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映画『Barbie』ラストを不可解に感じる理由(※ネタバレありなのでご注意ください)



2023年を盛り上げた軽快コメディ

『Barbie』は2023年のエンタメ界を席巻したコメディ映画。
特に主題歌、挿入歌が豪華で、たくさんのヒット曲が生まれ、それらを耳にしない日はないほどでした。

その中でもビリー・アイリッシュの「What was I made for?」は秀逸で、この歌がバービーの悲しみと観客の心を繋げる素晴らしい役割を果たしています。

「私は何のために作られたの?」
人形のバービーが抱いた疑問は、人間の私たちの誰もが持つ疑問と共通していて、心にグッと響くものがあります。

それからチャーリーXCXの挿入歌「Speed Drive」には「Hey Mickey」がリミックスされていて、そう言えば日本でもゴリエちゃんが流行したなぁとYouTubeを見返してみたら、2022年にゴリエちゃんも復活を果たしていたようで、とっても懐かしかったです。そんなレトロ感もバービーにピッタリですね。

見るべきは俳優陣。しかしそれが裏目に?

映画『Barbie』の登場人物のファーストルックが公開された時は、正直言って俳優たちの年齢に違和感がありましたが、しかし一人一人は実力派揃いで、それがこの映画の大きな魅力となっています。

マーゴット・ロビーはハーレ・クイン役で有名であり、こういう派手で癖のある美人の役にはまさにうってつけ。
ライアン・ゴズリングは「ラ・ラ・ランド」「ブレードランナー2049」などの主演で知られる名優で、その彼をケンに据えるキャスティングの意外さに、多くの人が驚きました。
そしてアメリカ・フェレ―ラは大ヒットドラマ「アグリー・ベティ」の主役を演じた時のキュートな姿が印象深く、そのベティが母親になった姿を今作で見れるという感慨もあって、ピッタリの配役でした。
あともう一人のケンを演じたシム・リウも「シャンチー」の主演で有名ですね。もともとアクション映画のスタントをやっていた俳優さんなので、バク転も軽々とこなしていて、動きがとてもカッコ良かったです。

そういったインパクトのある俳優陣の個性と演技力が全面に発揮されているのが、今作の最大の見どころ。

なのですが・・・
そこが強烈過ぎたため、キャラクターが物語の主軸と乖離し、没入感が薄れる瞬間がちょくちょくあったように思います。それが結果的に、脚本の稚拙さを露呈させた印象です。

確かにキャスティングは作品の魅力を高めるために、とても大事な要素です。しかしあまりに狙いすぎると、作品が「俳優任せ」に見えてしまう。そのせいで監督賞の候補入りを逃したかもしれません。

結論は「自己肯定」。だけど・・・

物語はとても単純です。
バービーやケンが持ち込んだ疑問や考えから、バービーランドは混乱に陥りますが、最終的には「自己肯定」により決着が付き、元通りに修復され、めでたしめでたしとなります。

しかし、見ている方には、いろいろ不可解な謎が残ります。

バービーがリアルワールドへ行った時、バービー人形の製作会社であるマテル社は、必死にバービーを箱へ戻そうとします。そしてリアルワールドから一足先に戻ったケンが、ケンランドを作ろうとした時、それはリアルワールドへも影響を及ぼしました。
にもかかわらず、映画の最後にバービーは決断してすぐ人間になってしまって、それが簡単すぎるのが謎だし、そのバービーの行動がバービーランドやリアルワールドに影響があった様子はなくて、「じゃあ、あの混乱は何だったの?」と煙に巻かれた気分になります。

人間として生きたいと願うバービーを、優しく受け入れるハッピーエンドですが、その周りを取り囲む世界の在り方が破綻しているため、ラストの「婦人科へ行く」という妙にリアルな行動が、突飛すぎて理解に苦しむのです。

バービーランドとリアルワールド、それらがどう繋がって影響しあっているのか、もっと分かりやすい脚本になっていたら。そしてその関係性に沿ったラストになっていたら。頭が「???」で終わることなく最後まで楽しめたのではないかなぁと思います。

作品としてのメッセージは・・・

すでにバービー人形は古臭いおもちゃであり、父権性社会とか、働く女性の悩みとか、この物語に出てくるエピソードは、どれも既に今まで語りつくされてきたテーマばかりであって、新鮮さはありません。
だからこそ、『Barbie』ならではの解決方法を期待するのですが、ラストの「婦人科」で肩透かしを食らい、頭に「?」マークが浮かんだ状態で映画は終了してしまいます。
音楽も美術も俳優も良くて、とても楽しい映画ですが、だからこそ、作品としてのメッセージを締めくくる何か素敵なサプライズが最後に欲しかったです。それが「婦人科」って、なんだかセンスないなぁと感じました。

ノミネートされなかったことへの抗議

2024年の米国アカデミー賞で、作品、助演男優、助演女優、美術、衣装デザイン、脚色、歌曲の7部門に『Barbie』がノミネートされましたが、監督賞へのノミネートがなかったことに、ライアン・ゴズリングとアメリカ・フェレ―ラが不満を表明。

そしてつい先日公開されたアカデミー賞のプロモーション映像に、その二人が出演し、そのことをオープンなネタにしていてびっくりしました。
ノミネートへの抗議をプロモーション映像にしてしまうなんて、米国のエンタメ業界ってなんだか凄いなぁと衝撃を受けたので、その動画のリンクも貼っておきます。

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