野口嘉人

のぐちよしと 教師です。書くことをもっとライフワークにしたくてnoteを始めます。自分…

野口嘉人

のぐちよしと 教師です。書くことをもっとライフワークにしたくてnoteを始めます。自分のこと、仕事のこと、未来のこと。書くことは、僕をひとりの僕に戻してくれます。

最近の記事

祖母とサイダー

炭酸飲料と聞くと、サイダーを思い浮かべる。 250mlの、あの細い缶の、三ツ矢サイダーだ。 そして、祖母を思い出す。 子どもの頃、サイダーはおろか、清涼飲料水自体、あまり飲ませてもらえなかった。母が、糖分の取りすぎを心配したためである。 しかし、僕は、家にサイダーがあることを知っていた。 小さな物置のような離れに古い冷蔵庫があり、その中には常に何本か三ツ矢サイダーの缶が入っていたのだ。 そのサイダーは、祖母が買ったものだった。 「離れから、サイダーとってこいよ」 夏にな

    • 夏の旅の記憶

      まだ夜も明けない時刻に目が覚め、 支度をして迎えを待つ。 やがて、聴こえてくるエンジン音。 暗闇を照らすライト。 叔父のワゴン車が家の前に停車する。 父と母、祖父母に見送られ、 妹とともにワゴン車に乗り込む。 「まだ寝ていてもいいのよ」 助手席の叔母の声にうなづくも、二人のいとこも、妹も、だれも倒された座席に横にならない。 ついにこの日が来た。 夏休みが始まる前からずっと楽しみにしていた。 子どもの頃の旅の記憶。 サービスエリアで朝日に出迎えられる。 売店を横目に見

      • 「先回りすんなよ」を言いたい

        オードリー若林正恭さんの、 「先回りすんなよ、後続のくせに」 という文句が好きだ。 自己啓発本などを読んでいて、 よく「先回りされた」と思うことがある。 何となく自分で感じて、手探りで実践していたことがあったのに、それの答えを、誰かに急に明快に出されてしまった時。 そんな時に思うのである。 それは、自分こそが「後続だった」と気づいた悔しさだ。 自分が見つけたと思って手探りで進んでいた森が、あるところで急に拓けて、そこはオートキャンプ場になっていて、たくさんの人がいた。と

        • 働かないと不安「社会人病」

           一、二年前、よく熱を出すことがあった。その頃の話。  ある日、軽い熱が出て、仕事を休んだ。  その少し前からずっと咳が出ていて、前の日は朝からだるく、午後になると声が枯れた。  この日も、「仕事に行かなくては」と思っていたが、体温が高めに出る体温計で熱が七度四分あることを確認して、出勤するのをやめた。その後、割とすぐに熱は七度ちょうどまで下がり、病院では六度七分になっていた。  行きたくない、が体と無意識の心に現れているのだと思った。  以前なら、少し体調がおかしいかも

        祖母とサイダー

          自分で選んだ「選ばない」こと

          教師になって6年目の春、管理職の道を勧められた。 ある日突然校長室に呼ばれ、力量を褒め称えられた。 異動して間もない学校だったので、嬉しかった。 が、薄気味悪くもあった。 普段は、行政や地域の有力者との関りや、学校研究課題の全国発表で頭がいっぱいの校長である。 「自分だけのことではないので、家族とも相談させてください」 僕はとりあえず、回答を棚上げした。 「管理職」というものが嫌いだった。 学校全体を見る、と言えば聞こえはいいが、 それを楯に子どもや教師一人一人を見ていない

          自分で選んだ「選ばない」こと

          足るを知りに、キャンプへ

          中々始められずにいたキャンプに行ってみた。 昔から完全にインドア派な僕が、 一体キャンプに何をしに行ったのだろう。 行ってきてから、不思議になった。 自然の中で、普段より物や設備がない中で、寝食をし、生活する。 キャンプとはそういうものだろう。 重い荷物を運び、拠点を造り、火を焚き、飯を作り、食って、寝る。 片付けも、洗い物も、火の始末もちゃんとする。 自分のことを、全て自分の責任でする。 そこにパワーを集中させる。 頭と体をフル稼働させる。 上手くいかなければ、格闘す

          足るを知りに、キャンプへ

          音楽と仲間と自分に再会した日

          愛してやまない音楽を、 聴けなくなってしまった数年間があった。 いい曲を、聞いても、聴いても 何故だか心まで入ってこない。 もうずっとこのままなのだろうか。 自分の一部がなくなって、取り戻せそうにない。 そんな時期があった。 くるり、というロックバンドが好きだ。 その日、何かを求めるように、 10年ぶりにライブに足を運んだ。 「真夏日」という曲を聴きながら一人歩く。 夕暮れ前。暑さに背中が汗ばむ。 薄くなった髪の毛の間を通って汗が流れ落ちる。 曲の歌詞のような7月の夏の日

          音楽と仲間と自分に再会した日

          早起きの理由。希望の時間。

          最近は朝4時頃起きるようにしている。 電気ポットのコンセントを入れてから、洗面所に行き顔を洗う。 シンクの水切りラックにある食器を、食器棚にしまう。 ガチャガチャ音を立てて、妻が起きないよう気を付けながら。 急須に茶葉を入れる頃には湯が沸く。 お茶を入れ、三階の自室に入る。 窓を開けてぼーっと外を見る。 まだお茶は飲まない。 気づくと朝焼けが消えている。 今日も夜が明けた。 背中がじっとりと汗ばんでくるが、エアコンは点けない。 涼しい外の空気をわずかに感じたところで、 ぬ

          早起きの理由。希望の時間。

          ネットニュースが終わらせたライブ

           少し前のことだが、オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームのイベントに、星野源さんが出演し話題になったことがあった。ファンなら皆知るところだが、その経緯を簡単にまとめると以下のようになる。    若林さんと星野さんには元々つながりがあった上に、星野さんがイベントの主題歌を手掛けることになり、ファンの間では「星野源のイベント出演があるかも」と期待されていた。しかし星野さんは自身のラジオで、スケジュールの関係で出演が叶わないことを事前に明かしていた。にもかかわらずのサプラ

          ネットニュースが終わらせたライブ

          数年分の「セルフ大絶賛」

          ※これは、只々僕が自分で自分を真面目に大絶賛する文章です。 「いやー、ここ数年の働きぶりね。他の人にはできないことをしたよね。  そんで、それを偉い人ですら、優秀な人ですら全然分かってないよね。  自分の信じる道を一人で行って、ちゃんと結果出して戻ってきたよね。  ほんとよくやったよ。いや、これすごいことだよ」  四年前、きついことがあった。  コロナ禍真っ只中の当時、僕の職場は、コロナ対応と並行して、子どもたちが来るべき「ソサエティ5.0」を生き抜くためのカリキュラムの

          数年分の「セルフ大絶賛」

          ワーキングデッド

          「先生、今日は土曜日なのに、なんで学校があるんですか」  六月の土曜日の朝、教室で子どもに何気なく聞かれ、うーん、と束の間考える。  年三回、振替休日なしの土曜授業日を設ける、という規定が僕が勤める自治体にはあるらしい。地域へ開かれた学校づくり、などといった目的や理念があるのだろう。授業公開や、保護者参加型の訓練などが行われることが多い。  とはいえ、やっている方はまあ辛い。日々の授業や子どもたちの指導に追われながら、授業の公開や訓練や行事の準備をする。週末、一週間をなんと

          ワーキングデッド

          放課後にしたい本音の話

          7月中旬のある日の放課後、職員室で左隣の席の後輩と夏休みの仕事について話したことがあった。教師は、夏休みには夏休みの仕事がある。彼女は、管理職から端末で周知された夏休みのスケジュールを見て、憤りを滲ませた。 「なんでこんなに研修ばかりなんですかね。全然休みとれない」 きっと、多くの現場でこの時期交わされる会話だろう。 お、今年も始まったな。 何故か楽しくなっている自分に気づく。 この胸の高鳴りの正体は何か。近づく夏休みの足音が聞こえたから・・ではないことを僕は知っている。

          放課後にしたい本音の話

          自己紹介

          「先生って夏休みの間何してんの?」 教師になったばかりの頃、学生時代の友人に幾度となく聞かれた。  友人だけでなく、家族、親戚、同年代の床屋の旦那、馴染みのセラピスト、婚活中にお会いした他業種の女性、結婚当初の妻とその実家の面々、果ては生徒まで、皆が皆このことを聞いてくる。父親や大学のサークルの悪友に至っては、会うたびに何度も同じことを聞いてくる始末。    始めは真面目に答えていたが、ある時からうんざりし、やがてそれも通り越し、今ではこの質問をされると「出たっ」と、面白が