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アメリカ中西部 KfT#8 ナバホ族ガイド ロージーの日本語

シャッターがこわれた


アンテロープキャニオンはユタ州立公園だから、国立公園、なんならグランドキャニオンへ行けなかった私たちのような観光客がこちらに流れてくる。
ログキャビンのインフォメーションセンターは、そんな観光客でごった返している。
アンテロープキャニオンは個人で入ることはできない。ガイドつきツアーの申し込みが必要だ。

トラックを改造した屋根つきトラックの荷台に2列に横座りで座る

インフォメーションセンターへ行くと、ジープが並んでいる。出発を待つ人たち。ナバホの女性ガイドさんがドライバー
さあ出発

ジープの音がすごい。がくがく揺れる。車道から砂埃の道へ、夕べ夜中に、車内から見えていた白いネオンの3本の煙突を左に見る。人工的な建造物らしきものはそのトンネルと、その下にある発電所の建物だけである。

オレンジ色の砂の岩の塊があちこちに


いよいよ近づいてきたかな♪
サイバーショットをオンにして、写真を撮ろうとシャッターを切る。
するとダニーが、
「シャッターを都度閉めないと砂が入るよ、、」
オレンジ色の砂ぼこりがすごくて、いや、もう時すでに遅し、大事なSONYサイバーショットに砂が入り込んで、シャッターが閉まらない!
うわーシャッターが壊れた!なんということだ。しかし、もうどうしようもない。


車内前方を見ると「チップを渡すこと、感謝の意味を込めて」と各言語で書かれている。
アメリカなのに、わざわざ書いてあるということは、ナバホネイションだからだろうか。ネイティブアメリカンの人にはアメリカといえども、チップを渡さない人がけっこういるのだろうか。
渡さなくてもいいと思われてしまうところがあるのだろうか。軽視されることもあるということなのだろうか。
と、勘繰ったような、さまざまな考えが浮かぶ。

「チップを渡すこと」ツアートラック車内の貼り紙


さあ、ここから思いがけない楽しいツアーガイドさんとの交流がはじまることになる。

ロウワーアンテロープキャニオンに到着


どう撮っても絵になるアンテロープキャニオン

光と影のコントラストがたまらない

アンテロープキャニオンはとにかく美しい砂の洞窟だった。
普通に撮ってもエフェクトをかけたみたいに美しく撮れるすごい場所だ。
砂の粒子が細かいので、微妙な地層の曲線が美しい。豊かな曲線美。入ってくる光も細かく屈折している。オレンジ色の布のドレープように見える地層

ここは時々鉄砲水が突然発生する。その鉄砲水が長い年月をかけてこの美しい洞窟をつくりあげた。でもこの狭い洞窟で人が鉄砲水に巻き込まれると、水の勢いが激しく、ひとたまりもない。天気の急変には気をつけていなければならない。あまりゆっくりもしていられない。

ガイドさんのサービスはとても優秀で、ベストな撮影ポイントを教えてくれる。詳しい英語の解説が良くわからないが、ダニーがかいつまんで教えてくれる

ここで日本語!


写真を撮ることに夢中になっていると、すごい前方から、ガイドさんが私のカメラを指さして何か言っている。

ダニーが、
「彼女がカメラのレンズの蓋が開いてないって言ってるよ」と。
「え?」
のぞき窓を見て撮っているので、レンズのシャッターが見えていなかったのだ。外側からカメラを見るとシャッター半開き来る途中の車内でカメラに砂が入り込んだことも、感動ですっかり忘れて、シャッター半開きで写真を撮っていた。

半開きシャッターで撮るとこうなる


でも、なんでそんな遠くからこんな小さなレンズが見えるの?
すごい視力だ、、
すると彼女は、つかつかとやって来て私のカメラをひょいと手に取り、レンズの蓋を指でくいっと開けて、パシャパシャとビューポイントを撮っていく
私のサイバーショットで写真を撮りつつ、ツアーの解説も同時進行
そして長年のガイドの経験からか、私が日本人と見てわかった様子で、
日本語で「ネコ、ネコ」「クマ、クマ」と言い始めた。
指指す方を見ると岩が光をくりぬいて猫が座ってる形に見えるポイントに立っていた。
日本語である。

洞窟とその影がつくるこれが「ねこ」!
「くま」?!


アメリカのここど真ん中に来て日本語を耳にするとは思わなかった。久しぶりの日本語に一瞬驚いてしまう
日本人の子供とでも思われたのだろうか?たくさんサービスしてくれる。ほらこっちから見て、と案内してくれる。
他のツアー客は皆白人系。アジア系は私だけだから目立ったのだろう。
経験豊富なガイドなら、アジア系の中でもすぐに日本人だと分かったのかもしれない

神秘的なオレンジの砂の洞窟を抜けると、青い空が広がっている。

ガイドさんとのやりとりを、何やら微笑ましそうに眺めていた白人中年夫婦のご婦人が「写真を撮ってあげるわ」とロージーと一緒に写真を撮ってくれた。

洞窟の出口で、ガイドのロージーと写真を撮ってくれた夫婦


凄腕のビジネスウーマン、ロージー

ガイドの突然の日本語披露にびっくりして、洞窟の復路を歩きながら、思わずガイドに話しかけるダニー。

「どうして日本語を知ってるの?」
「日本に行ったことあるよ。お客に日本人、中国人、スペイン人がいるから、その国に行って、言葉を習ったよ」

向上心旺盛の優秀なガイドさんなのだ。
そして彼女の名前は、ロージーRosie

感動した。ここで日本語を聞くとは思わなかった、うれしかった。
その日は、日本人の団体ツアーはきっと事前に国立公園CLOSEDでキャンセルになっていただだろうから、日本人はもちろん、アジア系もいなかったから、目立ったのかもしれない。もしかしたら、日本人はナバホ族と同じモンゴリアンだから、親しみを持ったのかも、しれなかった。

それにしても、客の心をつかむニクイガイドさんだ!


洞窟の入り口から、トラックに乗り込んでインフォメーションセンターへ帰ってきて車を降りた。
チップにきびしいダニーは、すかさず私に
「Kyoko、これはロージーにチップを弾まないとね!」
「そうだねえ」
$30-$50(はっきり覚えていない)渡したら、
「Thank you!」
ロージーはドル札をぱっと受け取って、くしゃくしゃっとポケットに突っ込んでいた。
よっしゃーと言ったところだったかも(笑)


ダニーはここでもロージーとおそらく国立公園の閉鎖の話をしていた。州立公園のアンテロープキャニオンの人たちにとっては国立公園目当ての観光客が流れてきて、稼ぎ時だったかもしれない。

そして、アンテロープキャニオンのガイドたちは、互いにナバホ語と思われる言葉でイキイキと楽しそうに会話をしていた。

秘密のこと(お客の悪口も?)はナバホ語で話せばわからないね!


ガイドのロージーとダニーと私



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