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思い出の中の彼

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かつての恋人について
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#言葉

影に思いを馳せること

影に思いを馳せること

彼のことを思い出す度、不思議な人だったなぁと思う。

伏せ目がちで、どこか人を恐れていて。厭世家のように振る舞って、人を嫌っていて。長い前髪に隠れた黒い目は全てを拒絶するような色が宿っていて。

だけれど、私に時折見せる不器用な微笑みが私は好きだった。2人きりの時は耳がくすぐったくなるような、少し気を許した優しい声で話してくれるのが嬉しかった。

私はそんな貴方に惹かれた。

以下はその記録。

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収まりのいい入れ物

収まりのいい入れ物


幼少期からの癖
昔から片付け紛いの行為が好きだった。床に散らばる物を集めて一箇所に纏めて整えると、散らされていた意識さえも整う感じがして快感だった。神経過敏な私にとっては気が散らないことが自身の存在を脅かさないためには重要だったようだ。それはある意味、気が散らなければそれで良い訳で、一箇所に纏めた物の全体としての見た目が良ければそれだけで私が求める片付けの基準は満たされる。その基準は人より大分と

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