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アメリカ中西部 KFT#6 閉ざされた国立公園とオバマの策略



レッドロブスターでチップ合戦

「おなかすいたね」
ルート66のアイスクリームの後は、
ダニーがレッドロブスターへ行きたいという。
レッドロブスターがある場所では必ず行くらしい。
ラスベガスにいる時から決めていたそうだ。
じゃあ、次の街のフラッグスタッフで今夜はごちそうだ!

ダニーがスマホでナビをしながら、ルート66、幹線道路に合流して、フラッグスタッフに入る。

フラッグスタッフの街はグランドキャニオンの拠点の街だが、今日はすいていて、人や車もあまりない。店内もすいている。

夕方の窓際の席で、ロブスタープレートをほおばる

ウェイターにいざなわれてテーブルへ。
ウェイターは男子大学生みたいだった。

さて、ここからサービス合戦が始まる
チップ獲得のため、ウェイターはサービスに懸命
「どこから来たの?東京?遠くから来たんだね!」
わたしにも優しく楽しく声をかけるが、資金源はダニーと見て、ひたすらダニーにサービスをする。

飲み物はコーラと決まっているダニーはロブスターでもコーラだから、
バケツみたいなタンブラーのコーラを何杯でも持ってくるウエイター。
コーラなんて、タダみたいなもんだからお安い御用だろう。

ウェイターはしょっちゅう来て、何かかにか話しかけてくる。
ダニーもまけずに会話のノリに合わせる。
掛け合いが見ていて楽しくて、ウェイターの懸命さがおもしろい。

チップの料金は、伝票に自分で書き込むのだ
相場は決まっているとはいえ、自分のサービスが数字に反映するわけだから、ウェイターが必死なのもわかる。

テーブルに座ったらメニューを選んで終わらず、スタッフも客も主体的なスタンスというその状況に感心した

ラスベガスでもそうだったが、
ただの客とスタッフを超えたようなコミュニケーションを目の当たりにして、丁寧かもしれないが、ロボットみたいな日本の店員の対応と比較して、とても自然で人間的な感じがした。

再び閉ざされた道

ロブスターをお腹いっぱい食べてエネルギーを蓄えたし、
今夜はグランドキャニオンのふもとで泊まるのだ。
フラッグスタッフから北上し、進むにつれて日もすっかり暮れた。
あたりは真っ暗だ。
分岐を左折して、グランドキャニオンへの道へ入ろうとすると、、、

「あれを見てごらん」

ロープがかかっている道路の暗がりに「CLOSED」のオレンジ色のチカチカしている工事看板を指さすダニー。

「あれは、なに?」
「国立公園がクローズしてるってことだよ」 冷静に言うダニー
「・・・それって、グランドキャニオンへ入れないってこと?」
「そうだよ」
「・・・・・」

こ、ここまで来てそれはないんじゃないの?

車内で黙りこくる私たち。

ダニーによると
オバマ政権(2013年時点)は時々国立公園を予定なく閉めて、
そこで働いているたくさんの労働者の給料を削ることで、国の出費を削減することが時々あるそうだ。いつ再開するかもわからないともいう。

「国立公園は、たくさんの人達が働いているのに、簡単に庶民の仕事を奪う、これだからオバマは嫌いだ」という。

そんなことがあるのか。
日本のテレビでそんな報道はないし、演説の上手い初の黒人アメリカ大統領として、能天気に良い人イメージしか報道されない。急に悪い人に思えてくる。これも単純だが。

「でも、もしラジオを聞いていたら、この情報が分かったかもしれないよ」2日前の道路工事の車両通行止めの時だってそうだ。
グランドキャニオンへ通じる道だったから、このクローズと関係していたかもしれない。

ここまで来てグランドキャニオンを見られないことが悔しくて、
ダニーに当てつける

「まあ、そうかもね」

運転中にラジオや音楽を聴く習慣がないダニー。
わたしもいままで違和感なく、ずっと純粋に風景を楽しんでいた。
むしろバックミュージックなど必要なかった

しかしこういう時のためにも、情報は必要だったのかも、
と今更ながら旅行者の心得みたいなものが怒りに任せてむくむくと湧いてきた。

「グランドキャニオンへ行こうツアー」と称してアメリカまで来たのに、
あんまりじゃないか。泣

でも言ったところで、どちらにしても今さら仕方のないこと。

とりあえず気を取り直すように、分岐にある小さな売店で買い出しをする。しかし、買い物なんかで気は晴れず

「ばかやろー!!!!」

暗闇に向かって叫ぶ。
何の返答もなく、むなしい暗闇が広がる

闇夜の道


ともかく、今夜中に宿のあるところまで行かなくては。
グランドキャニオンへの左折ができないなら、
直進してペイジの町へ向かうしかない。
グランドキャニオンのふもとで泊まるはずだったのに、、、

またも遠い道のりを走る、走る、走る。
道路工事のために迂回したラスベガスの時の二の舞ではないか、でもラスベガスへのハイウェイの道とは違う。
ライトもついてない。車もいない。真っ暗闇

そうか、国立公園がクローズしているから、どうりでフラッグスタッフの街で観光客を見かけなかったわけだ。車も少ないし。
旅行会社は情報を得ているだろうし、ツアー客は来るはずもない。

山道がなだらかな平原になる。
草地の中の道を車で走っているのをヘッドライトで確認できるだけ。

再び、闇夜をひたすら街へ向けて、車をはしらせるのだった、、




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