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俳句鑑賞

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心に残った俳句への思い
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記事一覧

机にはナイフの疵や休暇明/大野朱香

机にはナイフの疵や休暇明/大野朱香

季語「休暇明(秋・人事)」
同じ句集の中に、

電柱の負ひし擦傷春休

という句があります。
作者にとって、長期の休みは、心休まるばかりのものではないようですね。
疵のある机を使った経験は、誰しもあることでしょう。あまりに疵が多すぎて、テストのときに困った・・・なんてこともあったのではないでしょうか。
「休暇明」の休暇は、普通夏休みのことですから、この机は夏休み前にも使っていたものですね。夏休み中

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アイス売る手ぬぐひで顔ぬぐうては/大野朱香

アイス売る手ぬぐひで顔ぬぐうては/大野朱香

私が子どもの頃、海岸や公園には、よく、自転車のアイスキャンディー屋さんがいました。自転車の荷台の箱型のアイスボックスには、手作り感満載のアイスキャンディーが無包装のまま入っていたんですよ。アイスキャンディーの値段って、5円か10円くらいだったんじゃないかな~~~

そういえば、家で試験管に粉ジュースを入れてアイスキャンディーを作った記憶も・・・「かがく」という雑誌の付録で、試験管が手軽に家にあった

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龍天に合唱団は袖へ消え/大野朱香

龍天に合唱団は袖へ消え/大野朱香

季語「龍天に・春(時候)」
「龍天に昇る」の傍題。

「説文解字」というのは、中国最古の漢字辞典のようなものらしいです。
このような、故事と結びついた時候の季語で俳句を作るのはとても難しいですよね。無駄に長いし・・・
この句の面白さは、やはり「龍が天に昇る」という故事と合唱団という目の前にある現実との取合せの妙だと思います。しかも、龍が天に昇るほどの明るく勢いのある陽気だというのに、目当ての合唱団

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ケチャップの瓶底叩き文化の日/大野朱香

ケチャップの瓶底叩き文化の日/大野朱香

トマトケチャップが日本に渡ってきたのは、明治時代だそうです。
オムレツやハンバーグ、ポテトフライ、唐揚げなどにつけるのに、我が家の孫たちも大好きなソースです。ポテトフライを食べているのか、ケチャップを舐めているのか、違いがはっきりしない😅

でも自分が子どもの頃、食卓にケチャップがあったという記憶はあまりないんですよねーーー💦💦💦
普通のソースはあったけど。←カレーにソースをかけてた世代�

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籐椅子に父のからだの薄つぺら/大野朱香

籐椅子に父のからだの薄つぺら/大野朱香

季語「籐椅子(夏・人事)」

「籐椅子」というと、エマニエル夫人の映画ポスターを思い出してしまう世代です😅
そういえば、先日訪問した武者小路実篤邸にもペアの籐椅子のようなロッキングチェアがありました。(写真撮っていないので、うろ覚え🙇‍♀️)
昭和の頃の和洋折衷の家の洋間とか縁側に、置いてあったような記憶があります。
自分の実家は、狭かったのでありませんでしたが、夫の実家の縁側にありました。そ

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年の湯や両の乳房のそつぽむき/大野朱香

年の湯や両の乳房のそつぽむき/大野朱香

季語〈年の湯(冬・人事)〉
乳房の句というと先ず思い浮かべるのは、やはり

おそるべき君等の乳房夏来る/西東三鬼

ですよね。
「おそるべき」と「乳房」。大胆な措辞で、若い女性たちの圧倒的な生命力が眩しく感じられます。

同じ乳房の句でも対象的なのは

ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき/桂信子

三鬼は乳房のパワーに慄いているけれど、信子は我が乳房を疎んじている。
これは、乳房を持つものと持たざる

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刀自来る浅蜊の管のちぢこまる/大野朱香

刀自来る浅蜊の管のちぢこまる/大野朱香

大野朱香さんの第4句集から

この句集には平成10年から18年までの655句が収められています。

刀自来る浅蜊の管のちぢこまる
季語〈浅蜊(春)〉

「刀自」というのは

だそうです。
台所で砂抜きをしている浅蜊を見ている作者。そこに、この家の家事をつかさどる女性(姑か?)がやって来た。
途端に浅蜊の管が引っ込んだ・・・というのです。
厨での浅蜊の様子を詠んだ句は他にもあると思います。

雛祭浅

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これはもう裸といへる水着かな/大野朱香

これはもう裸といへる水着かな/大野朱香

この記事は、一旦アップした後、間違えて削除してしまい、再びアップし直したものです。既に「スキ」をしてくださった七瀬ゆきこさん、ごめんなさい🙇‍♀️
そして、ありがとうございました。

歳時記や俳句のネット検索などを通して何となく心に残っていた俳人が、後から自分が所属する結社「童子」の同人だったと知って、驚くことがあります。
私が童子に入会したのは2017年の3月でしたから、この頃大野朱香さんは、

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森 高弘句集「光れ光れ」

森 高弘句集「光れ光れ」

森 高弘さんは、「童子」の同人です。
私よりかなり若い方ですが、俳人としては10年も先輩。
既に2010年には、小早川忠義という俳号で歌集「シンデレラボーイなんかじゃない」を上梓されています。
6ページにもわたる序文を、辻桃子先生が書いていらっしゃいます。
この序文、桃子先生の高弘さんに対する愛情をひしひしと感じて、本当に感動しました。
童子の連衆と桃子先生との間には、このような深い繋がりがあるの

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鑑賞「新年」の句

鑑賞「新年」の句

明けましておめでとうございます。
韓ドラ見ながら新年を迎えてしまいました😅
まあ、こんなにいい加減な我が家にも、確実に新年は訪れました🐇
どうか本年も宜しくお願い申し上げます。

元旦やいつもの道を母の家/星野立子

実家に新年の挨拶に行くのでしょうか。普通は2日ですが、やはり実家ということで頻繁に訪れているのかもしれません。いや、「いつもの道を母の家」だから父である虚子はもう亡くなった後なの

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鑑賞 年末の句③

鑑賞 年末の句③

今年は、大変お世話になりました。
なかなか更新もできず、面白い記事も書けなくてごめんなさい🙇‍♀️
来年も、こんな調子でのんびりやっていきたいと思います。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

漱石が来て虚子が来て大三十日/正岡子規

子規庵には、子規を囲んだ多くの俳人の句座の絵(漫画❓)があります。きっと入れ替わり立ち替わり、子規を訪ねていたのでしょうね。そう思うせいか、ほとんど寝たき

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鑑賞 年末の句②

鑑賞 年末の句②

昨日も書いたように、今年はおせちは楽天で購入しました。
午前中に、宅急便で届けてくださったのですが、宅急便のお兄さん、とても忙しそうで、かなり舞い上がっていました😅
「大変そうですね。おつかれさまです。」と声をかけたら、
「今日は、かなりやばいっす。おせちがめっちゃいっぱいで💦💦💦」
「ごめんなさい。うちも忙しくさせてるうちの一人ですね。」
と言ったら、
「いや、忙しい方がいいハズなんすけ

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鑑賞 年末の句

鑑賞 年末の句

今年もあと3日。
義母が亡くなってからまる2年。今年はお餅もおせちも購入することにして、のんびりと年末を過ごそうと思っていたのですが・・・
まあ、いろいろとあって、結構慌ただしい年末です😅

性格が八百屋お七でシクラメン/京極杞陽

今の季節の花といったらシクラメン。真っ赤なシクラメンの花を好む女性。その女性は八百屋お七のように激しく情熱的な人だったのでしょう。
もしかしたら、その女性はこの場に

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