸、エネルギー、ソフトウェア、ディープテック、ライフサイエンス、AI、フィンテックなどの分野のスタートアップに投資する10以上のファンドを統括している。イタリアのハイテクはようやく軌道に乗りつつあるようで、このファンドがどのようにエコシステムをサポートできるかに注目が集まっている。
グロリア・ボーエライン
ベルリンを拠点とするVCからオペレーターに転身したエンジェル投資家は、3月にヨーロッパ初の女性単独GPファンド、Puzzle Venturesを立ち上げた。100人のLPのうち、95人が資金投入に同意した。彼女の投資家には、ペルソニオ、クライ、ストライプ、コインベース、ワッツアップといった大規模企業の創業者や経営者も含まれている。
ミヒエル・シェファー
シェファーは、欧州最大のディープテック投資家である欧州イノベーション協議会（EIC）の会長に就任し、ディープテック企業へのより大きな小切手など、より多くの新興企業にサービスを提供するためのツールを与えるという大きな野望を抱いた。彼がEICに着任したのは、支払いの遅れによって多くの新興企業が資金不足に陥り、なかには廃業の危機に瀕した企業もあった激動の時代だった。彼の監督の下、EICはロシアや中国などの国からのコイン投資家を排除する新しいルールを導入した。創業者であり、元大臣であり、エンジェル投資家でもあるシェファーは、EICから株式や助成金を受け取る新興企業を、それぞれの国で少なくとも5社にしたいとSiftedに語った。我々はその結果を心待ちにしている。
スリラム・クリシュナン
インド系アメリカ人のインターネット起業家、ベンチャーキャピタリスト、ポッドキャスター、作家である彼は今年、ロンドンにあるアンドリーセン・ホロウィッツのヨーロッパ初のオフィスの責任者となった。この有名な米VCは、2024年春に次の暗号通貨アクセラレーター・プログラムを実施し、ブロックチェーンの人材を育成するために英国の大学との緊密な連携を確立する予定だ。Dealroomのデータによると、a16zとして知られる同社は2023年に少なくとも11件の取引をヨーロッパで行っており、Mistral AIも支援していると噂されている。クリシュナンは暗号通貨にフォーカスしているが、a16zがこの地に足跡を残すことで、より多くのヨーロッパのキャップテーブルに載ることにつながるかどうかは興味深い。
グザビエ・ニール
フランスの億万長者は9月、欧州のAI主権を強化し、フランスの人材を確保するために2億ユーロを投資すると発表した。その資金の一部は、基礎モデルの分野でオープンな研究を行うためにパリに拠点を置く新しい非営利のAIラボ「Kyutai」に提供され、2ヵ月後には元グーグルCEOのエリック・シュミットからの追加投資を集めた。ニールはまた、ミストラルAIのシードラウンドの投資家の一人でもある。
破壊者たち
アナ・アルバレス
移民の流入が増加したこの年、アナ・アルバレスは移民に関するヨーロッパの懸念と戦い、ドイツとイギリスで何百人もの移民の起業を支援した。コスタリカで生まれ、2015年からドイツに住むアルバレスは、Migrapreneur（ミグラプレナー）というプラットフォームを運営しており、移民が起業家養成コースや語学力向上スキル、指導を受けられるよう、今年992人の奨学金を授与した。彼女のプログラムには約2,200件の応募があった。
アーサー・メンシュ
アーサー・メンシュのジェネレーティブAI企業ミストラルは、9月に初の大規模言語モデル（LLM）をリリースした。メンシュは、ミストラルのモデルは、効率的なモデル設計とオープンソース戦略により、市場の他社を凌駕していると主張した。彼はまた、EUのAI法に財団モデルを含めることに反対している新興企業の創業者の一人でもあり、交渉の最終段階にあるこの規制はヨーロッパのAIイノベーションに「重大なリスク」をもたらすと主張している。
ダニエル・エク
スポティファイの創業者でCEOのダニエル・エクは、連続起業家のヒャルマー・ニルソンネと共同で設立した身体スキャン・ヘルステック、Neko Healthの存在をSiftedが明らかにしたことで、年明け早々に話題となった。この新興企業は、ヨーロッパ全土に拡大するため、夏にシリーズAで6,000万ユーロの資金を調達した。しかし、良いニュースばかりではない。エク氏は今年、スポティファイがコスト削減のため、従業員の17％、約1500人を削減すると発表した。エク氏は、資本金が安く、技術系企業がチームを成長させるために巨額の投資が可能だった2020年から2021年にかけて、音楽ストリーミング・サービスは従業員を増やしすぎたと主張した。
ハラルド・ミックス
エネルギー貯蔵会社Polarium、バッテリーメーカーNorthvolt、持続可能な鉄鋼メーカーH2 Green Steelというヨーロッパを代表する3つの気候変動関連企業の設立に貢献したスウェーデン人は、今年4つ目の会社を立ち上げた。Airaと名付けられた彼の新しいベンチャーは、ヒートポンプと家庭用エネルギー市場に挑む消費者直販の新興企業だ。立ち上げからわずか数ヶ月後の10月、Airaは気候変動とイノベーションに焦点を当てた投資家グループから10億クローネ（約8,700万ユーロ）を調達した。すでにドイツとイタリアに進出しており、次の市場として英国を視野に入れている。この新興企業は、これら3カ国で新たに1万人のクリーンエネルギー専門家の雇用を創出することを目指している。
ルールメーカー
カルメ・アルティガス
スペインのAI・デジタル化担当大臣は、近年最も物議を醸し、大きな影響を与えたEUのハイテク法制のひとつである、EUのAI法の舵取り役を務めることになった。スペインは夏にEU理事会の持ち回り議長国に就任したため、スペイン政府は今年末までにこの法案を成立させることを目標に掲げた。アルティガスは、欧州議会がドイツ、フランス、イタリアの反対を押し切って、基礎的なモデルを法律の範囲に入れるよう求めたため、懸命に橋渡しをした。また、スペインが欧州初のAI規制サンドボックスを立ち上げるよう働きかけ、1月に施行されたスペインのスタートアップ法の成立を監督した。アルティガスは12月22日にスペイン政府を退任するが、国連事務総長のAI諮問委員会の共同議長としては続投する。
イアン・ホガース
英国政府のAI財団モデル・タスクフォースの委員長であるイアン・ホガースは、11月に英国のブレッチリー・パークで開催された、技術を安全にする方法について政府首脳と新興企業創業者が集まる世界初の国際会議「AIセーフティ・サミット」の運営で重要な役割を果たした。SongkickとPlural Platformの共同設立者であるホガースは、今後、米国や他の志を同じくする国々の同業者と連絡を取り合い、AI安全機関の世界的ネットワークを構築し、他の政府が最先端のAIモデルを理解するための社内能力を開発するのを支援する。
イリアナ・イワノワ
EU機関で豊富なキャリアを持つ経済学者であるイワノヴァは、この夏、EUのイノベーション・研究担当委員に就任した。EUの監査機関である欧州監査院（European Court of Auditors）や欧州議会のメンバーから欧州委員会への急な昇進は、前委員であったマリヤ・ガブリエルの辞任がきっかけであった。
ヴィエラ・ユーロヴァー
物腰の柔らかい欧州のデジタル担当委員長は、欧州圏のAI法制がテクノロジーの規制を求める他地域のインスピレーションの源となるよう、世界中を飛び回っている。今年、彼女は英国、日本、中国、米国を訪問し、G7や国連でEUのルールを宣伝した。彼女はまた、自国のハイテク企業がG7のAI原則をどのように遵守しているかを監視することに同意するよう米国をけん制した。しかし、欧州委員会における2つの任務を終えた後、ジュロヴァは3期目を目指さないことを表明した。
ささやく人たち
ドム・ハラス
英国の主要ロビー団体であるスタートアップ連合のエグゼクティブ・ディレクターであるドム・ハラスは、今年、舞台裏で重要な役割を果たし、3月に起きた米シリコンバレー銀行の破綻とHSBCによる英国部門の買収の影響に英国政府が対処するのを支援した。英国ブレグジット省の元公務員であるハラスは現在、年金基金の資金をハイテク投資に振り向けるための政府の改革を注視している。彼は通常、首相の技術会議でパーカーを着ているが、そのファッションで彼を過小評価しない方が賢明だ。
テレンス・ザッカ
力のある政治家の背後には、有能なコミュニケーション・アドバイザーがいることが非常に多い。元ブランド・マネージャーで、サイエンス・ポーの大学講師でもあるザッカは、EU域内市場担当委員ティエリー・ブルトンの広報を担当している。ザッカは、EUのAI法をめぐって欧州の新興AI創業者たちと公の場で争ったり、電波で欧州の技術主権を執拗に推し進めたりするブルトンのメディア効果とリーチを高めたと評価されている。
ヴェレーナ・パウザー
ドイツで最も尊敬される起業家の一人であり、エンジェル投資家でもあるパウザーは、ドイツスタートアップ協会の会長に就任する。その役割において、パウザーはドイツの大学や研究センターからの技術移転を改善し、ドイツを国際的な人材にとってより魅力的な国にし、若者のカリキュラムに起業家精神を組み込むことを望んでいる。また、Lea-Sophie Cramerとポッドキャスト「Fast & Curious」を共同主催し、スタートアップ界のトレンドやニュースについて議論している。
反逆者たち
アリ・パルサ
夏に急落した英国のヘルステックBabylonの中心は、このスタートアップの謎めいた創業者兼CEO、アリ・パルサだった。2021年に42億ドル（最終的には失敗に終わったが）の特別目的買収会社（SPAC）の上場を果たしたバビロンの株式は、今年ニューヨーク証券取引所で実質的に無価値となった。パルサは後に、上場は彼の「最大の過ち」であり、今年9月までに会社はスクラップ同然で売却されたと語った。内部関係者はSiftedに対し、過剰な野心、文化的な問題、誇大宣伝に見合わない技術など、地震的な規模での転落に至るまでの物語を語った。
ルカシュ・オレイニク
スタートアップ・シーンでは有名人ではないかもしれないが、ポーランドのプライバシーとセキュリティの研究者である彼は、9月にマイクロソフトが支援するOpenAIの一連のEU一般データ保護規則違反を告発する訴状を提出し、話題になった。スペインのデータ保護庁と欧州データ保護委員会も、ChatGPTがEUに拠点を置くユーザーのデータをどのように扱っているかを調査している。Olejnikは、OpenAIから自分のデータの処理方法について回答を得ようとする努力を、カフカの著書『裁判』に登場するヨゼフ・Kの経験になぞらえている。
ヨゼフ・アシュバッハー
アッシュバッハーが事務局長を務める欧州宇宙機関（ESA）は、初の次世代ロケットシステム「アリアン6」を今年打ち上げるという計画から外れた。ESAはアリアン6を、イーロン・マスクのスペースXファルコンに代わる大型衛星の輸送ロケットにしたかったからだ。この延期はヨーロッパの技術主権にとって悪いニュースであり、ヨーロッパの宇宙新興企業が地球軌道にアクセスするためにアメリカのロケットに依存し続けることになるからだ。
ピーター・ティール
億万長者でドナルド・トランプの献金者であるピーター・ティールは、ペイパルとパランティアの共同設立者として知られているが、先月パランティアがイングランドの国民保健サービス（NHS）のオーバーホールのために3億3000万ポンド相当の政府契約を獲得したことで、英国のデータプライバシー活動家コミュニティを脅かした。今後7年間で、パランティアはNHS全体のデータを中央リポジトリに統合する新しいプラットフォームを構築する。このプラットフォームは、世界最大級の医療データ保管庫となる可能性があり、プライバシーに関する懸念を超えて、ティールは契約を勝ち取るための積極的なロビー活動とも言える戦術で、医療関係者を心配させた。一方、ティールは投資額が減少する中、ミラノを拠点とする暗号資産取引所One Trading、ロンドンを拠点とするヘルステック企業Lindus Health、ドイツのドローン企業Quantum Systemsなどを支援し、流れに逆らって泳いだ。
未来の建設者たち
解雇された技術者たち
資金調達環境がより厳しくなる中、ヨーロッパのハイテク企業では2023年もレイオフが続いた。SpotifyやGetirなど、欧州大陸で最も知名度の高い企業のいくつかが、人員削減を行った。一部のデータでは、レイオフの影響を受けたのは女性が偏っており、エコシステムの多様性がさらに遅れていることも示唆されている。2024年も同様で、一部の企業が再募集に苦戦する中、レイオフが行われる可能性がある。しかし、雇用主との別れを余儀なくされた有能な従業員たちは、屑のような新興企業にとって魅力的な雇用者になるかもしれない。
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