短歌『月曜日のたわわ』 + コラム『情報はたわわ』
おはようと
はずむ言葉と
顔合わせ
ともにたわわに
咲く月曜日
月曜日だ。一週間の始まり、憂鬱に感じる人も多いのかもしれない。そんな人に向けて日経新聞が朝刊の全面広告にエールを載せたとのこと。しかし、それが波紋を呼んでいる。
『月曜日のたわわ』。これが、その広告対象となった漫画のタイトルだ。
私は最初、話題になっているとのネット記事の見出しだけを読んだ。漫画自体を知らないので、意味がわからなかった。「月曜日」と「たわわ」が繋がらないし、それが問題になるというのも理解が及ばなかったからだ。ここですぐに記事を開いて内容を確認してもいいのだが、せっかくなので「月曜日」と「たわわ」だけでも無理やり繋げてみたのが、上記の短歌である。
私の語彙では「たわわ」は「実る」か「咲く」かしかない。しかし、月曜日という1週間という短い周期で巡ってくるものにこれらの言葉を使う状況はイメージ出来ない。とすると、たわわと形容されるものは何か別のものを喩えていて……という具合に考えた結果だ。
さて、満を持して記事を開き内容を確認する。なるほど、胸の大きな女子高生主人公が性的な要素を想起させ、そういうものを女子高生のステレオタイプとして押し付けているのはいかがなものか、という内容だった。
つまり「たわわ」が形容したのは胸のことだろう。これはよくある表現なので想定の範囲内。しかし、月曜日。月曜日……? 胸の大きさが曜日毎に変化する人間なのかな?
全くわからなかったのでWikipediaを覗く。
なるほど、月曜日の憂鬱を晴らす”癒し”となるべく創生されたのが「(今週の)月曜日の(胸の)たわわ(な人のイラスト)」。これは省略された名詞だ。
例えば、同じ要領で『日曜日のぷにぷに』というタイトルで、休日にラブリーな肉球を持つ猫とじゃれ合うほのぼのライフを描いた漫画の猫ちゃんの全面広告だったなら問題視されなかったはずだ。
曜日には批判する材料はないだろう。「たわわ」という言葉にも、イメージの幅はあるけれどそれ単独で批判する言葉とは思えない。したがって、問題になったのは、言葉だけではなく漫画の内容にも影響されていると考えられる。しかし、漫画の内容をこの広告をご覧になる全ての方が知っているわけでもないだろう。ということは、内容よりもダイレクトに伝わる絵の影響の方が大きそうだ。
ここで、この記事の見出し画像を見てほしい。冒頭の短歌の『月曜日のたわわ』をイメージしたものだ。このデザインでは炎上しようがない。
言葉のイメージというのは人それぞれだが、想像するときに他の情報を与えられると、それに引っ張られやすくなる。
この短歌も「朝顔」や「笑顔」とは書いていないが画像から連想した方もいると思う。(歌の中に「顔」と「咲」は入れているが。)
「たわわ」も「ぷにぷに」も、豊かな体つきを表現することができる言葉だ。しかし、その印象の差はやはり絵によるところだと考えられる。では、件の全面広告を見てみよう。
おっと、間違えた。これは、『日曜日のぷにぷに』の参考画像をフリー素材で自作したもの。
こちらが掲載された広告。
まぁ、批判する人の気持ちもわかるが、個人的には無理筋な気がする。本記事の主旨はそこではないので言及はしないでおく。
広告をしっかりと見れば、イラスト以外にも興味深い情報は載っている。
4月4日の月曜日は、1日の金曜日に入社式やら新年度を迎え、本格的に動き出す最初の月曜日である。これは確かに憂鬱度は高そうだ。そして、巻数は4巻目とくれば数字の並びも良い。これ以上にない発売日だったのだろう。
そう、たわわなのは数字などのその情報もだ。日経新聞読者ならば、こういったことにこそ注目すべきではなかろうか。
この漫画が4巻まで刊行される事実。何万部出ているのか、そして全面広告を出して費用対効果が見込めるのか。掲載誌での人気順はどの辺りか。この漫画のターゲット層から窺う、日経新聞の読者層のマッチ具合はどうか。フォロワー100万人の影響力はどうかetc……
大きく訴えかける全面広告だからこそ、その裏を読み解くことが大事な気がする。
視覚情報のみに惑わされず、色んな視点で考えることで見えてくるものもあると思う。せっかく情報はたわわにあるのだから、それを利用しないのはもったいない。言葉を文字通り受け入れず、自分なりに解釈をしてみるのもいいだろう。
私の月曜日の印象は憂鬱なものではない。楽しかった学生時代を思い出すのだ。朝、学校で顔を合わした友人らと週末に何をしたのか語らい、今週の予定を確認しあう。そういった光景を思い浮かべれば、とても素敵な曜日にも感じられる。
ステレオタイプという話をするのなら、「憂鬱」と「月曜日」の結びつきの強さにこそ声をあげた方がいいのかもしれない。
今日があなたにとって素敵な月曜日でありますように。
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