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心霊現象再現ドラマ・『霊のうごめく家』5

 「小中理論」の共作者・鶴田法男
 
 オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』シリーズの製作と販売元であるジャパンホームビデオは、日活撮影所のスタッフであった升水惟雄が1984年に設立(※32)、黒沢清が所属していたディレクターズ・カンパニーとの縁もあった(※33)。GAGAの社員としてビデオセールスを担当していた鶴田法男が、取引先であったジャパンホームビデオに映像化の企画書を売り込んだのが、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』が製作される、そもそもの切掛けである。  

 朝日ソノラマとジャパンホームビデオ、双方の了解を得て企画は通ったものの、この時点では小中千昭と異なり、鶴田法男には商業作品を演出したキャリアはない。あくまで大学時代に制作した自主映画『トネリコ』のVHSと、それがホラー専門誌に評価された実績、ビデオセールスの経験を反映した企画書が、製作会社を動かした。(※34)
 
 先に触れたように、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』には鶴田法男の準備稿が1990年の時点で先行して存在していた。それが小中千昭との共同作業を経たのち、鶴田法男の演出によって制作されていった(※35)。その後も小中千昭と鶴田法男の共作は続くが、そうであるならば「小中理論」は本来ならば「小中・鶴田理論」と呼ばれるべきである。命名者の高橋洋が脚本家であった故か、もっぱら小中千昭の単独の業績として評価されてしまったことは、Jホラーの生成と連動した『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』人脈たちのような評価から、鶴田法男を遠ざけた一因であるかもしれない。

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